We are Shaping the Future! 私たちが手繰り寄せる未来ストーリー
企業理念に「人間性の尊重」を掲げ、多様な人々が個性を活かしながら働ける環境づくりに取り組むオムロンは、2018年11月29日・30日、ダイバーシティ推進を目指すビジネスカンファレンス「MASHING UP」に参加しました。
第2回目となるMASHING UPのテーマは「Bravery & Empathy(勇気と共感)」。これを軸に、122名の登壇者が2日間にわたって多彩なセッションとワークショップを繰り広げました。
登壇したダイバーシティ推進課の上村千絵、セッションやワークショップに参加したイノベーション推進本部インキュベーションセンターアグリオートメーション事業推進室の大鳥晴佳、そしてオムロンヘルスケア グローバル人事本部人事企画部の大家明子に、今回のカンファレンスで成し遂げたこと、持ち帰ったことなどを聞きました。
ダイバーシティ推進課を率いる上村千絵が登壇したのは「さよならキラキラダイバーシティ ーー理想と現実の狭間でもがく企業の挑戦」というセッション。職場に変革を起こすことの難しさについて、ワコールの鳥屋尾優子さん、ジャーナリストの堀 潤さんと本音の議論を交わしました。
オムロンにダイバーシティ推進グループが設立されたのは2012年のこと。当時は「ダイバーシティ推進=女性活躍」との理解がスタンダードだった上に、8割が男性社員という職場環境の中、「うちは女性向けの商品を作っているわけでもない、外資系でもないのに、なぜ声高に"女性活躍"というのだろう」という社内からの反発もあったと言います。
また、女性管理職の実例が非常に少ないことも問題でした。当初は男性1,500人に対し、女性はたったの22人。「管理職=長時間労働」という考え方があり、女性社員の多くは、家庭との両立の難しさなどから管理職は務まらない、なりたくない、という考えを持っていました。
その考え方を変えていくため、従来の管理職像に捉われなくて良いというメッセージを発信し管理職にチャレンジすることを後押しする研修を実施。それでも、社内からの風あたりや、やれるかどうかという不安やつらさは残ります。
そのような、心の負担を軽くするため、研修で集まった仲間と悩みを共有したり、つらさを吐き出す場を設けるなど、女性メンバーがチャレンジしたいという気持ちを持ってもらえるように、丁寧に進めました。「毒を吐いてもらうには対面の、本音のコミュニケーションが重要です(笑)」と上村は語ります。
苦しい思いを吐き出せる場を作り、能力を発揮できるよう働きやすい環境を整えていったところ、少しずつ女性管理職は増えていき、現在では59人を超えるまでになりました。
前進しつつも、なかなか理想通りにはいかないダイバーシティ推進。難しい問題にどういう思いで取り組んでいるのか、セッションを終えた上村に話を聞きました。
--登壇にあたって一番伝えたかったことはなんですか?
上村:オムロンは、さまざまな事情や個性を抱えているメンバーが安心して自分の能力を発揮できる環境を整えたいと考えています。そのためには個性である能力の発揮を阻害する要因を、少しでも早く、確実に取り除くことが必要で、そしてそのために、今までの仕組を変える必要もあります。
たとえば、 配偶者の転勤や介護などで新幹線通勤が必要になった場合の諸手続きの整備や、まだ実現できていませんが、週4勤務などを取り入れて介護・育児と仕事を両立させる方法など、これまでにない新しい仕組みを検討し、環境を整え、一歩一歩、道を開いていくことに力を入れています。
阻害要因を取り除くためには、会社も、働くメンバーも、パワーがいります。新たな正解を導き出すためには、メンバーが真剣に議論をしながら信頼関係を築き、腹落ちできる議論を通して一歩前に進む。これをひとつずつ、焦らずに繰り返していくことが重要です。
セッションを聞いてくださった皆さまに伝えたかったのは、決してあきらめず、個性を発揮するために必要なことを考え続け、それを周囲に伝え、自らも実践していただきたい、ということ。ダイバーシティ推進は、社会全体で取り組むことです。
--セッションで新たな発見がありましたか?
