We are Shaping the Future! 私たちが手繰り寄せる未来ストーリー
~サステナブルなGX製造イノベーションの追求により515トンのCO2を削減~
気候変動の脅威が世界中で急速に高まる一方、CO2を排出しない社会の実現は現実的ではありません。そのような中、世界中でCO2排出量の削減や、再生可能エネルギーの利用促進、そして革新的な技術によって、よりサステナブルで「グリーン」な未来を目指す機運が高まっています。
グリーントランスフォーメーションの「グリーン」は、環境に優しい、持続可能、エコロジーに関連することを意味します。GX(グリーントランスフォーメーション)は持続可能な社会の実現に向けて再生可能エネルギーの使用、省エネ、リサイクルなどを進めることで、経済や社会のさまざまな分野で環境負荷を低減し、気候変動に対応するための包括的な取り組みを指します。
この考えは国境を越え、「環境に影響を与えるすべての行動を見直すことで、これからの世代のために地球を守る」という共通認識の下、個人、団体、企業、各国政府を一つにまとめています。その中でも、社会や環境を形作る上で大きな役割を果たしているのは企業です。
持続可能な活動を推進し、環境に配慮した取り組みを優先的に導入することによって、企業はCO2排出量を大幅に削減でき、波及効果を広範囲に生み出すことができます。例えば、企業の社会的責任(CSR)、人事施策の改定、あるいは環境に配慮した部材を調達する「グリーン調達」「グリーン購入」なども、その一環です。
参考)環境省 『グリーン調達推進ガイドライン(暫定版)』
「グリーン」な部品製造とは、過去からの生産方法を刷新し、持続可能な製造手法を採用して廃棄物の発生を最小限に抑える製造アプローチを指します。グリーン調達・グリーン購入を自らの会社で生み出すオムロン独自の取り組みで、これは産業製造プロセスの概念と実行方法におけるパラダイムシフトを具現化したものです。その核には、地球環境に負荷をかけるのではなく、環境と調和するモノづくりを確立する、という理念があります。
こうした考えは、カーボンニュートラルの実現をゴールの一つに掲げるオムロンの長期ビジョン「Shaping The Future 2030(SF2030)」にも一致します。「グリーン」な部品製造が環境問題に対してポジティブな影響を与えることを、オムロンがマレーシアで展開する生産拠点の一つ、OMRON Malaysia Sdn. Bhd.(以下、「OMB」)の例で紹介します。
OMBはサステナビリティへの取り組みを積極的に推進しており、GXを通してCO2排出量の削減を目指しています。生産拠点として、メンバーたち自身が環境に負う責任の重さを理解し、生産工程におけるCO2排出削減やエネルギー効率の向上など、環境負荷の軽減に貢献する取り組みを推進することで、より持続可能な未来に向けて献身的な努力を続けています。
OMBは年間515トンのCO2に成功しました。これはOMBが目標とした500トンを上回るもので、複数の革新的な取り組みを実行することによって実現しました。
OMBの取り組みはプラスチック廃棄物を重点的に削減することから始まりました。その手法は、成形部品の生産プロセスを大幅に改良すると共に、使用済みの材料や製品を自動的に分別し、再利用可能な部品を取り出してリサイクルを行うシステム(以下、「自動リサイクルシステム」)を採用する、というものでした。担当チームはまず成形プロセスにおいて、ホットランナーシステム*1の改良により、部品を成形する際に発生するプラスチック廃棄物を削減するとともに設計構造を改善し、エネルギーの消費を抑えつつ再生材の活用を可能にしました。また、自動リサイクルシステムの採用により、成形樹脂の再生化率を向上させることで、プラスチック廃棄物を151トン削減するという素晴らしい成果を収めることができました。
*1 ホットランナーシステム: プラスチック成形の際に使用される装置で、金型内のプラスチックを溶かし、成形するための一連の機構。通常の成形方法では、プラスチックを型に流す際に廃棄の対象になる余計な成形部分が発生するが、ホットランナーシステムでは、金型内でプラスチックを流す経路部分(ランナー)を熱し、溶かしたプラスチックを冷めにくくすることができる。これにより、廃棄の対象になる余計な成形部分を削減でき廃棄物量を減らすことができる。
