AI技術で皮膚の状態を正確に診断し、健康肌の維持に貢献する

近年、人工知能(AI)の急速な発展により、スキンケアに関する技術革新が進んでいます。健康な肌を維持することは重要なことである一方で、環境や、生活習慣、健康状態などさまざまな影響を受けるため、その状態を正確に把握し適切なケアをすることは容易ではありません。そこでオムロンは、中国の大手製薬会社 ユンナン・バイヤオ・グループ(以降、ユンナン・バイヤオ)と共同で、AI技術により皮膚のさまざまな状態を正確に分析し、個々人にあった効果的な肌ケアの手法を提案する肌診断システムの開発に挑みました。

 

AIで皮膚症状を診断するシステム「MIS-UNIQ」

2021年11月18日、上海で開催されたユンナン・バイヤオ主催の「東アジア 肌健康研究学会(East Asia Skin Health Research Center Seminar)」でオムロンとユンナン・バイヤオが共同開発した、AI技術による皮膚診断システム「MIS-UNIQ」がリリースされました。
MIS-UNIQシステムは、撮影したユーザーの皮膚画像を分析し、専門医が開発した分析モデルに基づいて86種類の皮膚症状を特定することで肌の状態を診断するものです。まず、ユーザー1人につき3つの異なる角度から15枚の写真を撮影し、AIアルゴリズムでその画像データを処理することで皮膚症状を特定します。そして、その情報に基づき「フェイスマップ」と分析結果の報告書を作成します。フェイスマップとは、高精度の画像診断により、赤み、シミ、油分のある部分を正確に示したもので、診断後に皮膚の手入れや治療の計画を立てるうえで重要な指標となるものです。

328_2.jpg「MIS-UNIQ」

 

開発の壁:新しいアルゴリズムの開発

システム開発の第一歩は、正確な皮膚の画像データを取得することでした。そのためには、カメラの画素と光源が重要になります。オムロンのソフトウェア開発担当チームは皮下深部を正確に写せる有効画素数3230万画素の解像度の高画質カメラを搭載。並行して、R&Dチームの方では多様な波長の光源を生成することで、皮下深部の状態まで明瞭かつ正確な画像撮影を可能にしました。

つづいて、オムロンの開発チームはフェイスマップの生成アルゴリズムの開発に着手しました。ソフトウェア開発のソリューション部門を統括するWang Dongは当時を振り返り、このアルゴリズム開発がプロジェクト最大の壁だったと言います。瞬きや笑みのような微妙な表情の変化に影響されずに、正確な画像診断をすることは簡単なことではありませんでした。そこでチームは、同一人物の異なる表情の写真を含む、異なる年齢、性別、出身地の1000人超の画像サンプルを集めました。そして、何度もテスティングを繰り返しアルゴリズムを進化させていくことで、フェイスマップの生成アルゴリズム開発に成功したのです。

328_3.jpg「MIS UNIQ」の横に立つDong Wong

 

未来に広がる可能性

開発チームの挑戦に終わりはありません。今後は、いつでもどこでも手軽に高精度の肌診断ができる未来に向けて、家庭用の「MIS-UNIQ」システム提供を目指し研究開発を継続しています。アルゴリズム開発担当 Zu-Biao Fuは、次のように語っています。「最初のころは、15枚の画像を撮るのに5分くらいかかっていましたが、今では、アルゴリズムや機器の性能、撮影プロセスの改善によって1分半まで短縮され、ユーザーエクスペリエンスが大きく改善されました。」 将来的には、オムロンの環境センサーと皮膚管理デバイスを組み合わせることで、環境に関する情報と肌診断データに基づく包括的な皮膚管理ソリューションを提供する可能性についても、検討を始めています。オムロンはこれからも、そのコアとなる「センシング&コントロール+Think」技術により、人々の健康なより良い生活に貢献するイノベーション開発に挑戦し続けます。

328_4.jpgオムロン開発チームメンバーのZubiao Fu