OMRON

Corporate | Japan
  1. ホーム
  2. 統合レポート2026
  3. CTOメッセージ

CTOメッセージ

技術を顧客価値と事業成果へ
確実につなげる技術経営の実践

代表取締役
執行役員副社長 CTO
宮田 喜一郎

SF 2nd Stageで求められる技術経営

オムロンはこれまで、近未来デザインからのバックキャスト思考に基づき、社会的課題を起点とした新規事業を生み出す事業創造プロセスを全社に確立してきました。これは、ソーシャルニーズの創造により成長を加速する技術経営であり、その成果の一つが、本社組織として事業創造プロセスを牽引したIXI(イノベーション推進本部、現データソリューション事業本部(DSB))の創出につながりました。

一方で、近年の市場環境では、AIの進化やデータ活用競争の激化により、個別事業ごとの技術強化だけでは競争優位を維持することが難しくなっています。また、当社においても、経営資源の分散により市場変化への対応が遅れ、売上成長が停滞し、事業ポートフォリオの強みを十分発揮できていませんでした。こうした経営環境を打破し再び成長サイクルへと転換していくために、オムロンが保有する技術資産を全社視点で統合し、事業成長へ結び付ける仕組みを構築することで、技術経営のアップデートを図ることとしました。これまでの技術経営を「技術経営1.0」とするならば、今回の取組みはまさに「技術経営2.0」への進化と位置づけることができます。

技術経営2.0とは、市場成長を上回る持続的成長を目指し、注力事業への集中投資と既存事業の成長、新規事業の創出を両立させるとともに、競争力の源泉を「全社重要技術」と位置づけ、経営の基盤である投資・技術・知財・人財を全社最適でマネジメントし、顧客価値と事業成果を創出するものと定義しています。

成長戦略を支える競争力の源泉としての技術

中期ロードマップ「SF 2nd Stage」の策定において、当社は「収益性」「市場成長性」「『GEMBA DX』との親和性」などの観点から、今後の成長を牽引する13の注力事業を選定しました。これらを成長ドライバーと位置づけ、市場成長を上回る成長の実現を目指します。そのために、注力事業の成長と事業横断での競争力強化を支える技術として、デバイス事業とデータサービス事業の競争力向上につながる6つの技術領域を定めました。さらに、それらを支える基盤となる2つの技術領域を加えた計8領域を、「全社重要技術」と定義しています。全社重要技術は、単なる研究テーマ群ではなく、注力事業の競争優位を構成する共通基盤であり、複数事業で再利用・横展開できるオムロン固有の経営資産です。

全社重要技術領域:エッジコントロール、電力変換・制御、データマネジメント、設計・実装・管理、エッジセンシング、Agentic AI、分散・クラウドコンピューティング、開発DX/ソリューション

全社重要技術を軸としたマネジメントの進化と2030年度の目標

全社重要技術を事業成果へつなげるため、当社は事業戦略と技術戦略をより強固に連結させるマネジメントへ進化させています。具体的には、「テクノロジーガバナンス」を導入し、事業や技術の成熟度を短期・中期・長期の時間軸で可視化(Business Technology Readiness Map: BTRM)し、2030年以降の成長も見据えながら、先行投資の判断や重要技術の定義、投資、人財配分などを機動的に見直します。あわせて、技術投資の優先順位と実行状況を継続的に評価することで、研究開発資源を重点領域へ戦略的に集中投資させます。これにより、当社の強みであるデバイス技術とデータ活用技術を磨き上げ、開発生産性、技術競争力、事業競争力を一体的に高めていきます。

2030年度には、全社重要技術へのR&D投資比率60%、開発生産性の2024年度比2.5倍を当面の目標と設定しています。ただし、開発生産性(営業利益/R&D投資)の向上のみを追求すると、R&D投資を抑制することで短期的な効率を高める縮小均衡につながる懸念があります。そのため、市場成長を上回る持続的成長と開発生産性の向上の両立を実現するべく、従来の開発生産性に加え、売上成長も考慮した総合的なR&D投資の評価指標を設定しています。

GEMBA DXによる新たな顧客価値の創出

「GEMBA DX」とは、オムロンの強みであるデバイスから得られる高品質なデータと、現場に存在する多様なデータを突合し、長年培ってきた現場知見を活用して価値ある情報へ変換することで、現場の課題解決に貢献するデータサービスのコンセプトです。当社は、センシング・制御技術によるセンサーやコントローラーをはじめとする製品を通じて現場データを取得する基盤と、それらを高度に制御し価値へ変換するOT(Operational Technology)をあわせ持っています。さらに、長年にわたり現場で蓄積してきたデータと現場知見を融合・活用することで、強いデバイスを起点としたデータソリューション事業を展開し、オムロン独自の価値創造モデルを推し進めていきます。

例えば、制御機器事業では、ITとOTの融合のキーデバイスである、ミリ秒オーダーの現場データ同期を実現するデータフローコントローラーを開発しました。他社設備との接続も可能であり、設備投資に制約がある中堅・中小製造業の顧客に対応し、フィジカルAI市場をリードするポジションの確立を目指しています。また、ヘルスケア事業では、血圧等の現場データ(ライフログなど)と医療ビッグデータを掛け合わせ、「疾病の予兆AI」を開発しています。

各ドメインで目指す「GEMBA DX」

全社ナレッジマネジメント基盤によるオペレーションエクセレンスの実現

GEMBA DXへの転換を推し進めるため、これまで述べたテクノロジーガバナンス等に加え、もう一つの重要な取組みが、オムロンの長年にわたるモノづくりの知見を活かし各業務におけるオペレーションエクセレンスを実現する「全社ナレッジマネジメント基盤」の構築です。この基盤では、エンジニアリングチェーン、サプライチェーン、デマンドチェーンを担う各部門で管理されている多種多様なデータを参照・統合し、データの構造化や意味づけ、関連づけを行います。そして、近年急速に実用性が高まっているAIを活用して検索や推論を行うことで、個々の業務におけるスピードと質を向上させるとともに、部門をまたぐ意思決定を円滑にします。この基盤を活用することで、全社のオペレーションを高度化し、研究開発から事業展開に至るまでの実行力を高め、技術を確実に顧客価値と事業成果へと結び付け、オムロンの競争力をさらに高めていきます。

CTOとして描く持続的成長への道筋

オムロンは、「SINIC(サイニック)理論」を羅針盤に、自律社会、そしてその先の自然社会を見据えた近未来デザインを描き、バックキャストで将来必要となる技術を創出していきます。その目標に向け、CTOとして、事業戦略と技術戦略の双方に深く入り込み、全社重要技術を競争力の源泉として磨き上げることで、新たな顧客価値と事業成果の創出を加速させます。

統合レポート トップへ
ページ
上部へ