女性活躍推進がうたわれて久しい日本ですが、オムロンでは性別や国籍、年齢といった属性の多様化ではなく、様々な価値観や考え方を有した多様な“人財”が、その個性や能力を発揮できる企業を目指しています。
その上で、オムロンでも女性管理職の割合がまだまだ低いという課題に取り組むため、女性活躍促進を目標に掲げた女性活躍推進専用のサイトを、2023年6月にオープンしました。
次のステップとして7月29日(土)に開催されたのは、女性活躍促進をテーマに、オムロンで活躍する女性管理職が生の声をお届けするオンラインイベント「―女性の管理職キャリアをホンネで語るー私の等身大のキャリアとマネジメントの向き合い方」。オムロンのダイバーシティ&インクルージョンにかける想いや、パネルディスカッション、女性管理職が自らの体験を通して率直に答える質疑応答の時間など、約90分のプログラムには、120名もの女性たちから申し込みをいただきました。当日の様子をまとめてお伝えします。
※本記事に記載の情報はすべて2023年7月29日時点の情報です。
SPEAKER登壇者
Nさん
グローバル人財総務本部 企画室ダイバーシティ&インクルージョン推進課
Kさん
デバイス&モジュールソリューションズカンパニー事業統括本部 汎用商品事業部マーケティング部
荒尾千春司会
フリーアナウンサー/株式会社チェンジ・アップ法人代表取締役/東海大学教授
登壇したのは、オムロングローバル人財総務本部 企画室ダイバーシティ&インクルージョン推進課のNさん、デバイス&モジュールソリューションズカンパニー事業統括本部 汎用商品事業部マーケティング部のKさん。司会にはフリーアナウンサーの荒尾千春さんをお迎えしました。荒尾さんは、新卒でオムロンのグループ企業で役員秘書を務めた経験があり、現在は人的資源管理や女性の労働について研究する東海大学教授でもあります。
AGENDA当日のアジェンダ
- オムロンについて
- オムロンのダイバーシティ&インクルージョンへの思い
- パネルディスカッション
- 質疑応答
誰も正解がわからないところへ船出するからこそ
ダイバーシティ&インクルージョンが重要
まずはオムロンGHR Nさんより、オムロン、またオムロンのダイバーシティ&インクルージョンについての紹介がありました。「われわれの働きで われわれの生活を向上し よりよい社会をつくりましょう」という企業理念が、世界に160あるグループ会社で働く28,000人もの社員たちを1つにまとめています、とNさん。
またオムロンが掲げる長期ビジョン「Shaping the Future 2030」に触れ、オムロンが捉える社会的課題の解決に向けて、「誰も正解がわからないところへ船出しようとしているからこそ、企業理念にある『よりよい社会づくり』を志し、スペシャリティを備える多様な人財が集い、一人ひとりが主体性を持って能力を発揮する集団であり続けることが大切になってきます。そのためにダイバーシティ&インクルージョンを推進しているのです」と語りました。
現在、国内のオムロングループで活躍する女性の比率は、係長職で10.9%、管理職で8.7%、役員ともなると数%。Nさんは「これで女性が活躍していると言えるの? と思われるかもしれませんが」と前置きし、それでも2012年から2023年の間に6倍以上増えていることや、女性活躍に向けた様々な取り組みの紹介をしました。
チームのメンバーそれぞれの強みや弱みを
支え合い、活かすのが管理職の面白さ
GHR Nさん、DMS Kさん、そしてフリーアナウンサーの荒尾千春さんが司会となって展開されるパネルディスカッションでは、お二人が管理職になった少しユニークなきっかけからお話が始まりました。
荒尾 Nさんは、管理職になろうという時に、躊躇なく、準備万端で挑まれたんですか?
Nさん 準備万端だったかと聞かれると実はそんなことなかったのですが、躊躇もなかったんです。前職で、上司であるマネージャーが、管理職の大変さをそんなに見せなかったので、「私にもできそうだな」と思わせてくれたことに感謝しています。
荒尾 良いロールモデルがいらっしゃったんですね。Kさんは、産休・育休から復帰されたと同時に課長職から部長職に昇格されました。一般的な会社ではあり得ないような異例の人事だと思うのですが。
Kさん 部長への昇格はミラクル人事だと思っています(笑)。
職種としては長く経験しており、管理職を目指していたわけではないのですが、課長になってみて初めて「なるほど、これが管理職の仕事か」と思うことが多かったですね。
荒尾 実際に管理職になられて、どんな風に感じていらっしゃいますか?
