We are Shaping the Future! 私たちが手繰り寄せる未来ストーリー
2025年10月10日(金)、大阪・関西万博テーマウィーク「SDGs+Beyondいのち輝く未来社会」の一環として、オムロンは、新・未来創造のキックオフ「2050年コントロールから解放される"自然社会"と人間」を開催します。開催まで1カ月と迫った今、未来創造の"種"を見つけるべく、「FUTURE EDGE PreTALK」と題した企画会議を行いました。世界経済フォーラムYoung Global Leadersに選出された"産業僧"で、"グッド・アンセスター(よき祖先)"となるべく、"長期思考"で未来創造する重要性を説く松本紹圭氏とのPreTALK。その中で、テクノロジー、仏教、アートなど、多彩な切り口から未来創造の片鱗が見えてきました。 まずは動画をチェック!
左から:中間真一、松本紹圭、諏訪正樹(敬称略)
中間: オムロンは、創業以来、未来に必要とされる社会のニーズを先取りし、バックキャストで事業を創出しようとしてきました。進むべき道を指し示す羅針盤として、1970年、ちょうど前回の万博(大阪)の年に、国際未来学会で「SINIC(サイニック)理論」という未来予測理論を発表しました。
中間:あれから、55年。再び大阪の地で万博が開催される今こそ、もう一度SINIC理論で描いてきた未来のその先、「自然社会」以降ってどうなるんだと、皆さんと議論するイベントにしていきたいと考えています。
コントロールについて語る諏訪正樹
諏訪:自然社会、そしてその先の未来を描くうえで、やっぱりキーワードは「コントロール」になると思います。
自然ってノーコントロールかというとそんなことない。むちゃくちゃコントロールしているんですよ。例えば、地球が太陽の温度で平均15℃ぐらいに保たれているのは、「温室効果ガス」があるおかげ。それがなかったら、"-20℃の地球"じゃないですか。
一方で今、人工物のコントロールができた。それが、IoT社会の中で、トップダウン的・中央集権的なコントロールとして支配し始めていますが、自然社会では、(テクノロジーも)自然のコントロールと同じ姿になっていかないといけないと思います。それが、イベントタイトルにある「コントロールからの解放」です。
例えば、病気になったら病院行きますよね。病院に行くというのは、ある意味、中央集権的なんです。病院に行って、トップダウン的に治してもらっていた。だけど、これからは、病気になる前に、オムロンのヘルスケアデバイスとかデータビジネスで、「あなた脳梗塞になりますよ」と予測でわかる。すると、食生活を改善したり・運動したり・薬を飲んだりして、「予防医療」で"病気にならない"。要するに病院に行かないようになる。まさにこれって分散的・自己組織的になっていくということです。電気もそうですよね。発電所でつくって、それを丁寧に持ってきていたのが、自分の電気自動車や太陽電池で得たエネルギーを使い回すようになってきた。これもまさにコントロールの分散的 自己組織化の事例です。私は製造業全体が同じようになっていくと見ています。
中間:自己組織化するマニファクチャリング、これはすごいですね。おっしゃっていただいたように、「自然社会の在り方とは」というところからしっかりと議論していきたいですね。
西洋の人間中心主義と東洋思想・仏教について語る松本紹圭
松本:最近よく見かける言葉は、「ポスト・アンソロポセン(ポスト人新世)」。つまり、人間の活動が自然社会に及ぼす影響が大きくなり過ぎた時代のことです。それをどうやって乗り越えていくのか。「ヒューマニティー」は、これまで西洋社会で、"善きもの"として捉えられてきました。「人間が繁栄していく」 それは大切なことなのだけれども、それって人間だけを見ていても無理なんじゃないかと感じています。
左から:中間真一、松本紹圭
松本:映画には、いろんな映画がありますよね。ヒューマンドラマ、家族もの、恋愛もの、戦争ものとか。このことから見えてくるのは、「人間は、悲喜こもごも"ドラマ"を生んでしまう生き物である」ということです。そういうちょっとややこしい厄介な特徴を持った人間が、その特徴を持ちながら乗り越えていって仏陀になっていく。そういう道筋が"成る"・"仏陀"と書いて「成仏」なんです。ポスト・アンソロポセンを考えるにあたっては、ここに何か、ヒントがあるんじゃないかと考えています。
中間:面白いですね。こういった視点をいただいて、当日も議論できたら、未来創造のいいヒントになりそうです。
中間:今回の万博テーマウィークイベントでは、素晴らしい皆さんに登壇していただきます。1人はオードリー・タンさん。
オードリー・タン
タイム誌「世界のAI分野で最も影響力のある100人」
(2023年選出)
幼少期から自己教育を重視し、フリー&オープンソースソフトウェア界で著名。g0v運動や参加型民主主義プラットフォームの開発を通じて市民技術を推進。2023年にTIME誌「AIにおける最も影響力のある人々(TIME100)」に選出。