上村:女性は自己肯定感を持ちにくいという問題や、キャリア形成に悩んでいるという会場からの声など、参考になることも多かったです。
私たちの働く環境はどんどん変化していて、今までのしがらみに縛られていては、ダイナミックな変革はできません。一方で、守っていきたい文化や仕組みもあります。その兼ね合いをトップダウンのコミュニケーションではなく、みんなで話し合いながら成功体験を積み上げていきたいと思います。
--多様性の尊重と業務効率のバランス を取るのは難しいと思いますが。
上村:いろんな人の意見を聞いていると、物事に時間がかかるというジレンマはあります。ただ、私たちは多様性を取り入れることで、今までの枠を超えた大きな変化を目指しています。そのための時間を惜しむわけにはいきません。経営陣をはじめ、多くのメンバーと議論しながら少しずつ進めています。
--今後、具体的に行いたいことがありましたら教えてください。
上村:例えば、わたしたちの経営のトップはオランダ駐在時代に、自分の部下である人事部長がワークシェアリング(週2日人事部長と週3日人事部長代行が仕事をシェアする)をしてまったく問題なく仕事がまわったという経験を語っています。私も今、育児短時間でマネージャーをしていますが、将来介護に携わるようになったときも仕事で活躍しつつ、家庭を大切にできれば、これ以上の幸せはありません。
ダイバーシティ推進が「自分の個性を思いきり発揮する」ということだとすると、それは終わりのない、どんどん進化していく取り組みだと考えています。私自身も率先垂範して、変化を起こしていくことに関わっていきたいです。
カンファレンスには、オムロングループに勤務する社員の方も参加。MASHING UPのコンテンツは、社会の流れや他社の取り組みを知ることで、自社の立ち位置や個々人がすべきことを見つけてほしいという視点から編まれています。
オムロンからの参加者にとっても、改めてダイバーシティに対する自社の取り組みや他社の取り組みを知るきっかけとなり、また、自身の働き方についても考えることができる場となりました。
来場者として参加した社員は、目の前で展開される議論に何を感じたのか。イノベーション推進本部の大鳥晴佳、オムロンヘルスケアグローバル人事本部の大家明子に聞きました。
--上村さんが登壇したセッションや、カンファレンスの感想をお聞かせください。
大家:属性に囚われず活躍できる場をどう作るか、というお話が印象に残りました。私は総務の仕事をしているので、皆さんが心地よく活躍できる場をどうやってサポートできるか、という視点で興味深く聞きました。
私の部署でも各人、またチームとしての実力の高め方について話し合ったばかり。それぞれが力を発揮できる安全な場所を作っていければと思います。
また、オムロンヘルスケアでは、女性の生涯の健康を機器やサービスでサポートする取り組み「オムロン式美人」を2010年から進めています。女性はライフステージによって健康課題も大きく変化します。健康であることはすべてのベースであり、とても重要なことですので、オムロンで働く女性たちを始め、男性にも体に関する正しい知識をもつことについて取組みで得た知見をグループに共有し貢献できることはたくさんあると感じました。
大鳥:今まで携わってきた事務の仕事以外にもチャレンジしたいと思ったのが参加のきっかけです。キャリアをどう築けばいいのかと考えながら、いろいろなセッションを聞いていました。
つきつめると、対話と共感が大事だということと、自分自身が楽しまなければ誰にも響かないし、やり切ることにもつながらないなと、再認識しました。セッションで上村さんもおっしゃっていましたが、自分がやりたいことを応援してもらうには、何が必要なのかを明確に言葉で伝えなければいけないと思いました。
--オムロンの取り組みについてどう思われますか?
大家:制度は充実していて整っています。私は産休と育休を取り、子供が保育園に通っている間は時短勤務をしていました。制度だけあっても居心地が悪ければしんどいと思いますが、幸い上司や周りにサポートしていただきながら働き続けることができています。
--特に印象に残ったセッションはありますか?
大鳥:「『面白がり力』がキャリアを運ぶ」というセッションで、登壇者の方が「面白がる力は努力すれば身につく」と話されていて。嫌だと感じる仕事でも、自分でいかに面白くしていけるかがキャリアを築く上で大事なのだという話が響きました。
多様な人々がそれぞれの個性を発揮しながら働ける環境作りを推し進めるオムロン。ここまで、すべてがスムーズに進んできたわけではありません。中には、まだダイバーシティの取り組みについて前向きではないメンバーがいるのも事実です。しかし、そのようなメンバ―についても少しずつではありますが、兆しのようなものが見えてきています。
『ダイバーシティ=女性活躍』ではありません。すべての多様な人々が『自分の持てる能力を思う存分発揮できるために何が必要か』を考え、変革を起こしていく取り組みです。個性を大切にすることで、社会を豊かにし、組織にイノベーションを起こす。一度に大きな変化は起こせなくても、対話を重ねながら確実に進んでいく。今回のセッションやインタビューを通じて、新しい社会のあり方が見えてきました。
記事制作/Cafeglobe