Nさん 最初の一年目は周りの人がみんな自分より優秀に見えて、ここにいていいのかなと悩みました。もちろん本を読み漁っていろんな勉強をしましたが、そのうち付け焼き刃では無理だなと気付き、ある日メンバーに伝えたんです。「私はみんなのリーダーとして来ましたが、みんなの助けがないと、私一人ではできません。だから助けてください、一緒にやってください」と。
そんな風に心を開いたことがきっかけで、Nさんとメンバーの間で認識や感覚のズレがあったことが発覚し、「私たちはみんなでやっていくチームが作りたいんだね」という共通認識ができた、とNさんは振り返りました。
荒尾 最初からできたわけではない、ということですね。管理職になって成長できることもあると。Kさんはいかがですか?
Kさん 私も最初は一年先輩の方と自分を比べてしまって、劣等感に苛まれていました。ですが、組織の作り方や人材育成について、その先輩と自分のやり方が違う部分をとことん考え、自分はどうして行きたいかに集中して乗り越えました。
荒尾 では、やりがいはどんなところに感じますか?
Kさん 自分一人で取り組むよりも、チームだと同時並行で多数のことができますし、目標に向かってチームとして目指し、それぞれの強みも弱みも支え合いながら、活かしながらやるというのは、組織の醍醐味だと思います。
Nさん 本当にそうですね。私のモットーは「どうせだったら楽しもう」ですが、私だけでなく、チームのメンバーにも楽しんでほしいですし、楽しめるチームを作れるのは、リーダーとしてチームを預けてもらっているからこそできること。リーダーシップについても、いろんな方法がある時代なので、自分を俯瞰しながら「このやり方は違うな」「こうしなくちゃ、と自分で自分を苦しめているな」、と軌道修正しながら進めています。
やり方を間違えていたら、やり直せばいい。
Try & Learnで軽やかに
Kさん 管理職は、一人でどうにかするのではなく、メンバーの強みと弱みを掛け合わせたり、発揮してもらえるよう場を設定してサポートする役割だと思っています。私自身も、毎週上司に面談の時間をいただいているので、そこで話を聞いてもらいます。決めたことは実行しますが、もし間違えていたらやり直せばいいのです。
Nさん 最終的に決めなきゃいけないことはもちろん決めますが、それは私がエライからではなく、単に決める係だから(笑)。早く決めれば、戻る時間が稼げると思っています。お話ししたように、正解のないことに取り組んでいるので、じっくり考えても不正解なこともある。それだったら、今ある材料で考えて進める方がいい。Try & Learnですね。
仕事とプライベートのバランスは
「自分にしかできない」と思わないことが鍵
Kさん 仕事も育児も、緊急事態が起こります。そんな時に子育てと仕事の両立って難しくなると思うんです。なので普段から、選択肢をできるだけ用意することを心がけています。私だけのことではなく、メンバーのどなたが抜けても進められるというシミュレーションや、コミュニケーションを大切にし、プライベートでも子どものお迎えが急遽行けなくなった場合は誰にお願いするのか、時にはアウトソースや時短の家電などを活用してみるなど、様々な選択肢の事前準備が大切です。「自分でなければ子どものことができない、この仕事ができない」と思っていると両立って本当に成り立ちません。
荒尾 助けてくれる繋がりを確保しておくのは大事ですね。
Nさん 私は趣味でチェロをしているんですが、練習が毎週火曜日。だから火曜日はチェロを背負って出社します(笑)。メンバーには「火曜日の夜は何があっても定時で一旦出ます。ミーティングも入れないでください」とお願いして、代わりに翌朝早めに出社するなどして調整しています。
Kさん 1時間単位で取れる休みや半日休暇、フレックスタイムなど様々な制度が用意されているので、例えばお子さんの習い事の送迎で「ちょっと抜けます」という方もいますし、「家族の通院に付き添います」という方も。男女問わず、いろんな方がいろんな理由で制度を活用されています。
Nさん コアタイムがないフレックス制を導入していますので、朝5時から夜の10時の間で1時間でも働けばその日は就業したことになるんです。私たちも柔軟に取っていますし「うちのチームは制度をどんどん活用していこう」と言えるのも、管理職ならではかなと思います。
自分の築き方でキャリアを積める環境です。
仕事が合わないと感じても、自分がダメなわけではない
荒尾 今後のキャリアについて考えておられることはありますか?
