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サステナビリティ
研究開発DXは“仕組み”で決まる!

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【AWS Summit Japan 2026 講演レポート】 オムロンが内製した「知財AIエージェント」の裏側を語る

2026年6月25日~26日、Amazon Web Services(AWS)が主催する国内最大級のテクノロジーカンファレンス「AWS Summit Japan 2026」が開催されました。クラウドやAIの最新技術や活用事例が共有されるこの場で、オムロン ストラテジックR&D本部 デジタルソリューションセンタ デジタルプラットフォーム部 部長の津田学が事例セッションに登壇しました。
講演タイトルは、「特許調査工数50%減も!オムロンR&Dが内製する『知財AIエージェント』の裏側-検索精度UP&リードタイム短縮のノウハウ-」。
「AIネイティブ」という言葉が広く浸透している現代。AIエージェントは多くの業務で当たり前に使われる存在になりつつあります。エンジニア自身が業務に合わせてAIエージェントを開発する場面も増えていくでしょう。一方で、そうした取り組みを安全かつ継続的に運用していくためには、セキュアなクラウド基盤の存在が欠かせません。

本記事では、オムロンが知財AIエージェントをどのように実装したのか、その背景にある考え方や具体的な取り組みに加え、基盤となる技術や今後の展開までを、講演内容をもとにご紹介します。研究開発の現場が、AIエージェントによってどのように変わり始めているのか、その一端をぜひご覧ください。


事例講演 | 「特許調査工数50%減も!オムロンR&Dが内製する『知財AIエージェント』の裏側-検索精度UP&リードタイム短縮のノウハウ-」


― なぜ知財業務がエンジニアのペイン(負担)になるのか

津田:新しい技術や事業を生み出すうえで、特許調査は欠かせないプロセスです。
一方で現場では、その調査や発明説明書の作成をエンジニア自身が担うケースも多くあります。
特に負担となっているのが、「発明のポイント」を見極める作業です。
特許文献は数百件から数千件に及ぶこともあり、それらを読み込みながら、自分の発明との違いを整理する必要があります。
しかし特許文書は一般的な文章とは異なる独特の表現で記載されており、専門知識がないと理解するのに時間がかかります。
さらに、発明説明書では、自分のアイデアが既存技術とどう違うのか、どこに価値があるのかを言語化しなければなりません。
その結果、
・文献を読むだけで時間がかかる
・発明の本質を言語化するのが難しい
といった課題が生じます。

本来時間をかけるべき発明創出よりも、その前段の作業に多くの工数がかかってしまう。この構造が、研究開発の効率を下げる要因となっていました。


― 「特許は言語」という発想から生まれたAIエージェント

津田:この課題に対する出発点は、シンプルな発想でした。
「特許は読みにくいですが、結局は『言語』なんです」

言語であれば、大規模言語モデル(LLM)が得意とする領域です。
この特性を活かせば、エンジニアの負担を減らせるのではないかという考えに至りました。

そこで開発したのが、知財AIエージェントです。
知財AIエージェントは、特許調査において
・発明のポイントを分かりやすく要約する
・対話形式で深掘りできる
・分析結果をレポート化する
といった形で、エンジニアの理解を支援します。

さらに、仕様書や設計書などの開発ドキュメントを入力すると、
・発明のポイント抽出
・類似特許の特定
・特許性の検討
・発明説明書の生成
までの一連の流れを支援します。

日本の特許庁が公開している特許データベースを活用した点もユニークなポイントです。
いわば「特許データを丸ごと自社環境に持つ」形です。取り込んだデータは、Amazon OpenSearch Serviceによる検索と、Amazon Bedrockによる生成AIを組み合わせることで、検索・要約・生成を一体化したシステムとして構築されています。
現在ではさらに改善が進み、コスト最適化を図りながら、社外の商用データベースともAPI連携できるようになっています。


― 特許調査工数50%削減を実証

津田:この取り組みによって、現場には具体的な変化が生まれています。
社内エンジニアへのアンケートでは、特許調査や発明説明書作成にかかる工数が、平均で約65〜70%削減。少なく見積もっても約50%の短縮効果が確認できました。

ここで重要なのは、「作業を速くするツール」ではないという点です。
知財AIエージェントの価値は、エンジニアが発明の本質を理解しやすくなり、思考を深めやすくなることにあります。いわば、業務の効率化ではなく、思考そのものを支援する仕組みとして設計されています。
これらをAIが担うことで、エンジニアは本来の役割である発明創出に集中できるようになります。

研究開発の価値は、どれだけ多くの文献を読むかではなく、どれだけ新しいアイデアを生み出せるかにあります。その本質に向き合いやすい環境をつくることが、知財AIエージェントの狙いなのです。


― AIエージェントは「作るだけでは使われない」

津田:ここまで紹介してきた知財AIエージェントですが、もう一つ重要な観点があります。
それは、「AIエージェントは作るだけでは使われない」という点です。
生成AIの普及により、業務に特化したAIツールを開発するハードルは確実に下がっています。しかし、それを社内で広く活用し、定着させていくためには、乗り越えるべき課題があります。
大きくは「セキュリティ」と「コスト」の2つです。

