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企業理念の実践でつくる持続可能な社会

企業理念の実践でつくる持続可能な社会

オムロンESG説明会レポート

喫緊の課題となった社会の「持続可能性」

持続可能性(サステナビリティ)への注目が急速に高まっている。環境保全に取り組む公益財団法人WWFが2018年に発表した報告書では、1970年以降に地球上の代表的な生物の個体群の60%が消失したとされ、人類は地球が持つ「生物生産力」の1.7倍の資源を使い続けているというデータが示された。

もし私たちがこれまでの社会のあり方を変えず、温暖化が進行し、生物多様性が消失し続ければ、リスクを背負うのは今の子どもたち、将来の世代だ。社会からの喫緊の要請に応え、企業や自治体、多くのステークホルダーが、環境だけでなく経済や社会全体のバランスとあり方を変え始めている。

企業のサステナビリティへの取り組みはCSR(企業の社会的責任)や CSV(共通価値の創造)という言葉で説明されることも多いが、まだそれらの言葉すらなかった時代から、オムロンは企業理念を軸としてサステナビリティに取り組み続けてきた。その取り組みに、サステナブル・ブランド ジャパン編集局が迫った。

企業理念の実践によって持続可能な社会の実現へ――

オムロンの創業者・立石一真は1959年、「われわれの働きで われわれの生活を向上し よりよい社会をつくりましょう」という社憲を制定した。その根底には、まさに近年のサステナビリティの考え方に通じる創業者の2つの思いが込められているという。

「企業は利潤の追求だけではなく、社会に貢献してこそ存在する意義がある」という企業の公器性と、「よりよい社会をつくるためにオムロンがその先駆けとなる」という、常に未来を見据えて社会をリードする決意だ。

1959年1月11日に創業者 立石一真が作成した直筆による社憲の草稿スケッチ

1959年1月11日に創業者 立石一真が作成した直筆による社憲の草稿スケッチ

社憲の制定から60年以上経ってなお、オムロンの「企業理念」にはその思いが受け継がれている。現在の企業理念は、創業者の社憲"Our Mission"と、社員一人ひとりが大切にする価値観"Our Values"で構成されている。大切にする価値観とは「ソーシャルニーズの創造」「絶えざるチャレンジ」「人間性の尊重」の3つだ。

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その企業理念を浸透させ、実践するためにオムロンは、会社の仕組みや体制の整備を行った。さらに、中期経営計画「VG2.0」が始まった2017年度からは、事業戦略に連動するサステナビリティ目標を設定している。具体的な業績目標や事業戦略とサステナビリティの重要課題を連鎖させ、企業理念に基づいて「経営」と「サステナビリティ」を完全に一体化させているというわけだ。

企業理念

こうした経営姿勢や方針をステークホルダーに対しても広く共有するため、オムロンは2017年度から「ESG説明会」を開催している。2020年2月に行われた説明会では山田義仁社長、冨田雅彦グローバル人財総務本部長、平尾佳淑サステナビリティ推進室長が登壇した。

「共鳴を呼び起こす」環境・社会・ガバナンスの取り組みとは

オムロンのESG説明会は今回で3回目。今回は初めて山田社長自らが登壇し、まず始めにESGの取り組みの根底にあるオムロンの企業理念経営の全体像と、事業を通じた社会的課題の解決事例について語った。

代表取締役社長 CEO 山田義仁

代表取締役社長 CEO 山田義仁

「私たちは『企業は社会の公器である』との基本的考えのもと、企業理念の実践を通じて、持続的な企業価値の向上を目指します」――。山田社長が最初に示したのはオムロンの経営スタンスだ。このスタンスに基づき、中長期経営計画、オムロングループマネジメントポリシー、そして、ステークホルダーエンゲージメントの活動を展開している。中期経営計画では、オムロンが解決すべき重要課題を注力する事業領域ごとに設定。例えばヘルスケアの事業領域では、脳卒中や脳梗塞・心筋梗塞などの脳や心血管疾患に関わる発作をゼロにすることを目指す「ゼロイベント」の取り組みを推進する。同社の開発したウェアラブル血圧計が米タイム誌で「2019年の発明品ベスト100」にも選ばれたように、課題解決を促す新たなイノベーションを創出している。