参考:https://www.sbbit.jp/article/cont1/90953
松本:オードリーさんは思想家でもありますけど、それをどうやって社会に実装していくかをすごく考えて、行動もしていらっしゃる。(スピーカーとして)すごくいいと思いますね。
諏訪:かつ、それが夢物語じゃなくて、確実に社会に実装されるということを賞味期限に間に合うように出すためには、テクノロジーをどういう形にしないといけないか見極めが必要ですけど、オードリーさんはその見極めが抜群ですよね。お話できるのが楽しみです。
中間:コンピュータサイエンティストの牛久さんにも登壇いただきます。牛久さんには、どんな視点で語っていただきましょうか。
牛久 祥孝
オムロンサイニックエックス株式会社
リサーチバイスプレジデント
2014年3月に東京大学情報理工学系研究科博士課程を修了し、同年4月にNTTコミュニケーション科学基礎研究所研究員に着任。2016年に東京大学原田・牛久研究室講師、2018年10月にオムロン サイニックエックス株式会社プリンシパルインベスティゲーター、2024年より同社リサーチバイスプレジデントに就任。株式会社Ridge-i Chief Research Officer、合同会社ナインブルズ代表、株式会社NexaScience代表取締役も兼務している。
諏訪:牛久さんはAI研究のスペシャリストです。初めて人類じゃない知性としてAIが出てきた今の時代、AIとどう付き合っていくべきか。歴史上初めてのタイミングという観点でお話をできるなと思っています。
中間:紹圭さんは、サイエンティストである牛久さんに対してはどんなアプローチでお話されますか?
松本:今までサイエンス自体、客観性、再現可能性とか言っても、人間の中での目線というのが強かったのではと思います。ヒューマニティーの見直しが迫られている中、サイエンス自体のあり方が変わっていくのかなと思っていて。そのあたりのお話をできるといいなと、期待しています。
中間:もう1人は 市原えつこさん。メディアアーティストです。
市原 えつこ
美術家/大阪・関西万博 日本館基本構想クリエイター
東京藝術大学大学院を首席で修了後、美術家として活動。日本文化・習慣・信仰を独自の視点で読み解き、テクノロジーを用いた新しい切り口の作品を制作。文化庁メディア芸術祭優秀賞およびアルスエレクトロニカ栄誉賞を受賞し、2025年に開催される大阪・関西万博「日本館基本構想事業」のクリエイターを務めている。
中間:今回のイベントのテーマはSINIC理論で描いていたその先の未来を語る、というものですが、SINIC理論のこれまでとこれからは、結構、非連続なところがあると思っています。理屈で言ってもなかなか変化しない中で、アートというのはそれを突き抜けていく力を持っています。1970年の万博(大阪)で、丹下健三さんのお祭り広場の大屋根に穴を開けて、岡本太郎さんが太陽の塔を貫いた、あの感じを市原さんには出していただきたいなと。
諏訪:その非連続の話、「クレイジー」がそれを越えるポイントになると私も感じていました。社会にクレイジーを入れたらまずいですが、アートはそれを表出することができる。
中間:そう!アートはそれを許されるんですよね。
諏訪:だから、市原さんに、僕はよく「狂気の一歩手前で、よく止めてますね」と言うんですよ。非連続を超えた先では「クレイジー」ではなくなるんですけどね。
中間:テクノロジー、仏教、アート。様々な観点の掛け合わせで未来創造のヒントが見つかる。そんなイベントにしていきましょう。
松本:この創業記念館に来てみてみて、ようやく「なるほど」と腑に落ちました。
SINIC理論は、オムロンの創業者 立石一真さん(達)から生まれたもの。立石一真さんというフューチャリストは、未来を見通すだけじゃなくて、見通したうえで、それに合わせて、どうやって事業を起こし、社会をつくっていくのか、社会実装を常に考えてきた。だから世に先駆けて(自動改札機を活用した無人駅システムなどのソリューションを生み出し)、技術力で、社会を変えることができたのだと思います。そこの部分を私はもっと本気でお手伝いしたい。本当に「実装」というのが大事。
中間:ありがとうございます。先ほどのオードリーさんの話にも通じる話ですよね。
万博テーマウィークイベントへの想いを語る中間真一
中間:今回のイベントは、単なる綺麗な"打ち上げ花火"という意味で開催するのではありません。
未来社会のデザインをキックオフする"号砲"にしたいと考えています。
奇しくも、僕らの背中には 立石一真さんの胸像があって、ずっと見られている。
元祖フューチャリストの視線を受けながら、3人のフューチャリストがこの企画会議で生まれたわけなので...
さらに、フューチャリストを増やして、「実装」を目指していきましょう。