We are Shaping the Future!私たちが手繰り寄せる未来ストーリー

工場現場から在宅医療まで、オムロンは現場で生まれる高品質なデータを活用し、働く人を支え、産業を強化し、世界中の暮らしを豊かにする実践的なソリューションを目指している。
第一次産業革命から250年以上にわたり、製造業は地域、産業、職種の間に存在するさまざまな格差に影響され続けてきた。インダストリー4.0は一定の進展をもたらしたものの、高額な導入コスト、不透明な投資対効果、既存設備の制約などにより、多くのメーカーはいまだデジタルトランスフォーメーション(DX)を十分に拡大できていない。その結果、生産性や技能は現場や人材によって偏在し、産業全体の競争力向上やイノベーションの加速を妨げている。
90年以上にわたり社会価値を創造してきたグローバルテクノロジー企業であるオムロン株式会社は、次世代のものづくりはパートナーとの共創によって実現されると考えている。その基盤となるのは、工場の現場で生まれる高品質なデータである。同社は、個別の自動化から、より高度に連携したデータ駆動型エコシステムへの転換を目指している。
オランダにあるオムロンの工場
京都の本社オフィスから街を見渡しながら、代表取締役社長 CEO の辻永順太氏は、価値創造とは企業の枠を超えて社会全体へ広がるものだと語る。
「オムロンは、ファクトリーオートメーションを支える制御機器や、血圧計などのヘルスケア機器で広く知られています。売上の約45%を占めるファクトリーオートメーション事業において、中国市場は重要な成長ドライバーでした」と同氏は述べる。
中国市場の成長鈍化を受け、オムロンは外部環境の変化に強い企業体質への転換を進めている。その背景には、日本が直面する人口減少、労働力不足、サプライチェーンの不確実性といった課題もある。
「オムロン自身を変革するだけでなく、日本のものづくりを支えてきたバリューチェーン全体を強化する能力を高める必要があります」と辻永氏は語る。
辻永氏が「GEMBA DX企業への変革」と呼ぶオムロンの戦略は、価値が生まれる場所、すなわち「現場(Gemba)」から始まる。
「オムロンにとっての現場とは、例えば制御機器が導入されている工場の現場です」と同氏は説明する。
「工場は、PLC(プログラマブルロジックコントローラ)、センサー、画像処理カメラ、ロボットなど、さまざまな技術が組み合わさって成り立つ複雑な環境です。また、多様な技能を持つ人々が生産活動を支えています。工場を円滑に運営するためには、「機械同士」「人と機械」「人と人」の3つのコミュニケーションが欠かせません。生産性と効率を高めるには、それらを支えるデータを適切に活用することが重要です。」
製造現場では、慢性的な人手不足と技能継承が大きな課題となっている。オムロンは、センサーやPLCから得られるデータと現場の知見を組み合わせ、AIによる分析を活用している。
その目的は、業務の効率化、意思決定の高度化、反復作業の自動化を実現し、経験や熟練度への依存を減らしながら技能を共有することにある。このアプローチにより、人の知識を重要な資産として残しながら、持続可能で利用しやすい製造環境を構築している。

オムロン株式会社 代表取締役社長 CEO 辻永順太氏
オムロンの「DX1データフローコントローラ」は、製造業のDXを阻んできた課題を解決する重要な製品として注目されている。
この製品は既存の生産ラインへ後付けでき、他社製設備とも連携可能であり、高度なプログラミング技術を必要としない。そのため、既存設備を全面的に更新できない製造業でも現実的なDXを実現できる。
オムロンは、現場で生まれる高品質なデータを活用し、生産性向上、人手不足の解消、そして強靭な製造エコシステムの構築につなげることを目指している。それは、データ、人、そして現場価値の創出を結びつける取り組みでもある。
生産レイアウトを遠隔監視するエンジニア
ヘルスケア分野においても、オムロンは同様のアプローチを採用している。血圧計などの機器から収集されるバイタルデータを、医療データや健康診断データと組み合わせて分析している。
高品質なデータを実用的な知見へ変換することで、健康リスクの早期発見を支援し、予防医療や治療後の健康管理にも貢献している。
「GEMBA DXはさまざまな現場や用途で顧客価値を生み出せる柔軟性を持っています」と辻永氏は語る。
「私たちはこの強みを活かし、より広範な社会課題の解決にも取り組んでいます。」
※本記事は、2026年7月3日発行の『Newsweek International』に掲載された、バーナード・トンプソン氏による記事を翻訳・編集のうえ掲載しています。