このようなイノベーションを数多く起こすために何をすればいいのか。山田社長は「そこに自身の最大のチャレンジがある」と力を込める。「いかに現場に企業理念を浸透させ、共鳴を呼び起こすことができるか。共有や共感だけでは足りません。共に鳴る、というレベルを目指して現場の最前線に届くように、企業理念の浸透活動を行っています」――。では、オムロンは(E)環境・(S)社会・(G)ガバナンスの3側面で、どのように企業理念の実践に取り組んでいるのだろうか。

ガバナンス面では理念浸透と意思決定の迅速化のために「実効性を担保しながら、少しずつ進化をさせていることが、オムロンの特徴」と山田社長は説明する。監査役会設置会社でありながら、さらに監督機能を強化するために、指名委員会等設置会社の優れた面も取り入れたユニークなハイブリッド型の機関を設計しており、2000年代以降にも各種委員会が必要に応じて設置されている。また、監督と執行の分離にもこだわり、執行長である山田社長はどの委員会にも属さないことで、取締役会の客観性を高めている。

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山田社長が「共鳴を呼び起こす」と語ったように、イノベーションを創出する人財への取り組みにはオムロンのユニークネスと企業姿勢が端的に表れている。「The OMRON Global Awards(TOGA)」と「VOICE」という2つの施策を紹介したのは冨田雅彦グローバル人財総務本部長だ。

(左)執行役員常務 グローバル人財総務本部長 冨田雅彦 (右)サステナビリティ推進室長 平尾佳淑

(左)執行役員常務 グローバル人財総務本部長 冨田雅彦 (右)サステナビリティ推進室長 平尾佳淑 

「TOGAは単なる社内表彰制度ではなく、グローバル全社員参加型の企業理念の実践運動」だと冨田本部長は語った。TOGAの仕組みはこうだ。社員がチームで企業理念実践の取組みを宣言、実行し、全社でそのテーマを共有する。そしてもっとも理念を体現したプロジェクトが表彰される。冨田本部長は「TOGAは全ての社員が多くの学びや気付きを得るプラットフォーム」と話す。そしてTOGAと両輪となるエンゲージメントサーベイが「VOICE」だ。グローバル社員から約8500件寄せられるフリーコメントは、そのすべてに山田社長自身が目を通す。「VOICEは魅力あるオムロンをつくるためのマーケティングツール」と冨田本部長は説明した。「TOGAを通じて社会的課題を解決するとともに人の成長を促し、VOICEを活用して多様な人財が活躍する環境を整え、会社と社員がともに成長する」というわけだ。

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具体的な環境対策も語られた。平尾佳淑サステナビリティ推進室長は「社憲にある『よりよい社会』とは環境分野においては『サステナブルな社会』だと捉えている」と話す。

オムロンの環境ビジョンは、2つの柱から成り立つと平尾室長は説明した。

  • 事業を通じて地球環境に貢献する商品やサービスを社会に提供すること
  • すべての経営資源(材料、エネルギー、人財等)を最大化、有効活用し、グローバルで持続可能な社会の実現に貢献すること

この両面から取り組みを加速し、例えば、2019年のTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース=気候関連のリスクと機会について情報開示をする企業を支援し、低炭素社会への移行を促す国際的活動)への賛同後は、顧客のエネルギー効率の最大化に貢献している社会システム事業領域でシナリオ分析(※)を始め、スマートエネルギー領域での検討は、2020年3月末には終了予定である。平尾室長は「今後も事業を通じて気候変動問題をはじめとする社会的課題を解決し、同時に事業活動における環境負荷の削減にも取り組む」と決意を新たにした。

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※シナリオ分析とは、地球温暖化や気候変動そのものの影響や、気候変動に関する長期的な政策動向による事業環境の変化等にはどのようなものがあるかを予想し、そうした変化が自社の事業や経営にどのような影響を及ぼしうるかを検討するための手法

社憲と企業理念の精神とともに見据える未来

オムロンの組織づくり、人財への取り組み、そして環境への対応――。これらの根底には「事業を通じて社会の課題を解決する」という同社の強い決意と、持続可能な社会を構築するうえで企業が担う役割があるという信念がある。すべての出発点は創業者の社憲「われわれの働きで われわれの生活を向上し よりよい社会をつくりましょう」。そして社憲と共に企業理念として定めた、社員一人ひとりが大切にする価値観、「ソーシャルニーズの創造」「絶えざるチャレンジ」「人間性の尊重」。これらの言葉を携えて目指すのは、ほかならない私たちを含めた全員の「未来」だ。オムロンは持続可能な社会の実現と、持続的な企業価値の向上へのチャレンジを両輪に、未来の社会を見据えて着実に歩みを続けている。

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