We are Shaping the Future! 私たちが手繰り寄せる未来ストーリー
Session 1:SINIC理論で描くBeyond SDGs ― ヒューマンルネッサンス研究所 立石郁雄
オムロンは、2025年10月10日(金)大阪・関西万博テーマウィーク「SDGs+Beyondいのち輝く未来社会」の一環として、未来共創のキックオフ「2050年コントロールから解放される"自然社会"と人間」を開催しました。
登壇者は、タイム誌で「世界のAI分野で最も影響力のある100人」に選ばれたオードリー・タン氏、現代アートから未来を問う美術家で、2025大阪・関西万博 日本館基本構想クリエイターでもある市原えつこ氏、世界経済フォーラムYoung Global Leadersに選出された"産業僧"で、"グッド・アンセスター(よき祖先)"となるべく、"長期思考"による未来創造の重要性を説く松本紹圭氏など、世界で活躍する面々が顔を揃えました。

その模様を、全3回に分けてご紹介。まずは、ヒューマンルネッサンス研究所立石郁雄によるオープニングセッションをダイジェスト映像でお伝えします。2033年に到来するという自然社会の全容とは―
今回(2025年)の万博は「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマにその先にある自律社会、そして自然社会への扉を広く壮大なトランジションのはじまりです。本日は、この分水嶺を越え、私たちが100 年後の人類から"よき祖先"と呼ばれるための共創のキックオフ。この機会に、SINIC理論を羅針盤に新たな未来感、新たな社会OSを世界に発信し、人間の真の変容を共に起こす仲間を募りたいと思っています。より良い未来をたぐり寄せるその第一歩を是非ここから一緒に始めましょう。


オムロンの創業者 立石一真らは、戦後の大激動期を乗り越えていく1970年、前回の大阪万博の年にSINIC理論を発表しました。この理論は、「科学」・「技術」・「社会」が、「人間の意欲」を軸に円環的に相互作用しながら、価値観の変化を原動力に社会が螺旋状に進化していくということを示した理論です。発表から半世紀以上、情報化社会、そして、ついこないだまでの最適化社会の到来を驚くほど正確に予測してきました。

オムロン自身もこの羅針盤を手に人と機械の関係を「代替」・「協働」・「融和」と進化させながら、自動化社会での「ファクトリーオートメーション」、情報化社会での「ソーシャルオートメーション」、最適化社会での「ヘルスケアオートメーション」と、事業を通して新たなマーケットを創造し続け、未来社会づくりに貢献してきました。そして自律社会に向かっては、「人が活きるオートメーション」で貢献していきたいと考えています。
未来予測理論「SINIC理論」は、半世紀以上経てなお、今こそこれからの未来航海に生かせる羅針盤と確信しております。私たちは気候危機、資源枯渇、精神の荒廃といった工業化社会が残した課題を解決すべくSDGsという大きな目標を共有しました。しかしこの負の遺産の解消だけでは真に豊かな未来を作るには不十分です。私たちは、まったく新しいOSが必要だと考えています。
2030年から始まるポストSDGsのグローバルアジェンダを議論する2025~2029年、そこに符合する形でその先のBeyondを構想し、新たな次元のビジョンを提示しなければなりません。SINIC理論の中で究極の理想として描いた自然社会。その心はまさにこのBeyondと深く重なります。


人間、技術、社会が自然の摂理と一体化し、エコシステムとして循環するのが2033年以降に到来する自然社会です。人間の社会や技術がもはや自然の営みまで人為的にコントロール(統御)しようとするものではなく、自然界のコントロールに融和してそのプロセスの一部として循環する「脱・統制コントロール社会」。そして精神や心理といった現象が科学技術の主要なテーマの1つとなる社会となるのです。

私たちは今、自然社会の解像度を高める研究を進め、その先の背骨となるラインが見えてまいりました。「人工的自然社会」、「拡張的自然社会」、そして「一体的自然社会」という流れです。この流れと符合する形で、"Interbeing Society(相互存在の社会)"、人間にとっての "Freedom from Control(コントロールを強いられることからの解放)"、そしてこの万博のテーマでもあります、"Earth where life is alive(あらゆるいのちが輝く未来)"へ続く変遷として捉えております。
この未来を構成する仮説として、私たちは2つの自然のシンカを考えています。
1つは人工的な自然・場所に根差した技術によって進む「自然(しぜん)」との関係性の進化・深化・真価。もう1つは生命を支える技術インフラや非エゴ的な技術によって進む「自然(じねん)」、つまり本質理解に基づく共生への進化・深化・真価です。これら2つのシンカを目指すことで単なる自然志向にとまらない、生きとしけるものの共生関係に向かうという仮説を立てました。

そしてこれはサイバネティクスにおける 「機械」という概念そのもののアップデートを意味しています。それに伴いコントロールの意味もアップデートされていきます。これまでコントロールとは「統制」を意味してきましたが、未来のそれは真の自由を可能にする「Interbening的なコントロール」へと変わるでしょう。あらゆる境界が融解し、私たちWeの範囲が、生物・人工物の関係性構築へと広がっていく。人間にとってのコントロールからの解放が現実のものとなると見ております。
この壮大な未来を私たち一社だけで描くことはできません。だからこそSINIC理論と多くの未来コンセプトが共振しているまさに今、私たちは共創を呼びかけたいと思っています。本日、ご登壇いただくオードリー・タンさんが実践する多元的な価値が共生する社会『Pulurality』、マルクス・ガブリエルさんの、倫理が社会的エンジンとなる『倫理資本主義』。落合陽一さんの計算機自然のエコシステム『デジタルネイチャー』、そして本日会場にもお越しいただいている鈴木健さんの境界が曖昧に変わる『滑らかな社会』、そして広井良典さんの持続可能なケアの豊かさの定常型社会。これら未来コンセプトはSINIC理論が示す未来と力強く共振して、増幅されていくはずと考えております。そして未来を作るフロンティアの方々と共創し、実践への動きを大きくしていきたい。私たちが日本で立ち上げた智の共創の場である「比叡山未来会議」や「らせんの会」、未来創造を実践する経営のあり方・手法を開発していく「SINIC経営コンソーシアム」、そして具体的な社会実装を目指す「SINIC実践コミュニティ」、こういった輪を、波を、世界の動きとつないでいきます。
未来はただ待つだけではなく、私たちの創造の行為そのものと考えています。オムロンも未来の創造者から、ソートリーダーとして、皆さんと共に歩む共創者へと進化してまいります。
最後にこの詩を皆さんに贈ります。
自然社会は「新大陸」
SINIC理論は「羅針盤」
新たな意識・OSは「船」
共に目指すのは「よき祖先」
さあ、一緒にこのSINIC理論を羅針盤に未来への海図を共に創発させ、まだ見ぬ大陸を目指す航海へ今共に出航しましょう。ありがとうございました。

次回の発信は10月29日(水)、タイム誌で「世界のAI分野で最も影響力のある100人」に選ばれたオードリー・タン氏による基調講演「新たな社会OSが起動する未来」の模様をお伝えします。
