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【AWS Summit Japan 2026 講演レポート】 AI for Science の実現に向けた、AWSとの共同検証
2026年6月、幕張メッセで開催された 「AWS Summit Japan 2026」のスペシャルセッション において、オムロンの研究子会社であるOMRON SINIC X(OSX)のVice President for Resarch 牛久祥孝が、「AIエージェントによる、研究開発の実験サイクルを効率化するAI for Science」について講演しました。本記事では、その講演内容をご紹介します。
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OSXは「近未来をつくる」を掲げ、AIとロボティクスの研究開発に取り組んでいます。研究開発は、仮説を立て、計画し、実験を実施し、結果を分析するというサイクルを繰り返すことで前進します。サイクルが速く回るほど発見も早まるはずですが、現実にはこの一つひとつに膨大な時間がかかり、実験サイクルそのものが大きなボトルネックになっています。
新しい薬も新しい材料も、結局はこのサイクルをいかに速く回すかで決まると言っても過言ではありません。

そこで着目したのが AIエージェント です。仮説・計画・分析といった「頭で考える論理プロセス」は生成AIが得意とする領域であり、AIエージェントによって大きく加速できます。
一方で、AIだけでは速くできないプロセスが残ります。それが「実験」です。手を動かす物理的な作業は、論理プロセスを高速化すると、今度はそこだけが新たなボトルネックとして浮かび上がります。この物理プロセスを担うのが、フィジカルAI ―― すなわちロボットの活用です。
論理プロセスはAIエージェントが、物理プロセスはロボットが担い、両者をつないで実験サイクル全体を高速化する。これが私たちの描く「AI for Science」の全体像です。
今回まず取り組んだのは、人間向けに書かれた実験手順書から、ロボットが理解できるワークフローを自動生成するステップです。
たとえば細胞培養なら「フラスコの細胞を計測し、PBSで洗い、トリプシンで剥がして5分インキュベートする」といった文章の手順があります。これはそのままではロボットに渡せません。そこで Amazon Bedrock AgentCore 上に構築したAIエージェントが手順書を読み解き、計測・評価ツール、専門知識のRAG、過去の実験ノウハウを参照しながら、機械が解釈できる構造化されたワークフローへと変換します。
STEP1:実験手順書からロボット向けワークフローを自動生成
将来的には、生成したワークフローをロボット動作へ分解し、スケジューリングや実行コード生成までを一気通貫で自動化する構想も描いています。
STEP2:ワークフローをロボット指令へ変換する将来構想
今回はこの「ワークフロー作成」を対象に、AIエージェントの構成を変えながら、難易度の異なる3つのシナリオで品質と処理時間を測定しました。
難易度の異なる3シナリオで構成を変え、品質と処理時間を比較
マルチエージェント構成はシングルエージェントと比べて処理時間が延びる一方、期待したほどの品質差は見られませんでした。複雑な構成が必ずしも最適ではない、ということです。
難易度が上がるタスクでは、いずれの構成でも必要な品質の担保が難しくなりました。そこで Human-in-the-Loop(要所で人が確認を入れる) の考えを取り入れることが、品質と処理時間のバランスをうまくとることができるという知見が得られました。
これは、我々オムロングループが考える、人と機械の融和の体現、まさにそのものです。
ここで効いてきたのが AgentCore です。ランタイムやメモリといった共通の土台はそのままに、エージェントの構成だけを差し替えて素早く比較できる。どの構成が最適かを見極めるうえで、この“検証の速さ”が大きな武器となりました。
共通基盤はそのままに、構成だけを差し替えて素早く比較
また、AWS様に比較設計からプロトタイピングまでご支援いただいたことで、私たちは「どんな実験を、どんな知識で設計するか」という本質的な課題に集中できました。手順書づくりの手作業が大きく削減され、研究者が確認と修正に注力できる体制と、本番運用を見据えた基盤がすでに整いつつあります。
手作業を削減し、研究者が確認・修正に注力できる体制と本番運用基盤を構築
現在のAIエージェントは、研究者の指示を正確にロボットへ伝える「通訳者」です。次に目指すのは、これを「パートナー」へと進化させること。ロボット自身が状況を見て、自ら判断し、自ら動く ―― VLA(Vision-Language-Action)モデル の活用です。ロボティクスの国際会議で発表したAIロボットをベースに開発を進めていきます。なお本取り組みは、AWSのフィジカルAI開発支援プログラムにも採択されています。
状況を見て自ら判断・行動するVLA(Vision-Language-Action)モデルの実演映像
私たちが目指すのは、人を置き換えるAIではありません。人・AI・ロボットが戦い合うのではなく、互いに融和し、AIとロボットが人の創造性を拡張する ―― そんな近未来を描けると信じています。その一歩を、生み出してまいります。
