~世界初の肉屋肉切りカッター:バンドソーマシーン向けソリューション~
食肉加工業は、オーストラリアの主要産業のひとつであり、直接・間接的に40万人以上の雇用を創出しています。世界の食肉の需要は2030年までに14%増加すると予想されており、世界有数の食肉輸出国であるオーストラリアの食肉加工業界は、これまで以上に生産性と効率性を高める必要があります。
肉を切る「バンドソーマシーン」は、帯状の刃を回転させて食肉を切断する食肉加工設備のひとつです。従来のバンドソーマシーンで生産性は向上しますが、オペレーターが負傷する事故が発生する危険性がありました。オムロンは将来の需要を支える食肉業界で働く人々の安全を守るため、従来のバンドソーマシーンの安全化ソリューションを提案。そのセンシング技術で、食肉業界における重篤な労働災害・事故の減少に貢献しました。
ミート・アンド・ライブストック・オーストラリア(Meat & Livestock Australia、以下:MLA)は、オーストラリアの食肉加工業界のための研究開発活動を行う団体で、労働者の安全確保はその活動の最優先事項です。同団体は、長年にわたりオーストラリア政府および200超の食肉加工業者との緊密な協力のもと、さまざまな安全対策を導入してきました。オーストラリアが食肉輸出の中心地として発展することができたのも、これら安全対策への取り組みが背景にあります。
MLAは、バンドソーマシーンの安全性をさらに高める技術を導入したいと考え食肉加工機械・包装機械の専門知識を有するトンプソン・ミート・マシナリー(Thompson Meat Machinery)社とスコット・オートメーション(Scott Automation)社に白羽の矢を立て、さらに、製造業における設備自動化のパートナーとして数年前からスコット・オートメーション社からの信頼を得ていたオムロンにもプロジェクト参加の声がかけられました。
オムロンがセンシング技術を得意とすることを知っていたスコット・オートメーション社は、まず、ものの色の違いを感知する「カラーマークセンサー」の提供をオムロンに依頼しました。このセンサーを機械に取りつけることにより、バンドソーマシーンの刃がオペレーターのゴム手袋に接触しそうになると、それを検知して自動的に停止させることが可能になります。
しかし、オムロンは顧客から依頼される製品を提供するだけではなく、最終的な課題の解決につながっているかどうか、という点にも拘り現場の状況を詳細にヒアリングしました。その結果、センサーの検出範囲が狭いことから、今回はカラーマークセンサーの導入ではなく、画像センサー「FQ2」をするに至りました。スコット・オートメーション社の依頼どおり、カラーマークセンサーを導入しても目的は達成します。しかし、FQ2を採用することで、狭い範囲で素早く処理される加工業務中の異変を瞬時に、より正確に判定することができます。オムロンが製造業の現場で培ってきた課題解決力が食肉業界でも活かされました。
このプロジェクトに対するオムロンの真摯な思いを受けたスコット・オートメーション社は、カメラの検出速度をさらに短縮することでより安全性を高めたい、という新たな挑戦をオムロンと共有しました。
チームは更なるハードルに決してひるむことなく、むしろより高い価値を提供することへの思いを強め、画像センサーのテスティングや微調整を何度も繰り返しました。そして、顧客の期待に応え、カメラの検出速度を50ms以下にすることを実現しバンドソーマシーンの安全性をはるかに向上することに成功します。これにより、世界初バンドソーマシーン向けの安全化ソリューションが実現しました。
オムロンのセンサーにより安全化されたバンドソーマシーン
オーストラリアでは現在、オムロンの安全化ソリューションを搭載したバンドソーマシーン数は1,500台を超え、同ソリューションを採用する食肉加工プラントが増え続けています。チームは、この現状に満足することなく、将来的な課題にも対処できるよう引き続きソリューションの改善を図っています。
あらゆる技術革新により製造現場の自動化が進むなかでも、完全な自動化が現実的ではない労働集約型生産では、人に頼る作業は引き続き重要になります。人々の生活に不可欠な"食"を支える産業においても同様です。オムロンは、常に人を主役として、人が可能性を最大発揮し成長と働きがいを実感できる自働化「人と機械の高度協調」の実現を目指し、これからも事業を通じた持続可能な社会の実現に貢献し続けます。