多様な人財が自分らしく活躍できる職場をつくる ~ 31年目を迎えるオムロン大連の揺るぎない想い~

医療機器の部品生産を担うオムロン大連有限公司。生産現場に足を踏み入れると、お揃いの青い作業着を着た社員が医療機器の組付け作業や不具合の確認を丁寧に行っています。集中して手際良く作業を進めるその姿は、身体的なハンディキャップを持っていることを感じさせません。

多様な人財が活躍するOMD工場

 

地域コミュニティと連携して雇用機会を創出

遼東湾にほど近い遼寧省 金普新区には、先進的なモノづくりを行うメーカーが集積しています。渤海から吹き込む潮風が心地よく、1年を通して快適に過ごすことができます。また、産業の一大拠点でありながら、魅力的な臨海都市としても有名です。今から31年前、オムロンは中国におけるヘルスケアビジネスの拠点としてこの地にオムロン大連有限公司を設立しました。

OMD工場外
オムロン大連有限公司

オムロン大連は、設立当初から大連の障がいがある人たちを積極的に雇用し、就業機会の拡大と活躍に向けた支援・育成を行ってきました。

大連の人たちの温かさは、『われわれの働きで われわれの生活を向上し よりよい社会をつくりましょう』というオムロンの企業理念に符号するものです。当時から、大連はハンディキャップを持つ住民の支援に取り組んでいたのですが、オムロン大連はこれに共感・共鳴する形で地域の障がいがある方の雇用機会の拡大に取り組み始めたのです。

オムロン大連の取締役総経理を務める王 登奎(ワン ドンクェイ)さんはこう語ります。

「オムロンは地域コミュニティと密接する形で発展してきました。働くということは暮らしの基礎となるものです。障がいがある人たちの働く機会をつくることは、彼、彼女らの生活の質を大きく向上するだけでなく、能力を発揮する場を提供することにもなり、とても意味のある取り組みだと考えています。」

 

すべての社員がつながりを感じられる職場に

オムロン大連は、障がいがある人たちの支援を行っている地域団体とも連携し、より多くの社員を受け入れる態勢を着実に整備していきました。

今回は、オムロン大連で活躍する3名の社員、刘 静(リュウ ジン)さん、宋 云(ソン ユン)さん、唐 政文(ダン チェンウェン)さんについて紹介します。

はじめに、社歴30年のベテラン社員で、現在は部品生産課で管理職を務めるリュウさん。

「私たちは、障がいの有無にかかわらず、誰もが仲間の温もりや思いやりを感じながら働いて欲しいと思っています。入社前には安全に働くための仕組みや企業文化などについて研修を受けてもらい、オムロン大連でのキャリアをスタートする社員がいち早く職場環境に溶け込めるようにしています。入社後は、『一人ひとりの強みを生かし、苦手な作業を強いない』を基本として仕事を割り振っています。例えば、言語や聴覚に障がいがある人や、歩行が難しい人たちのために、言葉によるやり取りをほとんど必要としない生産ラインを用意したり、手作業だけで完結するプロセスを設けたりしています。また、工場をバリアフリーに改装したり、専用の個室トイレを用意したりするなど、皆が快適に働けるように工夫しています。」とリュウさんは語ります。

OMDでキャリアアップを続けるリュウ ジンさん
部品生産課で管理職として働くリュウさん

いきいきと働ける環境をつくるためには、会社からのサポートに加えて、同僚同士のコミュニケーションもとても重要です。リュウさんは、聴覚障がいがある仲間と「もっとわかり合いたい」という思いから手話を始めました。また、障がいがある社員の立場に立って作業が難しいところやリスクを洗い出し、解決策を提案しています。
リュウさんは社員にとって「姉」のような存在として、社員の声を救い上げ、彼らが直面している課題解決の手助けをしています。


左:オムロン大連で開催した手話の講義を受ける社員の様子
右:手話を使ってコミュニケーションをとるリュウさん

 

キャリアアップや能力開発の機会も分け隔てなく

次に、障がいがある社員として初期に採用された管理職のソンさんを紹介します。ソンさんは、オムロン大連で働いてきた26年という年月を振り返り、こう語ります。

「オムロン大連は大きな家族のようなものです。誰も置き去りにしないし、親身になって私たちのことを考えてくれています。私自身、常に周りから気に掛けてもらっていますし、リスペクトも感じているので、自分という人間が大事にされていると思えるのです。オムロン大連に入れて本当に幸運でした。」

