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人権ハイライト

「SF2030」ビジョン実現に向けた人権取り組みの課題認識

オムロンは、大切にする価値観のひとつとして、企業理念の中で「人間性の尊重」を掲げています。私たちが考える人間性の尊重とは、人の多様性、人格、個性の尊重はもとより、人間らしい暮らしや仕事を追求するという私たちのすべての活動の根底にある価値観です。

私たちは、この価値観を元に、企業としての人権責任を果たすことは、持続可能な社会づくりに貢献し、持続的な企業価値の向上につながる重要な取り組みであると考えています。

長期ビジョン「SF2030」の目標

SF2030では、「バリューチェーンにおける人権の尊重」を5つのサステナビリティ重要課題の1つとして掲げ、2030年までに、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則(UNGPs)」に沿って自社のみならずバリューチェーンで働く人々の人権の尊重に対して影響力を発揮し、人権侵害を許さない、発生させない風土と仕組みが形成されている状態を目指しています。

2024年度までの目標

SF2030を開始した2022年度から2024年度までの3年間は、以下を目標に掲げ、その進捗をモニタリングしてきました。

  1. 1. UNGPsに沿った人権デューディリジェンスの実施
  2. 2.各国・地域に適した人権救済メカニズムの構築

2024年度の主な取り組み

施策(1)UNGPsに沿った人権デューディリジェンスの実施

2022年に実施した人権影響評価で特定した7個の「優先的に取り組む人権課題(顕著な人権課題):Tier1」の是正やリスク低減に向け、人権デューディリジェンスのサイクルを回せる状態を作り込んできました。2024年度は、7つの優先課題ごとに責任部門の下、ビジネスカンパニーがResponsible Business Alliance(RBA)※1の基準を管理基準として、人権デューディリジェンスを実行できる体制を構築しました。

※1 グローバルサプライチェーンにおける企業の社会的責任を推進する企業同盟

自社拠点では労働環境や労働安全衛生の改善に向け、日本、中国、アジア・パシフィック、欧州および米州の自社生産拠点22拠点に対して、RBAのSAQ(自己評価質問書)を実施しました。マレーシアの生産拠点1拠点では、RBA基準による第三者監査を実施し、人材派遣業者を介して雇用している外国籍労働者について、労働者から派遣業者への就職斡旋手数料の支払いおよび雇用契約書内容に、現地法令との相違が確認されました。これらの不適合は、外国籍労働者への就職斡旋手数料の返還および雇用契約形態の正社員への変更、従来と同様の仕事に従事する環境整備を行うことで是正されました。日本国内5拠点では、構内委託会社で雇用される外国人技能実習生の雇用環境調査を実施し、いずれの拠点においても、強制労働のリスクが無いことを確認しました。

サプライチェーンにおいては重要仕入先60社、それ以外の仕入先389社に対して、セルフチェックを実施しました。重要仕入先に対しては、RBAより求められる要件のクリアを両社の共通目標として設定しています。また、人権侵害リスクが高いと想定されるエリアに生産拠点を持つ仕入先(中国:151社、マレーシア:5社)に対しては、詳細なセルフチェックの実施や開示情報の確認、個別ヒアリング等を行いました。調査結果からリスクが高いと懸念された仕入先(中国1社)に対して、現地での実態調査を実施し、「負傷、発病した労働者へ医療上の応急処置を行うための訓練を受けた要員が設置されていない」事象を確認しました。オムロンから仕入先に指摘を行い、是正計画に基づき改善を進めました。(図1:参照)

図1: サプライチェーンにおける階層別サステナビリティアセスメント
重要仕入先※2 一般仕入先 ➀重要仕入先対象のセルフチェック 施策 ・第三者基準での評価として、RBA行動規範の遵守状況を確認し、改善を実施する ・重要仕入先対象にRBA Corporate Level SAQでのアンケートを1回/年実施 2024年度実績 60社 ➁人権高リスク国/ 高リスク属性の仕入先対象の深堀調査 施策 ・バリューチェーン上で特定したリスクの有無確認のための、より具体的なアセスメント、リスクの未然防止のための是正処置、発生したリスクの救済策を実施する ・リスク分析の結果に基づき定義した人権侵害リスクが高い国に生産拠点を持つ仕入先対象に人権に関する詳細なアンケートを1回以上/3年実施 2024年度実績 中国:151社 マレーシア:5社 ➂全仕入先対象のセルフチェック 施策 ・サステナブル調達ガイドラインの遵守状況を確認し、改善を実施する ・全仕入先対象にアンケートを1回以上/3年実施 2024年度実績 389社 ※2 重要仕入先の特定 重要性を、取引量や調達部品・材料の重要度や代替可能性だけでなく、地政学リスクや事業特有のリスクを考慮した上で、事業戦略・技術戦略との整合性やQCDESTを含めて判断。

製品・サービスでは2024年6月にオムロンAI方針を公表しました。これに基づき、既存のリスクマネジメント体制と連携したAIガバナンス委員会の運用を開始し、オムロンの提供する製品・サービスを通じたAI活用に起因する事故や人権侵害等の発生といったリスクへの対策に取り組んでいます。

