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環境ハイライト

「SF2030」ビジョン実現に向けた環境取り組みの課題認識

オムロンは、環境分野において持続可能な社会をつくることが企業理念にある「よりよい社会をつくる」ことと捉え、気候変動や資源循環といった地球規模の社会的課題に向けて積極的に取り組んでいます。特に「温室効果ガス排出量の削減」「循環経済への移行」「自然との共生」を取り組むべき重要な環境課題と捉えて、実効性の担保と仕組みの構築により、持続可能な社会づくりへ貢献し企業価値の向上に努めていきます。

長期ビジョン「SF2030」の目標

SF2030では、「脱炭素・環境負荷低減の実現」を、5つのサステナビリティ重要課題の1つとして掲げ、2030年までにバリューチェーンにおける温室効果ガス排出量の削減と資源循環モデルの構築を通じて、社会的課題を解決すると共に、更なる競争優位性が構築されている状態を目指しています。

2024年度までの目標

SF2030を開始した2022年度から2024年度までの3年間は、以下に示す4つの目標を掲げ、その進捗をモニタリングしてきました。環境取り組みは、将来の事業成長の基盤と位置付けているため、構造改革プログラム「NEXT2025」期間中も取り組みを継続しました。なお、温室効果ガス排出量目標スコープ1・2およびスコープ3は、SBTイニシアチブよりそれぞれ「1.5℃」目標および「2.0℃」目標の認定を受けています。

  1. 1. 自社(スコープ1・2)における温室効果ガス排出量の2016年度比総量68%削減
  2. 2. 国内全76拠点※1のカーボンゼロ実現
  3. 3. 新商品の省エネ設計実施(スコープ3 カテゴリー11)
  4. 4. 循環経済への移行対応としてのビジネスモデルの変革 、環境配慮設計、回収とリサイクル、持続可能な調達実施

2024年度の主な取り組み

2024年度も継続して、バリューチェーン全体における温室効果ガス排出量の削減および、循環経済への移行を進めました。

施策(1)自社における温室効果ガス排出量の削減(スコープ 1・2)

スコープ1・2において、自社拠点の温室効果ガス排出量の約9割を占めていた他社から供給された電気を使用することで間接的に排出される温室効果ガス排出量(スコープ2)の削減に焦点を当て取り組みました。グローバル全体で、徹底した省エネの推進を図ると共に、使用電力の再生可能エネルギー化を進めました。生産拠点において、「電力購入契約(Power Purchase Agreement:PPA)」や蓄電池などの設備の追加導入が期初計画以上に進んだことで、目標を大幅に上回る2016年度比総量74%削減を達成しました。特に、国内拠点においては、制御機器事業(IAB)が提供するサービスなどを活用し、エネルギー効率の改善を継続して進めました。また、社会システム事業(SSB)が提供する「J-クレジット」やPPAの活用を拡大し、全75拠点※2)でスコープ2におけるカーボンゼロを達成しました。

国内自社拠点のカーボンゼロ達成数
75 拠点 ※3

国内自社拠点のカーボンゼロ達成に活用したIABとSSBが提供するサービスの詳細は以下をご覧ください。

制御機器事業:「i-BELT Data Management Platform(i-DMP)」

社会システム事業:「みんなでつくる エコ活サービス」

社会システム事業:「自己託送システム」

※ 1,2,3 拠点減少により、2024年度時点で対象拠点が76拠点から75拠点に変更

施策(2)温室効果ガス排出量の削減(スコープ3)

スコープ3においては、バリューチェーン全体の温室効果ガス排出量の約7割を占める自社が製造・販売した製品・サービス等の使用に伴う温室効果ガス排出量(スコープ3 カテゴリー11)の削減に焦点を当て取り組みました。

2023年に策定した環境評価制度を用いて、既存製品の評価を進めると共に、各事業における算出体制の構築を行いました。また各事業は、省エネ性の高い製品や、小型・軽量化を実現した製品の開発を進め、ラインアップ拡充を推進しました。

算定プロセスを見直し、算定精度が向上したことで、スコープ3 カテゴリー11の温室効果ガス排出量は前年比540kt-CO2eの増加となりましたが、2016年度比総量26%の削減を達成し、目標を上回りました。

施策(3)環境評価制度

オムロンの環境への取り組みを促進し、顧客価値を高めることを目的とし、環境評価制度を構築しました。この制度は、サステナブルな経済の実現を目指し、製品をライフサイクルの視点から評価し、その環境パフォーマンスを可視化する仕組みです。(図1:参照)