Nさん キャリアの築き方って上に登っていくタイプと、その時に応じて移っていく川下りタイプがあると思うんです。私は典型的な川下りタイプ。その時々のお誘いや出会いを大事にしてきましたので、「ここを目指すぞ」というのはありませんが、次にチャンスが来たときに、飛び移れる体力を作っておかなくちゃいけないと思っていて、自分が得意なことはなんだろう、楽しいと思うことはなんだろう、「あの人と仕事をしたい」と思ってもらえるのはどんな自分だろう、と常に意識しています。
Kさん 今までのやり方がそうなんですが、目の前や周辺のことをやることで、次に進むべき道が見えてくるのかなと思っています。今の職種は自分に合っていると思いますし、まだ一年しか経っていないので、やるべきことをやっていきたいですね。
Nさん オムロンは本当に多種多様な職種があるので、管理職も手を挙げて異動できる。入社してから「あんな仕事があるんだ」と興味を持って異動する人もいて、いろんなバックグラウンドの人が混じり合っていく強みや面白さが生まれています。例えば「この仕事合わなかった」と思っても、その人がダメということではなく、そこに合わなかったというだけです。
海外出張も育休体制も
自分はこうしたい、と声に出して
最後は、参加者からのリアルな疑問にパネリストたちがお答えする、質疑応答の時間です。
- 管理職の育休の体制について教えてください
Kさん 私の場合は、産前8週で取得し、子どもが1歳1ヶ月で復帰しましたが、最長は2年取ることができ、一般職も管理職もそこは変わりません。
Nさん 時短勤務はお子さんが中学校卒業まで取ることができます。管理職も取れるのかと思われるでしょうが、私の上司も時短勤務ですよ。
- 女性社員の海外拠点の活躍は多いですか?
-
Nさん 海外の女性社員比率は30%に迫るところもあり、日本国内と比べると多いですが、まだまだ伸び代はあると思っています。
Kさん 私はマーケティング担当として中国に行きましたが、例えば私の所属している電子部品事業部では、管理職としてヨーロッパや中国に行かれた方もいらっしゃいますし、営業企画で今、アメリカに行かれている方もいます。徐々に増えていると思いますが、自ら行きたいという意思表示が大事です。
- 30代は出産〜子育てと昇格の時期が重なることが多いと思います。マミートラックに陥らず、キャリアを築いていくためのアドバイスと、取り組みはありますか?
-
Nさん これは弊社に取って大きな課題。今、過剰な配慮と余計な遠慮を無くしていこうと社内で動いています。例えば、Kさんが先ほどおっしゃったように、様々なリソースを使って、自分で動きやすい環境を整えている方は結構いらっしゃる。でも会社が勝手に「あの人出産されたから、あまり出張を入れないようにしようか」と勝手に決めてしまうのは、過剰な配慮ですよね。優しい気持ちがマミートラックに追いやってしまうこともあるので、「まず本人に聞きましょう」ということです。
取り組みとしては、全社で人権研修を行なっています。例えばケーススタディとして男女どちらに出張をお願いするかという題で、上司は女性には家庭があるからと男性に行かせようとした。でも実は男性の方が家庭に問題があり、出張するのは難しかった。そういった場合どうするのがよかったのかと考えたり、ディスカッションなどを行なったりしています。荒尾 アンコンシャスバイアス、無意識の偏見というものがどうしてもありますが、性別に関係なく、どういうキャリアを積みたいかという一人ひとりの声に耳を傾けてくれる会社ということですね。
Kさん 一番不安なのは、休職から復帰する時。自分のポジションもなくなっていますし、どうなるんだろうと思っていたら、私の場合は想定以上のポジションをいただきました。もし上司が配慮して、そこまでチャレンジングではないポジションを与えていたとしたら、私はそこがチャレンジの頂点になっていたと思います。半年前くらいに他社から転職してきた方にはお子さんがお二人いますが、海外出張に行ってほしい時があり、ご本人に聞きました。すると「前職ではそういったチャンスがなかった。ぜひ行ってみたい」というお返事でした。偏見を持たすに、まず本人の意思を聞くことは、私も心掛けています。
荒尾 諦める必要はないんですね。
Kさん 仕事もプライベートも諦めずにやりたいと思う気持ちは大事ですね。二兎を追うものは、二兎を得ると思っています。
Nさん 察してください、は難しいので自分はこうしたい、海外出張は無理でも日帰り出張だったら行けるなど、どんどん伝えて欲しいですね。
- どんな人に応募して欲しいですか?
-
Kさん 一緒にチャレンジできる仲間が増えたら本当に嬉しいなと思っていますので、チャレンジ精神のある方、お待ちしています。
Nさん 私も切実に仲間が欲しい。まだまだ女性の管理職は少ないのが事実なんですが、それはチャンスで、個人として認識してもらえるので、そこを利用して楽しめる人、いろんなバックグラウンドを持っている人に来ていただきたいですね。
オムロンはキャリアの中で初の大企業・初の管理職として、「できない/わからないことだらけ...」という状態からのスタートだったが、できない自分をさらけ出し、対話をしていくことが、自分のマネジメントスタイルと思うようになる。
入社以来、商品事業部にて商品企画マーケティング業務に従事。途中2015年~2017年は中国上海駐在も経験している。
第一子出産、産休・育休を経て昨年秋に復帰。同時に課長から部長へ昇進し、現在は18名のメンバーと共に、子育てと仕事に日々奔走中。