「すべての忙しいエンジニアのために」をコンセプトに、製造業における人手不足の課題解決策として、エンジニアの業務効率を上げるべく、初期設定のままで安定検出でき、高さ測定、傾き検出、位置決めなどの判別用途に幅広く対応できる多機能センサを2024年12月に発売しました。このセンサは、安定検出とユーザーインターフェース、使い勝手を大幅に向上させており、装置の設計・製造、立ち上げ、保全など携わる技術者の手間と時間を節約する工夫を詰め込みながら低価格で提供しています。
今後も、このようなお客様ニーズの高い商品を発売することで、製造現場の生産性向上に寄与していきます。
2024年12月に発売したセンサ「ZP-L」
多くの製造業が抱えている人手不足の解決の一手として、現場データの利活用を促進する「データフローコントローラ」を2025年9月から販売開始しました。お客様との対話を重ねる中で、DX化が進みにくい要因の一つが初期投資の費用負担やDX化に伴う工数増であることであると捉えたため、「つなぎやすさ」と「使いやすさ」を特徴として開発しています。このコントローラは、他社製品を含む工場内の様々な機器を現場で繋ぎ、プログラミングも不要でデータを収集することができます。取得したデータにより、工場の設備や状況を可視化することができ、監視など目的に合わせた分析が可能です。意思決定者への報告もタイムリーに行うことができ、スピーディーな経営判断にも貢献します。今後は、既存設備がフル稼働している工場やDXへの大規模投資が難しい企業を主な対象として、販売していく計画です。
2025年9月にグローバル一斉リリースした「データフローコントローラ」
次世代工場づくりを目指す株式会社デンソー(以下、デンソー社)と、AIを搭載した視覚装置を共同開発し、ひとが行う高精度な検査を具現化するアルゴリズムを2024年度に開発しました。オムロンは、学習手法が異なる15種のAIを逐次搭載でき、134項目にわたる新機能を搭載したコントローラを開発・提供し、外観検査の自動化に貢献することで、歩留まり向上に寄与しています。プロジェクトに着手した2022年以降、両社で話し合いを重ねながら共同開発に取り組んだ結果、本取り組みが未来に向けた新技術・新製品への対応において多大な貢献をしたとして、2025年6月に、デンソー社から「先進賞」として表彰されました。
顧客の声
デンソー社
デンソー社内製のAIを搭載した視覚装置の共同開発により、人間による検査に匹敵する検査アルゴリズムの開発を実現した結果、専門技術者不足の解消と検査人員削減に寄与いただきました。本装置は、様々な製品・工程に対応するべく、134もの新機能を開発しており、生産現場での使い勝手が大幅に改善されました。
お客様の新たな需要を開拓しようと取り組んでいる事例の一つが、NVIDIA社との協業です。オムロンは、変種変量生産が求められる製造業の需要に合わせ、デジタルツイン技術を活用した設備開発の効率化に取り組んでいます。今回、オムロンの制御設計ツールと、NVIDIA社の3Dでワークフローとアプリケーションを開発できるプラットフォーム「NVIDIA Omniverse」を連携させることで、現場の設備や装置内部を仮想空間上で高精度に再現・検証できる仕組みと、AIを活用した設定の最適化を実現しました。このデジタルツイン技術により、装置の立ち上げやトラブル対応をはじめ、生産現場の作業効率改善に向けた支援を提供できるようになります。
製造工程全体のデータなどの処理能力や生産性の向上、それによる競争力の向上を目的に、オムロンは米・IT大手のコグニザント社と戦略的パートナーシップ契約を締結したことを2025年4月に発表しました。近年ITの技術が進化しているにも関わらず、IT(情報技術)とOT(制御技術)が分断されていることで、データを活用しきれていないという現場は少なくありません。その要因として、現場データが部門や工場ごとに閉じていて共有されていないことや、ITとOTの情報連携が技術的に困難であることなどが挙げられます。そこで、オムロンの制御機器(センサ、コントローラ、サーボモータ、ロボット等)と、コグニザント社のIT技術(クラウド、AI、IoT等)を連携するプラットフォームを共同開発し、自動車、半導体、電子機器、消費財などの業界をお客様として、現場実装からコンサルティングまでのソリューションを一括して提供できるようになりました。今回のパートナーシップ契約により、コグニザント社の高いITソリューション力とオムロンの高品質な制御機器および現場データの収集力を融合することで、現場データを製造現場のみならず経営にも活用いただきます。(図1参照)
顧客の声
自動車業界 グローバル企業
自動車工場で多品種少量生産を実現するにあたり、過去に導入した製造設備や装置を使用し続けるという従来の考え方では、必要な機能を自由に追加や変更することが難しいという課題がありました。その解決策として、オムロンとコグニザント社が生み出した仮想化プラットフォームを活用することを決定しました。生産工程で使われる様々なコントローラ機能の情報集約から集中管理が可能となることで、必要な機能を簡単に追加できるようになり、多品種少量生産に適したシステムを構築することができます。また、省配線・省機器を実現することで、コスト低減・信頼性向上につながります。製造現場を理解し、幅広い制御機器やシステムを展開するオムロンだからこそ、このプラットフォームの開発が実現できたと評価しています。今後は、製造工程全般における本仕組みの拡張や、コグニザント社と連携したグローバルにおける強力なサポートを期待しています。
オムロン・コグニザント社の強みを掛け合わせ、「ITとOTの分断」を解消。現場データを元にした経営の意思決定を、迅速に現場に実装できるソリューションを創出。
DXによる未来のモノづくりへの挑戦やモノづくり拠点のグローバル最適化など、昨今製造業が変化しています。そのようなニーズに対応するために、「オートメーションセンタ(以下、ATC)」を拡充しています。欧州では、4月に価値共創拠点であるATCの新拠点を製造業のグローバル企業が集積するドイツ・シュトゥットガルトに設立しました。オムロンの持つ幅広い制御機器を高度にすり合わせた技術力とアプリケーションを使用して、お客様の現場課題に合わせた解決策を、お客様とともに体感・実証していきます。さらに、Proof of Conceptエリアでは各種ロボットを使った検証やお客様の使用環境に合わせた実証実験が可能となっています。また、10月にはインドのベンガルールにもATCを新設予定です。これらのATCを通じ、モノづくりに関わる課題解決やビジョンの実現に向けて、お客様とオムロンがともに考え、具体的な解決策を形にしていきます。