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サステナビリティ
IT-OT融合が切り拓く 製造業のDX

IT-OT融合が切り拓く 製造業のDX

経営判断と現場改善を現場でつなぐオムロンの取り組み

製造現場のDXはなぜ難しいのか―
その答えは、ITとOT(工場の現場データ)の融合の難しさにあります。AIを活用しながら現場と経営をデータでつなぎ、“よどみなく止まらない生産システム”と“迅速かつ効率的な改善サイクル”を両立する。そんなIT-OT融合の全容をオムロン株式会社インダストリアルオートメ―ションカンパニー アドバンスドソリューション本部の山川健太がご紹介します。




私たちは、センサ・コントローラ・ロボットなど、工場の自動化を支える幅広い制御機器を世界に展開しています。そして、工場の設備が、今どのような条件でどう動いているのか現場の物理的な動きのデータ(OTデータ)の取り扱いに精通しています。単に機械を制御するだけでなく、現場で生まれる生々しいデータを皆さんが管理されている本社システム(IT)と融合させ経営の最適化につなげていく。数多くのお客様とともに作り上げて培った知見をもとにIT-OTの融合におけるリアルな変革をお伝えします。


1. IT-OT融合の必要性

なぜ今 IT-OTの融合が必要なのか。その原点は オムロンの創業者 立石一真の未来予測理論 SINIC理論にあります。

この理論に照らせば、現在は人間と機械が理想的に調和する「自律社会」への過渡期にあります。創業者の立石一真は、「機械にできることは機械にまかせ、人間はより創造的な分野での活動を楽しむべきである」という言葉を残しました。少子高齢化・人手不足といった大きな社会的課題に対し、データに基づき、AIが自律的に判断し、人を助ける。人とロボットが協調しながら働く。そんな人が迷わず成功の成果を出せる「自律型工場」を、今こそ私たちオムロンが体現するときだと考えています。

そして、これは単なる理想論ではありません。今年度から開始したオムロンの中期ロードマップ「SF 2nd Stage」のど真ん中に据えられた戦略でもあります。経営判断と現場改善を直結させるIT-OTの融合、これこそがオムロンの「GEMBA DX」です。


オムロンが強みとする制御機器やセンサから得られる高品質な現場データとそして様々な業務データを掛け合わせ、長年培ってきた現場知見によって価値ある情報へ変換することで、より迅速で的確な意思決定と現場課題の解決を実現します。変化の激しい市場環境にあっても、お客様との信頼をより強固に保ち続ける。これこそが あらゆる不確実性を乗り越える次世代のモノづくりの姿だと確信しています。

しかし、なぜそれほど重要なIT-OTの融合が未だに進んでいないのでしょうか。なぜ多額のIT投資を続けても工場の現場はブラックボックスのままなのか。私たちオムロン自身、多くのお客様と対話する中で見えてきたIT-OTの融合が進まない課題の正体を整理します。


2. IT-OT融合が進まない理由

IT・経営層では、情報が情報が断片化して、判断が後追いとなってしまっています。管理層では、計画と実態の乖離の狭間で、Excelの手作業集計や月次の報告管理が常態化しており、リアルタイムな把握や意思決定ができていない状態になっています。工場の現場層では、長年の個別改善の積み重ねにより、結果的にデータがバラバラに管理され、サイロ化が蔓延しています。

これは、誰も意図的に作ろうとしていたものではありません。業務文化・求められるデータ・稼働環境といった、異なる進化を別々に遂げてきたIT・OTの考え方の違いで引き起こされています。結果、最適と迅速な意思決定の足かせになっていることが課題です。


では、異なる進化を遂げてきたIT・OTの間にある高い壁を私たちはどのように乗り越えていけばよいのでしょうか。


3. オムロンが描く“IT-OT融合”

その解決策が、データを共通言語化して、ITとOTをシームレスにつなぐことです。どちらかが一方のやり方に合わせるのではなく、お互いの稼働環境や文化を尊重した上で、データを緩やか、かつ強固に統合していく。このようなアプローチが必要となります。オムロンがITとOTの融合で実現を目指す方向性がこちらの全体像です。


まず、今までのIT層で断片化していたプロセスを生産計画から製造実績管理・出荷準備までを一気通貫でつなげ、OT現場のフィジカルな搬送制御やライン制御プロセスも融合し、“よどみなく止まらない生産システム”を実現します。これにより、生産の稼働状況の変化によって生じた計画と実態のズレに対しても、現場側で柔軟に対応し、乖離を最小化することが可能となります。

次に、MES(製造現場の作業をリアルタイムで管理・最適化するシステム)等が収集している結果指標である製造実績データに、PLC・センサー・カメラ等から取り込んだ工程・ライン・設備の原因系である稼働データや品質データを関連付け、エッジのシステムを介して階層的、かつ一元的に格納・管理することで、例えば、納期遅延が発生しているオーダーに紐づいた特定工程のデータ抽出が容易となり、原因の深掘りまでスピーディに対応することが可能になります。

また同様に、稼働データにERP(製造業の生産・在庫・購買・販売・会計などの業務を統合管理し、効率化と迅速な意思決定を支援する基幹システム)からの原価情報を紐づけることで、商品や工程単位で収益性がリアルタイムに把握できるようになり、改善活動の優先度や効果を現場で把握しながら対応することができるようになります。つまりは、製造実績に紐づく要因特定や改善、さらには現場のリアルな情報をベースとした的確な投資判断を仰ぐことができる。迅速かつ効率的な改善サイクルが実現できる。このような既存のIT-OT資産を活かしたまま、次世代データ基盤を介して経営判断と現場改善を完全に直結させる。これがオムロンの描く“IT-OT融合”の世界です。


