We are Shaping the Future!私たちが手繰り寄せる未来ストーリー

データ利活用以前の現場課題を解決するIO-Link機器
製造業では人手不足の深刻化を背景に、AIやデータ利活用によるDXへの期待が高まっています。
一方で、十分にDXが進んでいる現場は多くありません。オムロンは、その課題の根本的原因はデータ利活用以前に存在すると考えています。センサの設定や接続、立上げといった作業をいかに減らすか。その発想から生まれたのが、2026年に発売したIO-Link*1マスター「GDシリーズ」とPCツール「Wave Inspire HUB」です。今回は商品事業本部 センサ事業部の津藤さん、山本さんに、製造現場が抱える課題の本質と、データ利活用を進めるための取り組みについて話を伺いました。
*1: IO-Linkとは、工場などのセンサやアクチュエータ(末端機器)とPLC(制御機器)の間をデジタル信号で双方向通信する、国際標準規格(IEC 61131-9)のI/Oインターフェース。従来のON/OFF信号だけでなく、詳細な診断データや機器の設定情報もやりとりできるため、故障の予知や保全工数の削減に貢献する。
https://www.fa.omron.co.jp/product/special/sysmac/overview/io-link-sensorlevel.html
(左)IO-Linkマスター「GDシリーズ」 |(右)PCツール「Wave Inspire HUB」
津藤:背景にあるのは、やはりモノづくり人材の不足です。
少子高齢化や熟練技術者の高齢化により、設備を設計する人、立ち上げる人、保全する人、そのすべてが不足しています。こうした状況の中で、多くの企業がDXによる生産性向上を目指しています。
しかし、実際の生産現場で働くお客様との対話で見えてきたのは、DX以前のところの障壁でした。
DXというと、データを収集し、可視化し、分析し、改善につなげるという流れで語られます。しかし実際の現場では、その前に多くの作業があります。センサを接続する。パラメータを設定する。通信設定を行う。PLCへデータを割り付ける。設備ごとに調整する。こうした作業は一つひとつを見ると小さく見えますが、設備全体で考えると大きな負荷になります。DXを進めたいと思っていても、その準備に追われ、なかなか前へ進めない。これが多くの製造現場の実態なのです。
インダストリアルオートメーションビジネスカンパニー 商品事業本部 センサ事業部 津藤さん
津藤:IO-Linkというと、IoTやデータ利活用のための通信規格というイメージがあると思います。もちろん、それも重要な価値の一つです。ただ、私たちが市場調査やお客様との対話を通じて見えてきたのは、少し違う現実でした。実際にIO-Linkを導入されているお客様の多くが求めていたのは、データ利活用そのものではなく、省配線や設定工数削減といった、より現場に近い価値だったのです。
設備を立ち上げるたびに、何十台ものセンサを一台ずつ設定する。設備が増えれば、その作業も繰り返される。トラブルが発生すれば、原因を調べ、設定を確認し、復旧する。
こうした業務は決して派手ではありません。しかし現場では、多くの時間と労力が費やされています。
人手不足が深刻化する中で、現場が本当に求めていたのは「高度なDXシステム」ではなく、まず「目の前の工数を減らす」ことでした。
私たちはそこに向き合いたかったのです。
だからこそ掲げたのが、「気づけばDX」という考え方でした。
まず現場の負荷を減らす。その結果として、自然にデータ利活用の基盤が整い、DXにつながっていく。そうしたアプローチこそが、今の製造現場に必要だと考えています。

山本:まず大きいのは設計段階です。
従来のIO-Linkでは、機器ごとにIODDファイル*2を探し、それをダウンロードし、設定する必要がありました。さらにPLCとの接続設定も必要になります。こうした作業は、一つひとつは小さく見えますが、設備全体で考えると大きな負荷になります。GDシリーズとWave Inspire HUBでは、100社以上のデバイスを自動認識し、必要な設定を自動化できます。さらにPLCとの接続に必要なアドレスコメント表も出力できるため、設計工数を大幅に削減できます。私たちが実現したかったのは、設計者が設定作業に時間を取られるのではなく、本来向き合うべき装置や工程の価値づくりに集中できる環境です。
DXの土台づくりは、まず設計現場から始まると考えています。
*2:IODDファイルとは、IO-Linkデバイスのメーカー、製品番号、機能、パラメータ情報などを詳細に記述したファイル。
山本:立上げは、多くの現場で属人化しやすい工程です。
経験豊富な担当者がセンサのしきい値を調整し、そのノウハウによって設備を安定稼働させているケースも少なくありません。一方で、人手不足や技術継承の課題が深刻化する中、そうしたやり方を続けることは難しくなっています。“Wave Inspire HUB”では、一度設定した内容を保存し、複数設備へ展開できます。同じ作業を何度も繰り返す必要がなくなり、属人的だった立上げ作業を標準化できます。
実際にお客様からは、「設備展開時の作業負荷が大きく変わった」という声もいただいています。
人に依存していた工程を仕組みで支えること。それも私たちが目指した価値の一つです。

インダストリアルオートメーションビジネスカンパニー 商品事業本部 センサ事業部 山本さん
山本:機器導入後の現場でも同じ課題があります。
例えばセンサが故障した場合、交換そのものよりも、その後の設定復旧に時間がかかるケースがあります。特に担当者しか設定内容を把握していない場合、復旧までの時間が長くなり、生産への影響も大きくなります。GDシリーズでは設定情報を保持し、交換後のセンサへ復元できます。また、設定差分の比較や状態監視も可能です。私たちが目指したのは、トラブルが起きた後に対応するのではなく、誰でも迅速に復旧できる環境をつくることでした。人手不足時代において、設備を安定稼働させ続けるためには、属人化や熟練技術者の経験だけに頼らない仕組みづくりが重要だと考えています。
山本:私たちは「オープン」であることを大切にしています。
製造現場ではさまざまなメーカーの機器が混在しています。現実にはオムロン製品だけで構成される設備の方が少ないかもしれません。だからこそ、自社製品だけで閉じた世界を作るのではなく、IO-Linkのような規格に対応し、他社製品とも簡単につながる環境が必要です。実際、現場のお客様はメーカーの違いを意識したいわけではありません。
設備を安定稼働させたい。生産性を上げたい。必要なデータを活用したい...
私たちは、その実現を支えるパートナーでありたいと思っています。
製造業全体のDXを前進させるためには、オープンな思想が欠かせないと考えています。
PCツール「Wave Inspire HUB」(左)とIO-Link製品群(右)
津藤:オムロンは現在、SF 2nd Stageにおいて、GEMBA DX企業への変革を進めています。
その中で重要になるのが、現場のデータを価値ある情報へ変えていくことです。しかし、どれだけ高度なAIや分析技術があっても、現場からデータを取得できなければ意味がありません。だから私たちは、まずデバイスに向き合っています。センサを簡単につなぐ。設定や立上げ、保守にかかる工数を減らす。
その結果として、現場のデータが自然に活用できる状態をつくる。
私たちが目指しているのは、単なる通信機器の提供ではありません。
現場で働く人の負担を減らしながら、製造業の未来を支えるデータ利活用基盤をつくることです。
気づけばDX。その第一歩は、データ利活用以前に存在する課題を解決することから始まる。
オムロンはこれからも、製造現場の足元に寄り添いながら、GEMBA DXの実現を支えていきます。