製造業では、グローバルにおける競争を勝ち抜くための製品競争力の再構築、各国の国策や地政学リスクに備えた生産拠点の見直し、熟練工の不足など、様々なモノづくりの課題に直面しています。このような課題を受け、ファクトリーオートメーションへのニーズはますます高まっています。
IABがアクセスする市場においては、中国での投資が調整局面に移行するものの、以下の理由で2025年度以降も堅調に推移すると見込んでいます。それは、AIやデータセンタの需要拡大にともなう半導体関連市場への投資や、今後も需要が高まるEVの普及に伴う二次電池を含む環境モビリティへの投資の拡大などです。IABでは中長期的な事業の成長に向け、中国のみならず欧米やチャイナ プラスワンにおける事業機会を確実に捉え、安定的な顧客基盤を築きます。また、モノづくりの課題を解決するソリューションの開発・提供を通じて、市場成長を上回る飛躍的成長を目指します。
IABの強みは、お客様の製造現場の課題を解決できる3つの提供価値を有していることです。1つ目の価値とは、「幅広いラインナップを誇る商品群」です。装置の状態などの情報を把握する多様なセンサ、高速かつ高精度な装置の制御を可能とするコントローラなどの基幹商品の強化に着手しています。今後は、オムロンがこれまで製造現場で培ってきた知見をもとに、製造現場の高度化に貢献する商品群をさらに充実させていきます。2つ目は、「高度な制御を簡単に実現する制御アプリ」です。デバイス構造の三次元化や、チップレットなど技術革新が進む半導体の製造工程、脱炭素社会の実現を支える2次電池の製造工程など、モノづくり現場では高度な技術が求められています。そのようななかで、オムロンが誇る商品群とソフトウェア技術を組み合わせた制御アプリを広く提供し、お客様の課題解決を支えています。加えて、製造現場に機能実装するためのフィールド技術サービスを担う、経験豊富なアプリケーションエンジニアをグローバルに整備し、お客様と共にオムロンのオートメーション技術で新たな課題の解決を進めていきます。3つ目は、現場データの活用により、経営課題の解決を支援する「サービス」の提供です。代表例は「i-BELT」と「ITとOTの融合によるデータソリューション」になります。i-BELTは、お客様の知見を活かしながら、現場データを活用するサービスです。コンサルティングを通して現場課題の把握と改善活動を一気通貫でサポートし、定着させる現場データ活用サービスとして高い評価を受けています。
IABでは、事業ビジョン「オートメーションで人、産業、地球の豊かな未来を創造する」を掲げ、サステナブルな産業への進化に向け、産業の高度化と働く人々の幸せの両立を目指しています。このビジョンの実現に向け、大きく2つの取り組みを進めています。それは、私たちのソリューションを支える商品(コンポーネント)の再強化と新たなソリューション創出に向けたパートナーとの協創です。
まず、商品を再強化するにあたり、全社の開発リソースを競争力の高い商品開発に集中的に配分しています。2025年度にはセンサやコントローラなどを22機種、2026年度にはリレーなど多くの機種を発売する予定です。加えて、製造技術の進化を実現する制御アプリケーションの強化を業界やお客様にあわせて進めています。「半導体・EV」などの高精度な制御技術が求められる先端技術領域のお客様にむけても、オムロンのエンジニアがお客様の現場に入り込み、一緒に課題を解決することでアプリケーションを進化させていきます。例えば、半導体大手のNVIDIA社と仮想空間上で機器動作を高精度に再現・検証するデジタルツイン技術の協業を進め、現場の生産性向上に寄与することを目指しています。
そして、現場データによってライン単位、工場単位で「予兆保全」や「不良品を作らないモノづくり」「省エネルギー生産」を解決してきたi-BELTサービスに加え、製造業への高い知見を有するIT企業のコグニザント社との戦略的パートナーシップにより新たなIT-OTソリューションを創出し、今後の成長の柱としていきます。オムロンはコンポーネントの幅広い品揃えと新たなソリューションでお客様の課題を解決し、持続可能な社会を支えるモノづくりの高度化に貢献していきます。
2024年度の売上高の状況
製造業における設備投資需要は、日本においては半導体市場が、中国の半導体国産化の投資需要を受けて好調に推移しました。一方、中国においては太陽光発電関連投資と二次電池投資の需要停滞が継続し、欧州および東南アジアにおいては電気自動車(EV)向け投資需要が減速し、全体としては低調に推移しました。これらの結果、売上高は、前年上期の売上高が受注残に支えられていたこともあり、前期比で減少しました。
2024年度の営業利益の状況
売上高は減少しましたが、売上総利益率の改善や構造改革を通じた固定費圧縮効果が寄与し、営業利益は前期を大きく上回りました。