4. 原価のリアルタイム可視化

例えば、従来の製造現場では、労務費や人の工数がブラックボックス化しており、月末の集計を待たなければ本当の収益悪化に気付けないという課題がありました。標準原価が形骸化し投資判断も経験に頼らざるを得なかったのです。

そこで、私たちは、現場の設備や人の作業データと上位のERP(製造業の生産・在庫・購買・販売・会計などの業務を統合管理し、効率化と迅速な意思決定を支援する基幹システム)の原価情報をリアルタイムに連携させました。月末を待つことなく、オーダー単位の実原価と標準原価の差分を即座に可視化し、収益性に基づいた改善の優先順位付けを可能にしたのです。


5. 人の作業の高度トラッキング

また、OTデータの中でも特にデジタル化が難しい人の作業の高精度トラッキングも実現しました。

現場における作業ミスやわずかな作業の遅延は、これまでの現場の主観や経験などで管理されており、不具合が後工程に流出して初めて発覚するという廃棄ロスの課題を抱えていました。私たちは、現場の暗黙知を形式化するため、データ取得・可視化・異常特定を自動で行う仕組みを導入しました。これにより、見逃しがちなロスを定量的に特定できるようにしています。

こちらが実際に現場で運用されている人作業解析ツールの画面です。


本ツールは動画解析機能を搭載し、ユーザーが定義した作業要素ごとに自動で作業を検出し、分析グラフ表示までの支援を行います。これにより、ボトルネックの発見が容易になります。例えば、標準時間と実績時間の比較を見れば、初心者でも改善の余地が大きい工程を一目で見つけることができるのです。


6. 多変量解析による予兆保全

しかし、個々のデータが正常値であっても、複数の要因が絡み合うことで発生する品質の低下や計画外停止を見逃してしまうということが実際には多く発生します。そこで、我々は、生産プロセス、つまり、モノの流し方に連動して設備稼働データや原因系のプロセスデータが階層・構造化・意味付けする仕組みを準備しました。これにより、非常に精度の高い傾向監視を可能にし、単一の閾値管理では捉えられなかった微小な異常傾向を早期に検知し、突発的なトラブルを回避することができるようになります。

総合的なリスク度合いのトレンドと相関関係の悪化スコアが、1画面でリアルタイムに監視されています。画面に示しているように、下に表示された個々の因子の挙動だけでは捉えきれない複数因子の相関影響を、単一トレンドとして上のグラフに表示しております。


あるタイミングで異常の度合いが警告ゾーンを超えると、即座にアラートの発報と影響が大きい因子の優先度が特定されます。さらには、トレンド上昇のタイミングと変動イベント、上昇のタイミングと変動イベントの情報などから過去のトラブルとの紐付けを行うことで、効率的な復旧を支援します。


7. 次世代データ基盤「i-BELT Hub」

そして、これまでご紹介したステップをさらに進め、迅速かつ効率的な改善サイクルを下支えする中核を担うのが、IT-OT融合を実現する次世代データ基盤「i-BELT Hub」です。

現場から収集した着手完了データ・検査データ・人の作業データを階層構造化し、意味づけします。この洗練されたデータ基盤があるからこそ、その上で動くAIエージェントが、基盤上に実装されている作業支援アプリ等をうまく使い分けしながら現場の状況を正しく理解し、最適な指示を出せるようになります。

こちらが AIエージェントの支援により効率化された業務スキームの事例です。


見る相手に応じて階層化されたデータがそれぞれ意味付けされていることで、各階層の視点でイベントや変化を確認することが可能となります。これにより 作業員・管理者・工場長の視点でそれぞれが知りたいことを、一元管理した同一データを用いて分析確認することができます。

さらには、AIエージェントがそれぞれの目的に応じて格納しているアプリケーションを出し入れすることで、特定階層の業務支援にとどまらず、関連部署や後工程に関わる最適業務ガイドまで一気通貫で支援することが可能となります。

このように、IT-OT融合を実現する次世代データ基盤「i-BELT Hub」を活用することで、異なる目的の階層で同じデータを用いた意思決定や対応が効率的に行える。さらには、作業支援アプリの出し入れをオーケストレーションできることで関連業務全体の最適化が図れる。そして、総合的なシステムコンセプトによりアドホック的(スポット的)なデータ活用と比べてコスト削減や効率化が大幅に図れるなど、多くのFA現場におけるメリットが獲得できるシステム実証を開始しており、実際の工場への段階的な導入検討も進めております。


8. 最後に

我々オムロンは、創業者 立石一真が「機械にできることは機械にまかせ、人間はより創造的な分野での活動を楽しむべきである」という言葉を残した通り、データ収集をはじめとする集計・不安からくる過剰な作業管理は、機械に任せるべき仕事と考えております。IT-OT融合の真の価値は、経営から工場現場のオペレーションまでが不透明な状況に右往左往するのをやめ、現場から経営まで1つにつながった、データという共通言語で、より創造的な改善の対話に集中することにあります。

私たちオムロンが挑むIT-OT融合の先にあるのは、単なる事業の改善ではありません。社員一人一人がより人間らしく創造的に働ける社会の姿です。お客様の笑顔のために、そして、私たちの未来のために。この新しいものづくりのチャレンジをぜひ皆さんとともに一歩ずつ進めていければ幸いです。


IT-OT融合の事例・ユースケースは こちら をCHECK!

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