オムロン大連は、障がいがある人たちへ、仕事だけでなくキャリアアップの機会も提供することに当初からこだわってきました。
運動障がいがあるソンさんの最初の配属先は倉庫の管理を行う部署でした。前向きな気持ちを忘れないソンさんは、会社の能力開発プログラムや研修を活用し、3つのISO規格 を始めとした、中国を含む様々な国の規格に合わせた監査スキルを磨いてきました。こうした努力の甲斐もあって、ソンさんは一般社員から同分野のエキスパートとなり、現在のキャリアを築くことができました。
また、年に1回行われる会社の交流パーティーの立案、企画、運営に12年間関わっており、企業文化の増進にも大きく貢献しています。

最後に、2017年入社のダンさんの紹介です。彼は、左の手足に先天性の運動不全があるのを周りも忘れてしまうほど、仕事に並々ならない情熱を持って熱心に仕事に打ち込んでいます。2019年、ダンさんは低価格のオートメーション機器の研究開発プロジェクトに参加するという大きなチャレンジに踏み切りました。そこで数多くの技術課題を解決しただけでなく、機器の導入を見届け、90万元のコスト削減効果を生み出しました。その功績が認められ、オムロン大連の社内表彰にて、その年、最もチャレンジ精神を発揮したプロジェクトへ送られる『特別チャレンジ賞』を受賞しました。
それ以来、ダンさんは会社の支援や研修を受けながらスキルを磨き続け、キャリアにいくつもの記念碑を打ち立ててきました。

「この7年で成し遂げたことに誇りを感じています。オムロン大連では、私のように障がいがある社員でも、昇進や能力開発の機会が平等に与えられています。ですから、より一層頑張ろうという気にしてくれます。」とダンさんは語ります。

ダン チェンウェンさん
オートメーション機器の研究開発に熱心に取り組むダンさん

 

ダイバーシティ経営を体現するオムロン大連

オムロン大連では、多様性を尊重し合う企業文化の下、障がいの有無に関わらず、すべての社員が居場所を見つけ、その能力を如何なく発揮し、会社だけでなく社会全体の発展に大きく貢献しています。
2010年以降、オムロン大連は99名の障がいがある仲間を迎え入れてきました。現在は28名(全社員の1.97%)が生産現場やオフィスなどで働いており、全員が社歴3年以上の経験を積んだベテラン社員として活躍しています。

この障がい者雇用、及び職場づくりに取り組む積極的な姿勢が顕彰され、オムロン大連は2024年6月5日に中国障害者連合会から認定を受けました。過去、この栄誉に受けたのは、遼寧省で5社、大連市では3社のみです。
授賞式ではワンさんがオムロン大連の仲間を代表して記念の盾を受け取りました。この盾は、障がい者の雇用機会の拡大に取り組むオムロン大連の熱い思い、そして彼らの生活の質の向上と社会への参画を促したいという真摯な思いに対して与えられたものです。

「これは新たな始まりです。これからも引き続き多様な人財をサポートし、活躍の場を広げていきたいと思います。」とワンさんは宣言します。

障がい者雇用認定の授賞式
中国障害者連合会から障がい者雇用について認定の盾を受領したワンさん

 

社会全体の豊かさと自分らしさの追求が両立する社会の実現を目指して

1933年の創業以来、オムロンは「よりよい社会をつくる」という企業理念の下、91年にわたって企業としての社会的責任を果たしてきました。1993年に立ち上がったオムロン大連は、31年にわたって地域の障がいがある人たちの雇用促進に尽力してきました。そして時が経つにつれ、社会の持続的発展に対するオムロン大連の揺るぎない想いが一層明確になってきています。

オムロンは、長期ビジョン「Shaping The Future 2030」を通じて、価値創造にチャレンジする多様な人財づくりに取り組んでいます。多様性に富んだ社員が、それぞれのスキル・能力を最大限に発揮し続けることで、社会全体の豊かさと自分らしさの追求が両立する社会の実現を目指します。

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