環境評価制度では、EUタクソノミーに基づき、サステナブルな経済の実現に向けて解決すべき5つの環境特性(①気候変動、②循環経済、③汚染の予防、④水資源、⑤生物多様性)ごとに評価を行う「環境配慮製品」および気候変動と循環経済の環境特性において優れた効果を示す製品を「環境貢献製品」と定義しました。

図1: 環境評価制度
製品環境アセスメントに合格、ライフサイクル全体で環境負荷を数値化※1、ライフサイクル全体で環境パフォーマンスを数値化※2、環境貢献製品、環境配慮製品、特定の環境特性※3において優れた環境パフォーマンスを発揮し、顧客の環境課題の解決に貢献する製品、5つの環境特性に配慮し、ネガティブインパクトを軽減する製品

※1 現状はライフサイクル全体でのGHG排出量(CFP)のみ

※2 現状はライフサイクル全体でのGHG排出の削減量(削減貢献量)のみ

※3 現状は5つの環境特性のうち「気候変動」「循環経済」のみが対象

■環境配慮商品

環境配慮製品とは、5つの環境特性に配慮し、ネガティブなインパクトを軽減する製品です。製品環境アセスメントでは、環境特性ごとに評価を行い、基準を満たした製品が環境配慮製品となります。フローに沿って実施される製品環境アセスメントに合格することが市場投入の条件となっており、これによりオムロンのすべての製品が環境配慮製品に位置づけられます。(図2:参照)

図2: 製品環境アセスメントフロー
実施段階 アセスメントの内容|商品企画 アセスメント目標の設定・アセスメント対象・環境負荷低減要素・アセスメント項目・環境負荷低減目標→構想・概念設計 設計方針の決定 具現化策の決定→詳細設計 総合評価 詳細設計
環境配慮製品例:高容量パワーリレー「G9KBシリーズ」

オムロンは、Catena-Xなど国際的なフレームワークと整合したCO2データ算定方法の整備を目指し、「ISO14067:2018」およびWBCSDが主催するPACT発行のCO2データ算定・共有方法論「Pathfinder Framework」を参照し定めたオムロン共通のCFP算定ガイドを、一般社団法人サステナブル経営推進機構の支援の元に策定しました。電子部品事業では、パワーコンディショナーや蓄電システムなど新エネルギー機器向けに提供する高容量パワーリレー「G9KBシリーズ」において、ガイドラインを基にCFPを算出し、2024年5月より算出データを顧客の要望に応じて提供を開始しました。

製品のライフサイクル

■環境貢献製品

環境貢献製品は、環境配慮製品の要件を満たした上で、特定の環境特性において優れた環境パフォーマンスを発揮し、顧客の環境課題の解決に貢献する製品を指します。本製品群では、国際標準化が進む削減貢献量を評価基準として採用することで、「気候変動」と「循環経済」への環境価値を可視化しています。

社会システム事業(SSB)が提供する太陽光発電用パワーコンディショナ(KPVシリーズ)を、2024年12月に初の環境貢献製品として評価を完了しました。

環境貢献製品例:太陽光発電用パワーコンディショナ(KPVシリーズ)

太陽光発電用パワーコンディショナは、太陽光発電システムにおいて発電された電力を家庭や施設、電力網で利用できる形に変換・調整するための装置です。化石燃料を燃焼して発電する方法とは異なり、GHGを排出しないクリーンなエネルギー源であり、発電した電力を活用することで、化石燃料由来の電力を削減し、GHG排出量の削減に貢献します。

環境貢献製品の適格性:

最終利用段階での寄与

中間段階での寄与

システム全体の効率化や最適化による寄与

太陽光発電用パワーコンディショナ(KPVシリーズ)

太陽光発電用パワーコンディショナ(KPVシリーズ)

太陽光発電システムにおけるGHG排出量削減

日本の電力平均※1m太陽光発電システム※2、削減貢献量(GHG排出量を約70%削減)
参照シナリオ
日本の電力平均
IDEAVer3.3より、直接排出(発電用エネルギー)と間接排出(発電用エネルギー以外、ただし発電所の廃棄は含まない)を算定
ソリューション
太陽光発電システム
パワーコンディショナのGHG排出量はLCA観点でのCFPを自社にて算定※3。その他構成要素は電力中央研究所報告※4 を参考に、報告書当時と現在の差異(過積載率など)を独自に考慮し算定。発電所廃棄に関してはNEDO報告書※5 を参考に算定。
共通の前提条件
タイムフレーム:フロー型(Forward-looking型)
ライフタイム:15年間※6
カットオフ:なし※7 第三者保証:なし

