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CHROメッセージ

人と組織の変革を、
成果で証明する

取締役 執行役員専務
CHRO 兼 CRO
冨田 雅彦

GEMBA DX企業への転換に向けた人と組織の変革

オムロンは中期ロードマップ「SF 2nd Stage」において、事業ポートフォリオを再構築し、注力13事業に経営資源を集中することで、GEMBA DX企業への転換を進めています。これまでのモノを中心としたビジネスモデルから、モノにサービスやデータを組み合わせて、より大きな社会的課題の解決を実現するビジネスモデルへ変革するには、それを担う人と組織も変わらなければなりません。注力事業の成長に必要な人財を確保・育成し、適所に配置するとともに、一人ひとりが能力を発揮し成果を生み出せる組織へと進化することが不可欠です。

人的創造性とは:人財への投資に対してどれだけ付加価値を生み出せたかを示す、オムロン独自の指標です。社員一人ひとりの能力発揮を通じて価値創出を拡大し、持続的な成長につなげられているかを測るために設定。分母と分子の双方に目標を設定し、投資を抑制するのではなく、投資を通じて価値創出を拡大することを目指します。人的創造性=付加価値÷人件費

SF 1st Stageでも、「モノ+サービス」へのビジネスモデル変革に合わせて人と組織の変革に取り組みました。社員を新たな価値創造の原動力と位置づけ、人財への投資がどれだけ価値創出につながったかを測る指標として「人的創造性」を設定し、その向上に向けて8つの人財施策(注)を進めました。各施策は着実に進展し、人財への投資や制度・仕組みの整備も進みました。

しかし、市場環境や競合が急激に変化する中で、これらの取組みを、事業戦略の遂行に必要な規模とスピードで実行し、事業の成長に結び付けるに至らず、人件費の増加を上回る付加価値の創出という人的創造性の目標を達成できませんでした。人財施策の方向性は間違っていなかったものの、人と組織の変革のインパクトが不十分だったのです。

その要因は、事業戦略と人財戦略を結び付け、必要な人財の確保・育成・配置から、社員の挑戦と成果の創出までを一貫して進める仕組みが十分に機能していなかったことにあります。

第一に、成長に必要な人財像の共有がグループ全体でできておらず、人財の確保・育成・配置が事業単位にとどまっていました。そのため、事業環境や戦略変化に応じた全社的な人財シフトを迅速に実行できませんでした。

第二に、社員に期待する役割や成果が明確な形で共有されていない組織があり、一人ひとりの能力発揮や挑戦を公正に評価して事業成果や次の成長機会につなげる仕組みも不十分でした。さらに、人財施策の成果を誰が確認し、期待した成果が得られなかった場合に誰が見直すのか、経営と事業の責任も曖昧さを残していました。

つまり、SF 1st Stageの課題は、個々の施策の内容ではなく、人財戦略を事業成長につなげる一連の実行の仕組みと、経営の関与が不十分だったことにあります。私は、施策を導入するだけでなく、人と組織の変化とそれが生み出す成果までを確認し、必要な手を打ち続けることが経営の責任だと考えています。これが、SF 1st Stageにおける最も大きな反省です。

この反省を踏まえ、SF 2nd Stageでは、人と組織の変革を2つの柱で進めます。1つ目は、注力事業に必要な人財を全社で確保・育成・配置するとともに、事業を率いる経営人財を育成する「人財ポートフォリオの再構築」です。2つ目は、社員一人ひとりの役割と期待する成果を明確にし、挑戦と成果を公正に評価・処遇するとともに、多様な挑戦を促す「挑戦する人財と組織づくり」です。

この2つを柱として、人財への投資を人と組織の変化、さらに事業成長へとつなげます。

(注)SF 1st Stageでは、数ある人財施策の中から、人的創造性を高めるために最も有効と考えた8つの人財施策を実行しました。

  1. ①価値創造をリードする専門人財のグローバルでの採用
  2. ②グローバル重要ポジションの現地化推進
  3. ③次世代リーダーの育成による女性活躍の推進
  4. ④キャリア・雇用形態・働き方の多様な選択肢の拡充
  5. ⑤成長意欲のある人財への投資
  6. ⑥役割責任・スペシャリティを定めるジョブ型人事制度
  7. ⑦成長と挑戦を後押しする「応援文化」の醸成
  8. ⑧社会的課題解決の成果を分かち合う取り組み・制度

