「攻めの経営」を支える
リスクマネジメントの進化
中期ロードマップ「SF 2nd Stage」では、データサービス事業拡大やグローバル展開など成長への挑戦を加速します。挑戦に伴い複雑化するリスクに先手を打ち、経営と事業が成長戦略の実行に集中できる基盤を整えるため、2026年度からCROを設置しました。私は、リスクマネジメントと内部監査を一体で機能させることが極めて重要だと考えています。その狙いは、内部監査を「結果の確認」にとどめず、リスク予防につなげることです。具体的には、重点テーマごとに、専門機能部門と監査部門が連携して必要なルールやプロセスを設計・導入し、現場での機能状況やリスクの予防・早期発見への有効性を確認する取組みを始めています。このPDCAを継続的に回し、内部統制システムの有効性を高めていきます。
成長戦略の実行力を高めるには、意思決定スピードの向上に加え、変化に伴うリスクを早期に捉え、現場が迅速に対応できる仕組みが不可欠です。地政学リスクの高まり、データビジネスの推進やAI利活用、インド・中国等各エリアでの市場展開の加速、M&A等による事業領域の拡大など、オムロンの事業環境は大きく変化していきます。オムロンのリスクマネジメントは、こうした変化を捉え、企業価値に負の影響を及ぼす前に備えることを起点としています。
2026年度は、注力事業への経営資源の集中やデータサービス事業拡大など、SF 2nd Stageの実行に伴い、特にリスクの高まりが見込まれる5つの領域を、全社として先手を打つべき「重点テーマ」と位置づけました。
例えば、データサービス事業やAI利活用の拡大においては、データ・プライバシーやAIガバナンスに関する社会的要請や規制対応の重要性が一層高まると見ています。また、M&A等による事業領域の拡大では、新たな拠点や人財がグループに加わることで、ルールや統制の浸透にばらつきが生じ、コンプライアンス上のリスクが高まる可能性があります。こうした将来の変化をバックキャストで捉え、各リスクの事業への影響や現行の取組みを確認し、強化すべきマネジメントシステムとアクションを設計することで、リスクの顕在化を未然に防ぎます。
そして、このような取組みを補完し、現場の違和感や小さな兆候を把握する仕組みが、内部通報制度です。問題が大きくなる前にリスクの芽を捉え、適切な対応につなげる重要な役割を担います。
制度が有効に機能するには、制度の認知度を高め、秘密保持や通報者保護への信頼の確保が重要です。毎年の企業倫理月間におけるCEOメッセージ等を通じて、内部通報制度の重要性を繰り返し伝えています。内部通報窓口は、グローバル各エリアに設置しています。社内コンプライアンス部門の窓口に加え、秘匿性と独立性に配慮した外部弁護士事務所への委託窓口も設けるとともに、通報者保護への理解促進も進めています。また、海外社員やサプライヤー様向けにも、各地域に窓口を整備しています。
こうした取組みを進める中、2025年度の通報件数が過去最多の111件となりました。今後も、寄せられた声をリスクの早期把握と適切な是正につなげ、制度の実効性を一層高めていきます。
CROが経営視点で全体を統制する一方、事業特性に応じたリスクの判断・対応をビジネスカンパニー(BC)長に委ねることで、BCの自律性を高めます。
オムロンは事業ごとに顧客、製品、サプライチェーン、法規制などが異なります。また、リスクの予兆を捉え予防策を実行し、発生時の対処を担うのは現場のBCです。まずは本社主導で全社共通の考え方や基準、プロセス等リスクマネジメントの「型」をつくり、現場に実装します。全社共通の型は、BCの判断を一律に縛るものではありません。判断の拠り所を明確にすることで、BCが迅速に意思決定し、行動できるようにするものです。BCが型を土台に、固有のリスクも踏まえ、事業特性に即した運用を設計・実行する体制へと段階的に移行します。品質領域ではこの体制への移行が進んでおり、今後は他の重点テーマにも展開していきます。リスクマネジメントの主体を本社からBCへ移管すると同時に、CROがグループ横断でBCを支援・モニタリングし、全社の一貫性と実効性を確保します。
BC・BC長が現場でリスクを捉える「虫の目」と、CROがグループ全体の変化や共通課題を捉える「鳥の目」を組み合わせることで、現場の対応力とグループ全体のガバナンスを高め、重層的にリスクに対峙できる体制を構築します。
目指すのは、リスクの予兆を捉えて先手を打ち、発生時には現場が迅速かつ的確に対処する力を根付かせることです。CROとして、リスクマネジメント、内部監査、事業を横断で連携させ、将来のリスクに先手を打ち、SF 2nd Stageの実行力を支えます。経営と事業が成長への挑戦に集中できる基盤をつくることが、私の責任です。