※1 IDEAでは使用(発電時)とそれ以外で区分されているため、原材料調達、生産、廃棄・リサイクルの比率はイメージ

※2 太陽光発電システムの比率ではなく、パワーコンディショナのライフサイクル別の比率を全体に適用しイメージとして表示

※3 1次データによる算定が困難なケースは保守的なシナリオを設定。排出係数にIDEAVer3.3を使用

※4 電力中央研究所報告 日本における発電技術のライフサイクルCO2排出量総合評価 平成28年7月

※5 NEDO報告書 太陽光発電システムのライフサイクル評価に関する調査研究(平成21年3月)

※6 削減貢献量を算定する期間として、パワーコンディショナの標準的な耐用年数である15年を設定。その他の太陽発電システムの構成要素についてはIEA資料等を参考に使用期間を30年と定め、ライフサイクル全体の排出量の15年分を計上する形で対応

※7 差分の数値化においてはカットオフはなし。ソリューション算定に用いたパワーコンディショナのCFPにおいては、算定時に総量5%未満、単一1%未満の範囲でカットオフを実施している

施策(4)循環経済への移行

オムロンでは、限りある資源を有効に活用するため、循環経済への移行に関する取り組みも進めました。各事業は、ビジネスモデルの変革、環境配慮設計、回収とリサイクル、持続可能な調達の実施の4つを柱に、製品に使用する金属やプラスチックの使用量の削減などを進めました。

2025年度以降の環境取り組みの方向性

環境に対する社会からの企業への要請は年々高まっており、また、法規制化も進んでいます。中でも、カーボンニュートラルの実現を目的とした「気候移行計画」の策定と実行、取り組み内容の開示義務化の動きが進んでいます。

これらの社会動向を踏まえ、今後は、事業活動を通じてのバリューチェーン全体における温室効果ガス排出量の削減や循環経済の取り組みを従来以上に加速させていきます。2025年度は、仕入先の温室効果ガス排出量実績や削減目標・計画などに関する調査を実施し、調査結果に基づき、今後の削減目標レベルや施策を検討していきます。

さらに、「自然との共生」に関する取り組みも、2024年に改定した「生物多様性の方針」やTNFD提言に基づく自然資本への取り組みなどを進め、社会の期待に応えていきます。

これまでの実績と今後の目標
項目 領域 これまでの実績 今後の目標 進捗評価
項目 基準
(2016年度)
2024年度 2022年度 2023年度 2024年度 2030年度
温室効果ガス排出量の削減 自社
(スコープ1・2)
GHG排出量
(kt-CO2e)
250 80 93 79 64 88
削減割合 - △68% △62% △68% △74% △65%
自社拠点のカーボンゼロ実現 国内全76拠点のカーボンゼロの実現
(スコープ2対象)
10拠点
(進捗率13%)
39拠点
(進捗率51%)
75拠点
(進捗率100%)
※ 拠点減少により、対象拠点が76拠点から75拠点に変更。
設定なし
バリューチェーン
全体
(スコープ3)
GHG排出量
(kt-CO2e)
9,102 設定なし 11,965 6,205 6,674 7,464
削減割合 - 設定なし +31%
(カテゴリー11)
△32%
(カテゴリー11)
△26%
(カテゴリー11)
△18%
スコープ3 カテゴリー11:新商品の省エネ設計実施 ①IAB、OHQ、OSSの代表形式の算出方法をカタログ値から実績値へ置き換え完了 ②IAB、OHQ、OSSの排出量削減対象製品の設定とアクションプランの策定完了 IAB、OHQ、OSSにて設定した省エネ・省資源対応商品の上市、開発、検証完了 事業における新商品の省電力化設計や小型・軽量化、低消費電力製品への置き換えの促進 -
循環経済への移行 循環経済への移行対応としてのビジネスモデルの変革、環境配慮設計、回収とリサイクル、持続可能な調達の実 「環境貢献量」を再定義し新たな方向性を定めた
  • 環境評価制度を策定。「環境貢献製品」と「環境配慮製品」を定義
  • 各事業は優先課題を計画的に実施
  • 「環境配慮製品」の基礎となるCFP算定ルール/算定方法策定完了。事業毎に算定・開示取組を開始
環境評価制度に沿った環境貢献製品を拡大

オムロンは、気候変動を当社が取り組むべき最重要課題であると捉え、2019年2月に、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言への賛同を表明以降、気候関連の情報開示に関するフレームワーク等を基にした情報開示を進めています。詳細は以下。

第88期 有価証券報告書 P.30 「(3)環境(気候変動)に関する取り組み」

気候変動への対応

気候関連情報開示