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インテリジェントオペレーション※1、デジタルマチュリティ※2、そして新たな設備投資なく50%の改善を実現したバーチャルツイン技術――。OMRON Europe R&Dマネージャー|Tim Foreman 氏に、デジタルマニュファクチャリングの現状と、人の知見と組み合わせた製造現場の進化を目指すオムロンの取り組みについて話を聞いた。
(原文:Manufacturing Digital / 執筆:Jasmin Jessen)
※1:AIやRPAなどのデジタル技術を活用して企業の業務プロセスを最適化・自律化するアプローチのこと
※2:デジタル成熟度、企業や組織がテクノロジーを活用して変化に適応し、価値を生み出す能力のこと

| Tim Foreman 氏 オランダ・デンボス(Den Bosch)に拠点を置くR&D本部「OMRON Europe」の R&Dマネージャー。CERN(欧州原子核研究機構)での研究を経て、素粒子物理学で博士号を取得。以後、1993年にソフトウェアエンジニアとしてオムロンに入社した。2007年より欧州R&D組織を統括し、欧州での特許取得に貢献してきた。 欧州を拠点としつつも、グローバル規模でR&Dを推進している。現在、ダッソー・システムズ社とのバーチャルツイン技術に関するパートナーシップを主導している。 |

速度と精度だけでは、機械は「インテリジェント(知能化)」にはならないと Foreman氏は語る。
オムロンにも高精度で部品を実装するが、作業が終了すれば何も記憶していない装置はある。彼はインテリジェントをオフィスのプリンターに例える。「最近のプリンターはエラーランプを点滅させるだけでなく、どこで紙が詰まり、どう直せばよいかを具体的に示してくれますが、産業機械でそこまでできるものは、非常に少ないのです」。
Foreman氏によれば、オムロンは明確なステップで自動化の進化を進めているという。それは、データから情報へ、情報から提言へ、本当に価値のある場合のみ自動化していくというものだ。
同社は、この考えを自社のデンボス工場(OMRON Manufacturing of the Netherlands)の表面実装(SMT)ラインに応用している。今までデータを記録していなかった装置にディスプレイとメモリの機能を追加し、オペレーターが生産履歴を一目で把握できるようにしたのである。さらに、長年蓄積された専門家の知見を学習させたレコメンドシステムを開発。熟練者が不在の夜勤帯でも、オペレーターに対処方法を提示できるようになった。これこそが実際の現場で機能する「インテリジェント」だと言う。

デンボス工場では、バーチャルツイン技術でのシミュレーションと実際の生産ラインを比較したところ、新たな発見があった。ラインの稼働状況が当初の設計性能を35%下回っていることが判明した。さらに分析を行ったところ、機械のレイアウトを見直すことで、その性能差の15%を回復できることがわかった。
つまり、新たな設備投資を行うことなく、全体で推定50%の改善が見込めるという結果を得ることができたのだ。
世界各地でスマート工場の事例が取り上げられるが、欧州がデジタル化で遅れをとっているわけではないと Foreman氏は言う。「デジタル成熟度は、世界中で均一ではありません。どの地域にも先進企業とそうでない企業が混在しています」。
そして皮肉なことに、企業の規模がデジタル化の障害になることもある。ある大手メーカーでは、欧州全域にある約 7 万台の機械に IoT ボックスを手作業で接続すると約 7 万時間の作業工数かかると試算し、プロジェクトが止まってしまった事例もある。
しかし、欧州が抱える問題から、デジタル化せざるを得ない事情があるとForeman氏は言う。「労働力の減少と高齢化、そして規制の強化により、デジタル化は選択肢ではなく必須の課題になりつつあるのです」。
EU AI Act(欧州AI法)、Data Act(データ法)、GDPR(一般データ保護規則) といった法規制はデジタル化を加速させている。コンプライアンス対応にはまずデータとセキュリティの整備が不可欠だからだ。一方で、規制は新たな複雑さも生み出している。
Foreman氏は言う。「規制は今日の欧州のデジタルマニュファクチャリングにとって、最も強い推進力であると同時に、ブレーキの一つでもあるのです」。

データは不可欠だが、収集は出発点にすぎないとForeman氏は言う。データが信頼でき、使える状態であること。そしてタイムスタンプや適切な説明が付与され、その意味を説明する文脈と結びついていることが求められる。
人間は機械が自ら生み出せないものを提供する。数十年にわたる暗黙知と、それに基づく直感である。熟練者が減少し、人材の流動性が高まるなかで、その知識をデジタル化して継承していくことが不可欠だと、Foreman 氏は言う。
Foreman氏は、人間の判断を介さないことへのリスクにも言及する。あるメーカーでは保守担当者向けに生成 AI チャットボットを導入した。しかし、技術者が提示された対処法に従って結果、機械の安全装置を無効化してしまい、社内で使用禁止となったという。
デジタル化において見落とされがちな人の存在を挙げる。人を価値ある個人として扱い、意味のあるフィードバックを与え、反復的で無意味な作業に還元しないこと。これはオムロン自身の「人間性の尊重」の理念に通じるものであり、「何を自動化するか」だけでなく「どう自動化するか」を導くべき原則だと、彼は言う。
Foreman 氏は、「12 カ月後」よりも「12年後」を見据えて考えるべきだと言う。それは、工場における本当の変化は、世の中で騒がれているスピードよりも、ゆっくりと進むからだ。
今後1年で、工場のデジタル化と実際の現場にあるギャップを埋めるためのツールが、さらに増えていくだろうと予測する。しかし、完全な自動化・自律化した工場の実現にはまだ長い道のりがあると、彼は言う。
本記事は、2026年8月25日、英国発の製造業専門メディア『Manufacturing Digital』に掲載された、Jasmin Jessen氏による記事を翻訳・編集のうえ掲載しています。
(原文はこちら)
https://manufacturingdigital.com/articles/europe-ai-omron-the-truth-about-digital-manufacturing