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ICTで広がる介護予防の新しいカタチ

ICTで広がる介護予防の新しいカタチ

オムロンは、長期ビジョンSF2030の中で取り組むべき社会的課題のひとつに「健康寿命の延伸」をあげています。2018年より高齢者の自立を目的とする自立支援事業に取り組み、大分県、大阪府、石川県小松市をはじめとする自治体や地域包括支援センターの支援をする中で、様々な効果がみえてきました。このたび、データソリューション事業本部 自立支援事業部の宮川健が介護予防ケアマネジメントを支援するICT(ハレクルWith®の実証成果について、第67 回日本老年社会科学会大会にて発表いたしました。これまでは紙帳票で情報が蓄積されていたため、容易に確認できなかった短期集中予防サービス*における集団データでの目標の内容と、サービスにおける成果の連動性を分析し、アセスメントを通じた目標設定がもたらす効果を実証しています。

* 短期集中予防サービス: 生活機能を改善するための運動器の機能向上や栄養改善等のプログラム
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12301000-Roukenkyoku-Soumuka/0000052668.pdf

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介護予防ケアマネジメント「ハレクルWith®」

人生100年時代 ── いつまでも自分らしく暮らしたいと願う高齢者の方々を支えるために、オムロン データソリューション事業本部 自立支援事業部は、介護予防ケアマネジメントを支援するICT「ハレクルWith®」を2024年9月にリリースしました。ハレクルWith®は、介護予防に関わる専門家・熟練者のノウハウを学びながら実践できる最先端のICTです。

 

データで見えた「IADL目標」の効果

ICTを開発するにあたり、2020-23年度に事業連携協定を締結した大分県・大阪府・石川県小松市と連携し、延べ1000人規模の高齢者の方々にご協力いただきながら実証を進めてきました。その結果わかったのは、介護予防サービス・支援計画書(以下、予防プラン)の目標に「IADL(手段的日常生活活動)」を取り入れた方が、日常生活の動作がより改善する、ということ。IADLとは、買い物や料理、金銭管理、外出といった、暮らしに直結する少し複雑な動作のことです。

ADL (Activities of Daily Living )=「 日常生活動作 」
毎日の生活を送る上で必要な、 日々繰り返される基本的な身体動作群
食事・入浴・更衣・整容・入浴・起居動作(寝返り、起き上がり、座位、立ち上がり、立位、歩行

IADL (Instrumental Activities of Daily Living )=「 手段的日常生活活動 」
ADL を基本にした日常生活上の複雑でより高次な動作
家事全般・買い物・金銭管理・服薬管理・外出・電話の使用・趣味など

※大分県の生活機能向上支援マニュアルよりhttps://www.pref.oita.jp/uploaded/attachment/2182858.pdf

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検証総数:289

目標にIADLを含む群(117/289名、約4割)では、IADLを含まない群よりも『日常生活』にて改善を認めた。一方、目標にADLや運動/体力(体力測定値の向上など)を含む群では、ADLや運動体力を目標に含まない群と比較しても改善に差は認めなかった。

IADLを含む具体的な目標設定を行うことにより、ご本人がサービス期間中に『日常生活の中で、またできるようになりたい』と意識しやすくなり、結果として改善につながったのだと思います」と語るのは、自立支援事業部の宮川健。

学会に参加した有識者は「生活機能を改善し、再び自立した生活を取り戻したい高齢者において、個人の生活課題に則した適切なIADLを含む目標設定が重要である」というポジティブな意見をいただいた。一方で「IADLを含む目標設定を行っているケースが4割程度しかない。もっと多くのIADLを含む目標設定が行われていると思っていた」と驚きの声もあがりました。

背景には「どの動作に課題があるのかを特定するのが難しい」という現場の悩みがあります。

 

生活動作を分解して「原因」を見つける

「ハレクルWith®」は、日常生活での支障やその兆しを具体的な工程の場面で捉え、その原因を分析結果として自動提案し、地域包括支援センターの職員が行うアセスメントや報告書の作成、予防プランの目標設定を支援します。たとえば「お風呂に入るのが大変」という場合も、浴室までの移動、浴槽をまたぐ、体を洗う――といった工程に分解。どこに課題があるのかの分析をICTが支援し、改善に向けた目標設定に導きます。
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ICTが課題特定の難しさを解決してくれることで、利用者にとっても介護予防ケアマネジメントを担う地域包括支援センターの方にとっても納得感のある計画が立てられるようになります。」と宮川は語ります。

 

自立した暮らしを取り戻すために

自立支援事業部は、ICTとデータ分析を通じて自治体や地域包括支援センターの取り組みを後押ししています。狙いは、現場の負担を軽くすると同時に、より多くの高齢者が自立した生活を取り戻せるようにすること。

「私たちの願いは、高齢者の方々の "もうできない" を、"またできる" という喜びに変えることです。そして、元気な高齢者の活気に満ちた"地域づくり"の支援をしていきたいと思います、と宮川は語ります。

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ICTの力で、介護予防がもっと身近に、もっと前向きに。オムロンの自立支援事業の挑戦は続きます。

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