~「サイニック理論」が描くよりよい未来の実現にむけて~
遠隔医療やオンライン教育、クルマの自動運転、あるいはドローンによる自動配送などが普及すると、私たちの生活はどのように変わるでしょうか? 従来にはなかった新しい技術は、社会に大きな影響を及ぼします。安全に、便利に変わっている私たちの生活は、科学・技術に支えられていると言っても過言ではありません。よりよい未来のために、オムロンは事業活動を通じて新しい技術を生み出すとともに、革新的な研究を支援し、新しい科学の創出を後押しすることにも尽力してきました。今回は、そうした未来に科学・技術の種を蒔くオムロンの取り組みをご紹介します。
5年後、10年後の近い将来、私たちの身の回りにどのような技術があるか、皆さんは考えたことがあるでしょうか。例えば携帯電話が登場し、単に電話のかけ方だけでなく、私たちの生活までもがガラリと変わりました。ICTの発達によってリモートワークやオンライン授業といった新しい働き方や学び方が可能になるなど、科学・技術の進展は、私たちの生活や社会を一変させるほどの影響力を持っています。遠隔教育や遠隔医療、クルマの自動運転、ドローンによる無人の自動配送など、今まさに社会に広がりつつある新しい技術によって、近い将来社会や生活は様変わりしているかもしれません。それだけに安全で便利な社会の実現は、科学・技術に支えられているといえます。
このようなよりよい社会の実現には、世の中の変化の兆しや、まだ目には見えないけれど社会に潜在しているニーズをいち早く捉え、それを満たすものを開発していく必要があります。それを可能にするためにオムロンの創業者である立石一真らが構築したのが、未来を予測する「サイニック理論」です。近未来を起点として、振り返って今なすべきことを考えるバックキャスティングの発想で社会課題を解決し、世の中をよりよい方向へ変えていくための礎となる理論として1970年に発表され、現在もオムロンの経営の羅針盤となっています。
サイニック理論の基本的な考え方は、科学・技術・社会が相互に作用しながら発展していくというものです。この相互作用には2つの方向性があります。1つは、シーズ(新しい科学から、さらに新たな技術が生まれる際に受け渡される種)からイノベーションに至る流れであり、イノベーションがもたらすインパクトが社会の変貌を促します。もう1つはこれと反対方向の流れにあたり、社会に新たなニーズが生まれると、そのソーシャルニーズを満たすために新しい技術の開発が促され、もしも既存の科学や技術で解決できなければ、新たな科学の誕生を促す刺激になるというものです。
サイニック理論の詳細はコチラから
オムロンでは「サイニック理論」の2つの方向性のうち、主に社会のニーズから新しい技術を開発することに力点を置いています。一方、「新しい科学」の創出については、公益財団法人 立石科学技術振興財団(以下、同財団)の研究助成を通じて実践をしています。同財団を通じて、まだ誰もそのニーズにすら気づいていない「新しい科学」の種が芽吹き、育っていくのをサポートすることで、未来に社会変貌をもたらすイノベーションの創出につなげているのです。
同財団は、1990年に、創業者である立石一真とオムロンの元代表取締役会長の立石孝雄がそれぞれ保有するオムロン株式会社の株式を拠出し、さらにオムロン株式会社が寄付金を出捐して設立されました。同財団では、「人間と機械の調和」を促進する研究や国際交流に対する助成をおこない、世の中の科学技術の発展や新しい科学の創出に貢献するとともに、それらを通して社会的課題解決への寄与を続けています。
とりわけ同財団が「人間と機械の調和」を促進する研究に焦点を絞っているのは、「機械にできることは機械に任せ、人間はより創造的な分野で活動を楽しむべきである」という創業者立石一真の経営哲学に基づいているからです。 この哲学に合致し、未来にチャレンジする意欲的な研究を広く社会から選び、助成を通じて経営哲学をさらに前に推し進めていくことに同財団の意義があります。
本年4月23日に、同財団は2021年度の助成対象を発表しました。選考委員による厳正な審査と理事会での議決を経て、研究助成として47テーマ、前期国際交流に対する助成として1テーマを選定しました。1990年度に実施した第1回から数えると、研究助成は累計888件、国際交流助成は累計526件、金額にして前者は24億6,257万円、後者は2億5,584万円に達しています。
選定した研究はいずれも、「人間と機械の調和」を促進することをテーマとしています。設立から約30年間、この姿勢は一貫して変わっていません。助成した研究の中から新しい科学の芽が育ち、いつか社会を変えるような新技術の開発につながることが同財団の願いです。近未来の科学・技術の発展とイノベーションの創出に貢献するという立石一真の想いを継ぐ立石科学技術振興財団とオムロンの取り組みは、これからもたゆむことなく続いていきます。