二つ目のイノベーションは揮発性有機化合物(VOC)の削減を目指したものでした。メンバーは、プレス部品の洗浄工程において、これまでのVOCを用いた洗浄からエアブロー洗浄*2に変更する取り組みを始めました。グローバルにおけるサプライチェーンの混乱やタイトな設定スケジュールなど、多くの課題に直面しましたが、6カ月の期間でエアブロー洗浄ユニット三台を社内製造、設置し、試験に成功しました。
こうした変革を実現するには、技術的な課題を克服するだけでなく、未知の領域に挑む必要がありますが、その過程で、経験不足により承認手順が長引くことがありました。しかし、メンバーの熱意と努力が実を結び、2022年度には717ℓの化学物質(CO2換算で1.85トン)の削減に成功しました。
OMBは今後もビジョンであるグリーンな未来の実現に貢献することで、環境におけるサステナビリティを追求する取り組みを続けていきます。
*2 エアブロー洗浄: 水や化学薬品を使わず、空気を使って物体の表面から汚れや微粒子を取り除く方法。
CO2排出量削減に向けた取り組みには、さまざまな障害が立ちはだかりました。特に、世界規模のパンデミック の影響は深刻でした。特に影響の大きかったのが機械部品の調達で、リードタイムは1年にも及びました。
「この問題に対して、私たちは細部にまでこだわり、戦略を策定しました。また、密な社内コミュニケーションで、入手可能な部品を特定し、適切な同等品での部品の置き換えを行いました。サプライチェーンが混乱する中、期限内にプロジェクトのタスクを遂行するためには、このような柔軟性と機転が不可欠でした。」(OMB部品工場部長、Kim Fai Yapさん)
また、そもそも本社発の「VOC削減」というテーマは、当時、この分野における技術的知見を持っていなかったマレーシアの生産チームにとっては、一種の試練とも言えるものでした。しかし、複数の部門から集まった多様なメンバーが独自のスキルを提供しあう、部門横断型のユニットが組織されました。これにより、生産的な議論や独創的な思考、徹底した調査、そして入念なデータ分析の礎となる協調戦略が実行されました。
「定期ミーティングで、進捗状況の共有、問題解決、戦略手法の改善の機会を持てたことが、プロジェクトの前進に役立ちました。また、協業によるイノベーションや、技術的な専門知識、問題解決能力、効果的なコミュニケーションといったスキルを通じて、メンバーはこうした課題を克服し、サステナビリティの実現と業務の効率化という目標に向けてさらに一歩前進したのです」(OMB 原材料調達担当、Nur-Atiqah-Izzaty Mohd-Jatさん)
こうした目標達成の後も、地球温暖化の防止に向けたOMBの取り組みは計画策定時から変わることはありません。「2030年度までに1,020トンのCO2を削減する」という大きな目標を設定し、オムロンの長期ビジョン「SF2030」の実現に向けてチャレンジを続けています。
「この大きな目標は、『すべての人にとってより良い世界を』というオムロンのビジョンに、持続可能な環境づくり、そして喫緊の課題である気候変動に積極的に取り組む我々の姿勢を示しています。我々は、地球上の人々の暮らしと社会の持続可能な発展にこれからも貢献し続けていきます。」とKim Faiさんは締めくくりました。
同チームは、アジア・ビジネス・レビュー誌が主催するMalaysia Management Excellence Awards 2023において「Team of the Year - Electronic Manufacturing」を受賞し、その功績が社外からも高く評価されました。またこの優れた取り組みは、オムロン社内イベントであるTOGA*3 2021-2022年APAC大会でも金賞を受賞し、その傑出した献身性とイノベーション力を社内でも示しました。
*3 TOGA:The OMRON Global Awardsの略。オムロンの企業理念実践の物語をグローバル全社で共有し、オムロンの強みの源泉である企業理念を全社員に浸透させ、共感と共鳴の輪の拡大を促す取り組みのこと。
本取り組みを推進したOMBメンバーのTOGA受賞式での写真
本取り組みを推進したOMBメンバー