経営主導と凡事徹底で、人と組織の変革をやり切る

SF 2nd Stageでは、人と組織の変革を個々の施策や現場の努力だけに委ねません。経営が事業戦略に基づいて変革の方向性と優先順位を示し、進捗と成果に責任を持ちます。 その基盤として、事業戦略の遂行に必要な人財像を具体化し、人財の確保・育成・配置を継続的に見直す仕組みを整えてきました。具体的には、グローバル約2万人の社員を対象に、一人ひとりの経験、スキル、専門性、志向の可視化を進めています。これにより、埋もれていた強みや可能性を見いだし、新たな役割の付与や成長機会の提供につなげます。まず、2025年度までに、社員の職務経験やスキルを把握できるようにするとともに、人財開発会議を通じて、事業に必要な人財や育成・配置方針を議論してきました。これにより、計画的な育成・配置と、その進捗を継続的に確認する基盤を整えました。SF 2nd Stageでは、この基盤を活かし、人と組織の変化を事業成長につなげます。

そして、SF 2nd Stageの実行を支える「凡事徹底」は、人財戦略においても重要な考え方です。必要な人財の確保・育成・配置と、挑戦と成果に対する公正な評価を徹底し、次の成長機会につなげる。こうした人事の基本を事業戦略と結び付け、必要な規模とスピードで着実に決めたことをやり切ることが、人事領域における凡事徹底です。ここでいう「やり切る」とは、最初に決めた施策をそのまま続けることではありません。成果を継続的に確認し、必要に応じて施策を見直しながら成果が出るまで実行し続けることです。経営が方向性を明確にし、現場の主体性を活かしながらも、自らの責任のもと「凡事徹底」によって変革をやり切る。この実行を通じて、人財施策を事業成長につなげ、結果を出し続ける組織へと変えていきます。

人財ポートフォリオの再構築

人と組織の変革の1つ目の柱は、事業戦略と連動した人財ポートフォリオの再構築です。注力事業に必要な人財を確保・育成・配置するとともに、事業を率いる経営人財を育成します。

まず、2030年に向けて、注力事業の成長に不可欠な開発領域とフロント領域を中心に、1,000名を超える規模の人財シフトを進めます。社内異動と既存人財の能力開発に加えて、今のオムロンにはいない経験や能力を持った人財を外部から積極的に採用し、事業戦略の実行に必要な人財を確保します。

重要なのは、構造改革前の人件費構造に戻すことなく、限られた人的資本を高成長・高付加価値領域へ重点的に配分することです。人財シフトと同時に、業務の効率化やデジタル活用を進め、より高い付加価値を生み出す仕事への移行を促すことで、事業成長と生産性向上を両立します。特に、注力事業の価値創出を担う人財については、全社最適の視点から経営が責任を持って確保・配置します。

その具体例の一つが、注力事業の成長を支えるパワーエレクトロニクス人財の獲得です。事業横断で必要人財を特定し、採用・育成・配置を全社一体で進める仕組みへ転換したことで、人財確保は着実に進展しています。こうした成功事例を、他の注力事業を支える専門人財にも展開し、事業戦略と連動した全社最適の人財マネジメントを加速していきます。

人財ポートフォリオの再構築を支えるのが、人財情報の可視化です。社員の職務経歴や強み、目標・成果を継続的に把握することで、組織の枠を越えて、一人ひとりの強みや可能性を活かした育成・配置を進めるとともに、事業成長につながっていない場合には、育成方針や配置を見直します。必要な人財像の具体化、確保・育成・配置、成果の確認、見直しのサイクルを継続的に回すことで、人財ポートフォリオの実効性を高めます。

加えて、注力事業には、事業を率い、成果を生み出すトップリーダーを育てることも欠かせません。将来のオムロンを率いる経営人財を2030年に向けて100人規模で育成します。オムロンは2011年からコアポジション戦略を進め、グローバル約200の重要ポジションに対し、1,000名を超える後継者を育成してきました。一方、経営環境が複雑化し、ビジネスモデルの転換が求められる中、特定のポジションを担えるだけでは十分ではありません。必要なのは、未来のありたい姿から経営課題を自ら設定し、事業成長や社内変革をやり切ることができる経営人財、つまり未来を創る人財です。

こうした人財は、研修だけで育つものではありません。将来のトップリーダーの育成を経営アジェンダと位置づけ、CEOやCxOが直接関与します。戦略的タフアサインメントを通じて、戦略を描くだけでなく、実行して成果を出し、人と組織を育てる力を鍛えます。

このように、注力事業への人財シフトと経営人財の育成を一体で進め、人財ポートフォリオを再構築します。ただし、必要な人財を配置しても、担う役割や期待が曖昧で、挑戦と成果が正しく評価されなければ、その力を十分に引き出すことはできません。そこで、評価・処遇と企業文化の両面から、一人ひとりが能力を発揮し、挑戦を成果につなげられる環境をつくります。

