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CIOメッセージ

データドリブン経営により、
新たな価値を創出する

執行役員常務 CIO 兼
グローバルビジネスプロセス & IT革新本部長
衣川 正吾

データドリブン経営への進化:顧客価値の最大化と経営スピードの加速

今年オムロンは、経済産業省・東証等により「DX銘柄2026」に選定されました。事業部門でのGEMBA DXの実践に加え、全社横断でのデータ基盤整備や人財育成を一体的に推進してきた成果が高く評価されたものであり、変革の確かな手応えを感じています。

私たちはデータを「ヒト・モノ・カネ」に続く「第四の経営資源」と位置づけています。長年培ってきたハードウェア技術やグローバル販売網、人的資産にデータを掛け合わせ、持続的な競争優位性と高い収益性を確立する。これこそが私が推進する「データドリブン経営」の本質です。

真の目的は単なる社内業務の効率化にとどまらず、現場の膨大な一次データから本質的な情報を抽出し、顧客の潜在課題や経営課題に応えるソリューションを提供することにあります。これにより「顧客価値の向上」と「顧客起点の経営スピード向上」を同時に実現し、持続的な企業価値向上につなげます。

過去の構造的課題を克服し、全社データを即座に意思決定へ活かす経営へ

かつてのオムロンでは、業務ごとにシステムが断片化しデータが社内に点在していました。システム間の連携不足から、人手に頼る「情報のバケツリレー」が発生し、全社の経営状況をリアルタイムかつ正確に把握することが困難でした。この課題を抜本的に解決すべく、長期ビジョン「Shaping the Future 2030」の下、調達・製造・販売・会計等のバリューチェーンを一気通貫でつなぐ「コーポレートシステムプロジェクト(CSPJ)」を推進しています。2026年度から本格的な導入・活用期へ移行し、事業規模が大きく、業務プロセスも複雑なため最大の難所であった日本・欧州で稼働を開始しました。

現在、グループ売上の約30%を占める事業が、CSPJで構築したデータ基盤上で動き始め、事業運営に必要なデータを単一の基盤上でリアルタイムに取得・活用できるようになりました。現場では新システム・プロセスの定着化を進める中で、データ活用に向けた課題や改善点が明確になってきました。事業運営の中で改善サイクルを回し、単なるシステム導入ではなく、成果を生み出す経営基盤へと磨き上げています。CIOとして、既存システムとの柔軟な連携を通じて2030年までに全社規模でのデータ基盤の確立を完遂します。この現実的かつ最適なアプローチにより、データを意思決定に活かす経営を実現すべく、CSPJは着実に前進しています。

また、CxO体制のもと、技術統括のCTO、顧客価値とビジネスモデルの変革を担うCDXO、IT・データ基盤を担うCIOである私が密接に連携し、AI・データ戦略を一体的に推進しています。全社視点でテーマを管理し、優先順位や投資判断、実行後のリターンのモニタリングを通じて、投資収益率(ROI)に基づく規律ある投資を徹底します。

データの統合がもたらす「2つの革新」

コーポレートシステムによるデータのリアルタイム化と一元管理は、事業成果として2つの価値を創出していきます。

第一に、「顧客価値の向上」です。従来は機能ごとに分断されていたシステムを一つの基盤上でつなぐことで、受注・発注の段階から在庫や納期をリアルタイムに把握できるようになります。これにより、見積・納期回答や仕様変更対応を迅速化するとともに、販売・生産・調達・物流が同じデータをもとに連携し、顧客対応力を高めていきます。この共通基盤は、顧客起点の事業運営を支え、バリューチェーン全体での顧客課題の共有と顧客満足の向上を実現していきます。さらに、オムロンの事業運営と顧客現場から得られるデータに、長年培ってきた知見を掛け合わせることで、顧客課題を迅速かつ的確に捉え、ハードウェアの提供にとどまらないより本質的な解決策や新サービスにつなげていきます。

第二に、「顧客起点の経営スピード向上」です。経営ダッシュボード等の整備により、経営陣と現場がリアルタイムの事実データに向き合える環境が整いつつあります。世界各地の需要変動に応じた生産・在庫の最適化や経営資源の迅速な再配分、タイムリーな意思決定を行うことで、機会損失を防ぎ、資本効率を高めた「攻めの経営」を実現していきます。