施策(2)各国・地域に適した人権救済メカニズムの構築

オムロンが人権に対して悪影響を引き起こしたり、または助長していることを確認した場合、正当な手続きを通じた救済を実行できるよう、各国・地域に適した人権救済メカニズムの構築を進めてきました。

2023年度までに、オムロンが事業を展開する5つのエリア(日本、中国、アジア・パシフィック、欧州、米州)ごとに、従業員(派遣社員含む)や仕入先が利用可能な通報窓口を整備しました。加えて、地域社会や顧客、直接取引関係のない2次以降の仕入先も含めたあらゆるステークホルダーからの苦情を受け付ける窓口を設置しました。2024年度は、構築した救済メカニズムの利便性や信頼性向上に向けた運用の改善を行いました。

人権デューディリジェンス実行体制の詳細はこちらをご覧ください

2025年度以降の人権取り組みの方向性

人権に対する社会からの企業への要請は、年々変化しています。オムロンは、これからも社会からの要請にしっかりと応え、自社のみならずバリューチェーンで働く人々の人権の尊重に対して影響力を発揮し、人権侵害を許さない、発生させない風土と仕組みが形成されている状態を目指していきます。

2025年度は、これまでに構築してきた人権デューディリジェンス実行体制や各国・地域に適した人権救済メカニズムを土台に、従来、特に注力してきた「優先的に取り組む人権課題(Tier1)」に対する取り組みを継続・強化することに加え、法規制等の社会動向も踏まえ、人権への負の影響をより一層低減していくため、「対処する必要性がある課題(Tier2)」に対しても取り組みを広げる検討を進めています。詳細な人権影響評価を通じてオムロンのバリューチェーン上にあるリスクを特定したうえで、活動領域の拡大を検討していきます。

これまでの実績
領域 課題 目標 これまでの実績 進捗評価
2022年度 2023年度 2024年度
全体 UNGPsに沿った人権デューディリジェンスの実施
  • グループ全体の人権影響評価を実施。19個の課題(うち7つがTier1:優先的に取り組む課題)を特定
  • RBA(Responsible Business Alliance)加盟(2024年1月)
  • 人権担当取締役の設置
  • RBA管理基準に基づく人権デューディリジェンス実行体制の整備完了
自社
  • 労働安全衛生
  • 労働環境
  • 主要な自社生産拠点に対するRBAのSAQ実施:24拠点
  • 主要な自社生産拠点に対するRBAのSAQ実施:25拠点
  • RBA基準による第三者監査の実施と発見された課題の是正:3拠点
  • RBA行動規範を踏まえた労働マネジメントシステムの導入・展開
  • 主要な自社生産拠点に対するRBAのSAQ実施:22拠点
  • RBA基準による第三者監査の実施と発見された課題の是正:1拠点
  • 日本国内拠点の構内委託会社で雇用される外国人技能実習生の雇用環境調査:5拠点
サプライチェーン
  • 強制、奴隷、債務労働
  • 労働基準
  • 児童労働
  • 重要仕入先向けのセルフチェック:69社
  • 全仕入先向けのセルフチェック:356社
  • サプライチェーンの人権影響評価を実施。2024年度までの重点取り組み対象を中国・マレーシアに生産拠点を持つ仕入先と特定。
  • 重要仕入先向けのセルフチェック:60社
  • 全仕入先向けのセルフチェック:575社
  • 人権侵害リスクが高いと想定されるエリアに生産拠点をもつ仕入先への深掘調査:120社(中国:69社、マレーシア:51社)
  • 重要仕入先向けのセルフチェック:60社
  • 全仕入先向けのセルフチェック:389社
  • 人権侵害リスクが高いと想定されるエリアに生産拠点をもつ仕入先への深掘調査:156社(中国:151社、マレーシア:5社)
製品・サービス テクノロジーの倫理的な活用
  • 「オムロンAI方針」策定着手
  • 「オムロンAI方針」策定
  • AIガバナンス委員会設立
  • 「オムロンAI方針」公表(2024年6月)
  • AIガバナンス委員会の運用開始。委員会内でAI関連社内問合せ対応開始。
バリューチェーン全体 苦情処理メカニズムと救済へのアクセス 各国・地域に適した人権救済メカニズムの構築
  • 一社)ビジネスと人権対話救済機構(JaCER)に加盟。地域社会や顧客、2次以降の仕入先向け対応を検討開始
  • 内部通報件数:84件(日本30件、海外54件)
    ※ 人権以外の通報も含む
  • グローバル全エリアで仕入先からの通報を受け付ける体制整備を完了
  • JaCERの提供する「対話救済プラットフォーム」の運用開始
  • 内部通報件数:106件(日本29件、海外77件)
    ※ 人権以外の通報も含む
  • 救済メカニズムの利便性・信頼性向上に向けた運用改善
  • 内部通報件数:106件(日本43件、海外63件)
    ※ 人権以外の通報も含む