日本の産業界では、少子高齢化による労働力不足が深刻で、業務の効率化による限られたリソースでの安定的な運用が求められています。とくに流通・小売業界では、労働人口不足に加え、消費者ニーズの多様化による店舗運用の複雑化が重なり、これらを解消するソリューションの需要が今後も続くと予測されます。
また環境面では、2024年の世界平均気温は、産業革命前比で1.5℃上昇し、今後5年間でこの水準を上回る確率は47%と予測されています。※1こうした気候変動を背景に、再生可能エネルギー導入への社会的要請は一層高まっています。環境省は、家庭部門の温室効果ガス排出量を2030年度に2013年度比で66%の削減を目指すことを掲げ、住宅の省エネルギー性能の向上、再生可能エネルギーの導入、省エネルギー対策、エネルギー管理の徹底を促進する方針です。※2家庭部門のCO2排出は約67.6%が電力使用に由来し、電気代高騰の影響もあいまって、太陽光発電の導入が注目されています。全住宅への導入率は6.3%にとどまることから、SSBがトップシェアを誇る国内住宅向け太陽光・蓄電システムの需要拡大が見込まれます。※3 2025年度の社会インフラ市場は総じて堅調な成長が期待されます。
※1 出典:WMO State of the Global Climate 2024
※2 出典:環境省 地球温暖化対策計画 令和3年10月22日 閣議決定
※3 出典:環境省 令和5年度 家庭部門の CO2排出実態統計調査 結果について(確報値)
SSBの強みは、これまで培ってきた社会インフラにおける幅広い業界の知見と、オムロンの強みである製品・システムといった「モノ」にサービスを掛け合わせた価値提供ができる点です。これまで、社会基盤を支える各業界において、お客様の困りごとへの提案から導入、保守・運用等のアフターフォローまでをワンストップで提供することで、顧客のバリューチェーンに寄り添い、信頼関係を構築してきました。その結果、幅広いインフラ市場で日本国内トップシェアを獲得しています。今後もこの強みを活かし、モノとサービスを掛け合わせた価値提供に取り組んでいきます。例えば、エネルギーソリューションでは、住宅向けで強みとする蓄電システムなどの提供に加え、これまでお客様にとって導入時の負担となっていた初期費用をなくすサービスモデル(PPA)の提供を進めています。それぞれのお客様の事情に合わせた提案で、再生可能エネルギーの普及における課題解決に取り組んでいます。また、マネジメント・サービスソリューション(M&S)では、流通・小売業界など全国に多拠点をもつお客様の各拠点への機器の導入を支援していますが、それに加えて設置される様々な機器の保守・運用や在庫管理など、各拠点での運営に求められる業務を一括で担うサービス提供をしています。これによりお客様の現場・管理側での業務効率化や、機器の保守・運用におけるコスト抑制などの課題解決に取り組んでいます。SSBは、モノとサービスを掛け合わせたソリューションを多様な現場へ提供することで、お客様の抱える課題への解決を加速させていきます。
SF2030におけるSSBのビジョンは「Design Next Social Structure ~ソーシャルオートメーションで、人と社会を有機的につなげ “ソーシャルグッド”を生み出す~」です。これには、顧客起点でお客様のニーズに応え、世の中の課題を見つめ、「次世代の社会システム」をデザインし続けるという意志を込めています。事業成長に向けた取り組みとして、市場が堅調に成長する「エネルギー」と「マネジメント・ サービス(M&S)」をSSBの中長期的な成長ドライバーとして注力し、新たなソリューション提供を加速させていきます。エネルギーソリューションでは、蓄電システムのトップシェアの維持に加え、サービス創出による付加価値の向上と獲得可能な市場を広げることで、市場成長を上回る事業成長を目指します。具体的には、蓄電システムの商品ラインナップ拡大に加え、ライフスタイルに応じて太陽光発電量と消費電力量の変動をAIで最適に制御するサービスなどと掛け合わせた提供を進めます。また、M&Sソリューションでは、全国に有する保守拠点を活かした迅速・均質なサービス提供や、顧客の導入する機器メーカーに拘らないマルチベンダー対応に加え、多拠点をもつお客様の各拠点での機器の稼働状況や在庫管理、顧客行動など様々なデータを収集し、店舗運営にとどまらず事業運営全体での課題解決に向けて取り組むことで事業拡大を目指します。SSBは、事業成長の基盤を確立しながら、再生可能エネルギーの普及・効率的運用と社会のインフラ持続性に貢献し、次世代の社会システムをデザインし続けることで、“ソーシャルグッド”による笑顔溢れる未来の実現を目指します。
2024年度の売上高の状況
エネルギーソリューション事業は、再生可能エネルギーの自家消費ニーズの高まりや補助金制度の活用、産業・商業分野におけるカーボンニュートラルへの取り組みの継続的な進展を背景に、蓄電システムなどの需要が引き続き堅調に推移しました。また、駅務システム事業は、旅客者数の増加に伴い、鉄道各社による設備投資需要が堅調に推移しました。これらの結果、売上高は前期比で増加しました。
2024年度の営業利益の状況
売上高の増加により営業利益は前期比で大きく増加しました。