AI活用とカルチャー醸成による変革の加速

強固なデータ基盤と並び変革の両輪となるのが「AI活用」と、AI・データを使いこなす「人財・カルチャーの醸成」です。システムやAIは、導入するだけでは成果につながりません。全社員向けのDX研修によりデータ活用やAIの基礎力を高めるとともに、実践を通じて学び挑戦できる環境を整えてきました。

その実践の場が生成AI活用促進プロジェクト「AIZAQ」です。「現場の業務課題を解決したい」という社員のWill(志)を起点に、社員主導で生成AIによる業務変革を進めています。専門PMOチームが課題の具体化から実務への組み込みまで伴走し、安全かつ適切な生成AI活用を促しながら、必要に応じて軌道修正し、成果創出と社員の生成AI活用力向上を支援します。

こうした取組みにより、過去3年間で、オムロンで定義する25職種のうち20職種にまで生成AIを含むAIの実務活用が広がりました。営業準備や熟練者のノウハウ伝承などで成果を上げ、累計2,560人月、約22億円相当の工数を削減しました。現場への一方的な導入ではなく、自ら業務を変革できる人財と環境を育んできた成果です。

今後は、ボトムアップの活動を拡大するとともに、経営課題を起点とするトップダウンの取組みも強化します。ボトムアップとトップダウンでAI活用を進め、データドリブン経営を実現する人財・カルチャーを醸成します。

日本・欧州でのシステム立ち上げを経て、オムロンはデータドリブン経営の本格的なスタートラインに立ちました。CIOである私の使命は、データ基盤とAI活用の知見をグローバルへ迅速に横展開し、正確なデータに基づき即座に判断し価値を創出できる組織へと進化させることです。その根幹を支える人を育み、社員がデータやAIを使いこなして挑戦できるカルチャーを醸成することで、変革を加速し、組織全体の創造性を最大化していきます。

TOPIC:人財とカルチャーをDXの実行力へと転換する「AIZAQ」

DXによる企業価値向上には、生成AIなどの新技術の導入にとどまらず、現場課題への適用、業務プロセスへの実装、成果の全社展開を継続的に行う実行力が不可欠です。オムロンの生成AI活用促進プロジェクト「AIZAQ」は、この実行力を高め、業務生産性の向上とDX人財の育成、DXを進めるカルチャーづくりを同時に実現する仕組みです。

AIZAQでは、業務課題を持つ社員と生成AIの知見を持つ支援者(専門PMOチーム)が、部門や職種を越えてチームを組成します。半年ごとの検証を通じて、生成AIの業務への適用可能性、効果、実装上の課題を検証し、成果だけでなく試行錯誤から得た学びも共有します。検証で得た知見は、他部門でも活用できる形に整理し、類似業務への展開や標準プロセスへの組み込みにつなげています。

現場からの自発的なテーマに加え、経営上の重要課題についても、関係部門、業務知見、生成AIの専門性を結集した部門横断チームで検証と実装を進めています。これにより、現場起点でDXの担い手と対象業務を広げるとともに、経営が優先する課題には全社最適の視点で取り組んでいます。AIZAQの経験者が次のテーマで支援者となる循環も生まれており、DXの実践知と部門横断のネットワークが継続的に拡大しています。

2023年のプロジェクト開始以降、AIZAQを通じてDXを実践した社員は1,200名以上、国内社員の約12%に達し、累計101テーマに取り組みました。具体例として、関税対応業務では年間工数を約5割削減し、知的財産関連業務では従来作業の約8割を生成AIが担う業務プロセスへ移行しました。

今後も、現場の課題意識、人財の多様な専門性、ナレッジの共有・再利用、経営課題との接続を一体的に運用し、安全かつ適切な生成AIの活用を確保しながら、グローバルに実践者、適用テーマ、組織実装を拡大していきます。AIZAQは、実践を通じて得た知見と部門を越えたつながりを組織内で循環させることで、人財とカルチャーをオムロンのDX実行力へと転換する取組みです。これにより、DXを一過性の施策に終わらせず、継続的な生産性向上と新たな価値創出を支える経営基盤として定着させていきます。

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