まずセキュリティの観点です。研究開発の現場では、特許のアイデアや未公開の技術情報といった機密性の高いデータを扱います。そのため、クラウド上でAIを活用するには、適切なセキュリティ設計が不可欠になります。
一方でコストの問題もあります。エンジニアが個別に環境を構築すると、必要以上に高性能なリソースを使ってしまう、利用していない時間も稼働し続けるといった無駄が生じやすくなります。
こうした課題に対応するために構築しているのが、オムロンの生成AI基盤「RDinX(アールディンクス)」です。知財AIエージェントも、この基盤上で動作しています。


― 研究開発環境をそのままクラウドに持ち込む

津田:「RDinX」の役割の一つが、セキュリティの担保です。
研究開発では機密性の高い情報を扱うため、オンプレミスと同等のセキュリティをクラウド上でも実現する必要があります。オムロンでは、既存の情報セキュリティルールを一つひとつ分解し、AWS上の設定項目に落とし込むことで、この課題に対応しています。


― 「動的制御」で無駄をなくす

津田:もう一つの役割が、コストの最適化です。
クラウドサービスを利用する場合、使い方次第でコストが大きく変動します。そこで「RDinX」では、「動的制御」という考え方を取り入れています。
具体的には、
・データ量や負荷に応じてインスタンスを切り替える
・利用時間に応じてオン/オフを制御する
といった仕組みです。

例えば、主に平日昼間に利用されることが想定できる業務では、夜間や休日は自動的に停止するよう制御することで、性能を維持しながら無駄なコストを抑えることが可能になります。


― 「研究開発DX」を、日本の文化に

研究開発力の向上というと、これまでは技術力そのものを高めることに焦点が当たってきました。
一方で、特許調査やドキュメント作成といった周辺業務を効率化することで、研究開発全体の力を引き上げることも可能です。
しかし、このような変革は容易ではありません。組織の慣習やプロセスに加え、セキュリティや運用といった複数の要素が関わるため、研究開発DXは企業単独で完結するテーマではなく、社会的な課題でもあります。
だからこそオムロンでは、自社の取り組みを積極的に発信し、他企業やパートナーと連携しながら、研究開発DXの実現を進めていきます。
AIエージェントとその基盤を現場で使い続けられる形で実装していく。
その積み重ねが、研究開発のあり方そのものを変えていくと考えています。

●講演資料


本講演は、AWS Summit Japanのサイト上でオンデマンド視聴可能です
https://aws.amazon.com/jp/events/summits/japan/


展示ブースレポート | “実運用”への関心が集まる

会期中は、AWS for Industries Zoneに「Amazon Bedrockによる知財AIエージェント」の紹介ブースを出展し、6月25日~26日の2日間で合計約470名の方にご来場いただきました。

会場の様子

オムロンブース 出展メンバー


製造業をはじめ、多くの企業の開発部門、知財部門、IT部門の皆さまにお立ち寄りいただき、研究開発における特許調査や分析などへのAI活用の進め方や、自社におけるAIエージェント活用基盤の整備に関する課題など、多くのご質問やご意見をいただきました。その中で、研究開発DX基盤そのものに加え、研究開発における特許調査業務の効率化に対する関心の高さを強く実感しました。
また、知財AIエージェントそのものだけでなく、その背景にあるAIエージェント活用基盤や運用の考え方にも高い関心が寄せられていることが印象的でした。
来場者の皆さまとの対話を通じて多くの気づきや学びを得ることができ、今後の取り組みをさらに発展させていくための大きな励みとなりました。ご来場いただいた皆さまに心より感謝申し上げます。
今後もオムロンは、研究開発現場の価値創出を支えるAI活用とDX基盤の進化に取り組み、より大きな価値創出につなげてまいります。

展示ブース担当
ストラテジックR&D本部 デジタルソリューションセンタ デジタルプラットフォーム部 築山勝行


まとめ|AWS Summit Japanを通じて見えたこと

AWS Summit Japanという大きな舞台で、知財AIエージェント、そして生成AI基盤RDinXの取り組みを多くの方にご紹介できたことは、私たちにとって大きな手応えとなりました。セッションや展示ブースを通じて、特許出願のためのエージェントを実装できる人財が希少なこと、また、たとえ実装できたとしても、それを展開するための基盤が整っていないという声をいただきました。私たちと同じ課題に直面する方々が多数いらっしゃることがわかり、この課題は社会課題そのものなのだということを改めて確信しました。
本発表にあたり、機会をご提供いただいたAWS社の皆さま、日頃より取り組みを支えてくれている社内のメンバー、そしてご来場いただいた皆さまに、心より御礼申し上げます。
今回ご紹介した知財AIエージェントは、全社重要技術領域である「DX基盤」の主要施策の一つとして位置づけられています。特許調査という一つの業務から始まった取り組みですが、その根底にあるのは、研究開発の現場が本来の価値創出に集中できる環境をつくるという考え方です。
私たちはこれからも、研究開発の現場を起点に実装を積み重ねながら、DX基盤を進化させ、全社の注力事業に貢献してまいります。AIエージェントとその基盤を「現場で使い続けられる形」で届けていく――その積み重ねが、研究開発のあり方そのものを変えていくと信じています。

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