挑戦する人財と組織をつくる

人と組織の変革の2つ目の柱は、挑戦する人財と組織づくりです。社員一人ひとりが、日常の仕事の中でベンチャー精神を発揮し、挑戦できる組織をつくります。オムロンはこれまでも、企業理念の実践においてベンチャー精神を大切にし、社員の挑戦を促してきました。一方、挑戦を社員の主体性に委ねる部分が大きく、日常業務のなかで生まれる多様な挑戦に対して、組織として十分にスポットライトを当てられていませんでした。その結果、ベンチャー精神は、新規事業開発など限られた役割のみに必要なものと受け止められることがありました。

SF 2nd Stageでは、評価・処遇制度と文化の両面から、誰もが様々な種類や大きさの挑戦に踏み出し、その挑戦を成果と次の成長につなげられる環境を整えます。

評価・処遇制度の面では、社員が担う役割、挑戦の難易度、成果や貢献を公正に評価し、処遇や次の機会に反映します。その際に私が重視するのは、「公平」ではなく「公正」です。挑戦の機会は広く提供する一方、役割や成果が異なれば、評価や処遇にも合理的な差が必要です。その違いを説明できる形で認め、社員に報いることが公正だと考えています。

SF 2nd Stageの実現に必要な役割へ人財を機動的に配置し、一人ひとりの挑戦と成果創出を促すため、これまで係長以上の層を対象に導入していた役割等級制度を、全社員対象の制度に移行します。新たな役割等級制度では、役割責任の大きさに応じて等級を設定し、成果に応じて見直すことで、年齢や勤続年数に関わらず社員の挑戦と成長を促します。社員の成長と事業の成長、その成果に応じた処遇の好循環を生み出すべく、今年度中の導入に向けて準備を進めています。

社員が担う役割を明確にし、その役割に応じて目標と期待する成果を設定することが、公正な評価・処遇の出発点となります。そのため、生成AIを活用して、目標の具体性や難易度、上位方針とのつながりを確認し、目標設定と評価運用の質を高めます。生成AIは評価を決定するものではなく、社員と上司の対話を支援し、期待する成果を明確にするために活用します。目標とその進捗・結果を継続的に把握することで、評価の公正性と納得感を高め、育成、配置、人財登用につなげます。

評価するのは、能力を保有していることではなく、その能力を発揮してどのような成果を生み出したかです。成果を上げた人にはメリハリある処遇に加え、より大きな役割や次の挑戦の機会で報います。卓越した成果は特別インセンティブで称えます。期待した成果に届かなかった場合も、挑戦の過程と課題を明らかにし、学びを成長と再挑戦につなげます。

文化の面では、誰もが安心して挑戦に踏み出せる環境をつくります。そのためには、成功事例だけでなく、挑戦する過程での試行錯誤や失敗から得た学びに社員が触れられることが重要です。新たなTOGA(The OMRON Global Awards)では、エントリーした社員全員の挑戦ストーリーを共有します。他の社員の経験を知ることで、自分の仕事にも挑戦の余地があると気づき、挑戦を楽しめるようにします。 挑戦に大小はありません。顧客価値を高めるための仕事の見直しや品質・生産性の向上も、すべて挑戦です。制度と文化の両面から、多様な挑戦と学びを次の行動につなげ、誰もが日常的に挑戦できる組織をつくります。

「結果を出し続ける」組織へ

こうした取組みが制度の導入にとどまらず、人と組織の変革が実際に進んでいるか。その状態を確認する重要な指標の一つが、社員エンゲージメントスコアです。私はエンゲージメントを、単なる社員満足度とは捉えていません。会社は能力開発や活躍機会を提供し、挑戦と成果に公正に報いる。社員は会社の目指す方向に共感し、主体的に貢献する。会社と社員が互いの価値を認め、ともに成長している状態か。そのつながりが、エンゲージメントに表れます。

2030年のエンゲージメント目標70の達成に向けて、経営として進捗を注視し、必要な手を打ち続けます。ただし、エンゲージメントの向上自体が人財戦略の目的ではありません。人と組織の変革を顧客価値の創出や事業成長につなげることが、CHROの使命です。

SF 2nd Stageの人財戦略は、人と組織のあり方そのものを変える大きなチャレンジです。社員への影響も小さくありません。しかし、将来の成長に必要な変革を先送りすることの方が、大きな経営リスクだと考えています。CHROとして、変革の必要性と進捗を発信し、社員の理解と納得を高めながら変革を進めていきます。

2つの柱を確実に進め、期待した成果につながらなければ、私の責任で次の手を打つ。オムロンを「結果を出し続ける組織」に変えるまで、人と組織の変革をやり切ります。

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