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コア技術

オムロンのデジタルデザイン・DX技術にせまる 後編
~ 高度なシミュレーション技術で未来社会を創る ~

2023.12.26

デジタル技術を活用してビジネスや経営を変革し社会的課題を解決しようとする取り組みは、コロナ禍で急速に拡大しました。現在アフターコロナに突入し、クラウドやAIの活用により、デジタルとリアルを融合した新たな価値創出がより一層求められるようになっています。

左から松原大典、土屋直樹、船本昭宏

そこでオムロンでは、全社エンジニアリングチェーン(1)のDX化に不可欠なデジタル技術の展開を目指し2022年4月にコーポレートR&D組織である技術・知財本部に「デジタルデザインセンタ」を設立しました。

図1:データ解析×CAE×AIの三位一体の技術開発

オムロンのモノづくりを革新するデジタル技術を全社に展開するために、データ解析×CAE(2)×AIの三位一体(図1)で取り組んでいます。センタをけん引するのは松原大典、そして“データ解析“と”AI“を土屋直樹が、”CAE“を船本昭宏がリードし、課題解決に向けて日々チャレンジしています。

(1) 製造業において、企画構想から始まり、設計、製造準備、製造、アフターサービスまでの一連の業務プロセスのつながり
(2) Computer Aided Engineering:コンピューター上で技術計算やシミュレーション、解析を行うこと

前編「データを武器に、全社エンジニアリングチェーンのDX化に挑戦するオムロンのAI・データ解析技術」では、デジタルデザインセンタが目指すビジョンと実現したい未来、また、それを実現するために必要な要素である“データ解析”と“AI”の取り組みについてご紹介しました。

後編は、三位一体の中で欠かせないもう一つの要素である“CAE”をけん引している船本昭宏に、取り組む意義や目指すビジョン、またオムロンならではの特長を語ってもらいました。

デジタルデザインセンタ 経営基幹職 船本昭宏

1997- オムロンに入社し、技術・知財本部や電子部品事業部である「デバイス&モジュールソリューションズカンパニー」にてデバイスの開発を担当。当時から開発過程においてCAEを自身の手で行う

2009- オムロンの環境事業推進本部へ転属。太陽光発電用パワーコンディショナー、蓄電システムの研究開発に従事

2022- 技術・知財本部 デジタルデザインセンタにおいて、CAE技術により社内業務におけるDX化を推進

デジタルデザインセンタの中で、CAEが果たすべき役割をどのようにお考えですか?

オムロンは2030 年度に向けた長期ビジョン「Shaping the Future 2030(SF2030)」で、「カーボンニュートラルの実現」「デジタル化社会の実現」「健康寿命の延伸」の3つをオムロンが捉えるべき社会的課題と設定しています。これらを確実に解決していくために、“早く“、”良いもの“をお客様に届けられるようにすることが我々デジタルデザインセンタの使命だと捉えています

世の中は、部品が手に入りにくくなったり、ニーズが多様になったりと不確実性が高まっています。その中で技術力を高め、開発生産性を向上し、より良い商品をいち早くお届けしたい、そんな想いで取り組んでいます。

CAEなどのデジタル技術により、コンピューター上での製品の再現が進んできていますが、開発現場では成功体験や経験則を頼りにした設計や試作などを行っていることもまだまだ多くあります。例えば新しい部品の活用を検討する際に、経験則から使えそうと予想して試してみるのですが、結果使えなくて手戻りすることがあります。ここにはまだ我々が目指す姿とはギャップがあると感じています。熟練者の頭にある“この部品を使ったらこんな結果になるんじゃないか”という経験則をデジタルに置き換えてシミュレーションをすれば、実際にモノを作らなくても検証ができ、結果、早くて良い開発ができるのです。

デジタルデザインセンタにおいてデータ解析×CAE×AIの三位一体を掲げられています。それはどういうことでしょうか?

先ほど、部品と熟練者の成功体験や経験則があればシミュレーションができるというようなことを話しましたが、過去のデータを使って成功確度を上げていこう、というのがCAEやデータ解析・AIとの掛け合わせ部分になります。シミュレーションソフトを買って使うだけではなく、そこにデータや考え方をインプットして育てていくのです。オムロンは多種多様なモノづくりを経験し、現場のデータ・ノウハウを多く蓄積しているということが強みです。

オムロンでも、デジタル技術の利活用に対してまだ手探りの部分もあります。取得できる限られたデータをどううまく使いこなすかだけでなく、事前に仮説を立てて現場と協力しながらデータを取得しそのデータをしっかり解析することで、新たな知見を生み出すというというアプローチを取ろうとしています

オムロンならではの強みを活かした取り組みなのですね。
ここからは再びCAEについて具体的にお聞きしていきたいと思います。今までに取り組まれた事例をご紹介いただけますか?

技術・知財本部での1つの事例ですが、パワーエレクトロニクス分野において、電気や磁気のCAE解析を実施しています。さらにCAEの応用事例として最適化技術(3)を導入することで、設計期間を大幅に短縮しました。パワエレ製品は小型化・ローコストが求められており、設計の難易度が高く、時間もかかってしまいます。

従来、成功体験や経験則で複数回行っていた設計・試作を、CAEによる最適化技術を導入することで試作回数を削減したり、代理モデル(4)を活用して最適化を行う実行時間を高速化したことで、開発工数をトータルでを75%向上させることができました。これはまさにハイサイクルマネジメントそのものです。

このような取り組みを導入して確実に結果につなげるためには、現場との意識あわせが不可欠です。デジタル化自体を目的にしてしまうと、どこを目指しているのかわからなくなってしまうので、早くい良い品を出したいという想いのもと、具体的にいつ・どのような成果を出すのかの目標をしっかりすり合わせながら進めています。

(3) 目的の解析を達成するために、さまざまな解析条件の組み合わせの中から最良の組み合わせに辿り着かせること
(4) 数値シミュレーションの代わりにニューラルネットワークなどの機械学習を活用して現象を計算・予測する手法のこと

こういった取り組みが提供できる価値は何でしょうか?

先ほどご紹介した事例のように、開発の生産性への貢献というのが大きいと思います。開発の生産性を向上させるために、新しいシミュレーションの方法を生み出したり、最先端の技術を取り込んだりすることで、我々自身も大きく成長します。そしてそれがまた開発現場の生産性向上につながりスパイラルアップするというサイクルが回ることです。また、必要なデータをしっかり事前に取ってもらうよう現場と連携することで、今後につながるデータもしっかり蓄積し、新たなシミュレーションにも活用することができます。

今後の取り組みの方向性を教えてください。

初めにお伝えしたCAEが果たす役割をしっかり実現していくために、デジタル化された開発プロセスをいち早く確立して全社に展開したいと考えています。そのためには「技術」「ツール」「人財」をそれぞれ強化していくことです。

新しいCAEの技術を開発し、最新のデジタルツールをお届けする。そしてそれを使ってもらいながらスキルアップする。そういったサイクルを全社の開発部門と連携しながら回していきたいです。

オムロンではこれまでも様々な部門でCAEに取り組みながら横連携してきた歴史があり、全社的に人的ネットワークがあるのは特筆すべき強みです。我々DDCが部門と連携して一つの方法を確立し、それを全社に展開していく。こういった作戦でこれからも取り組んでいきます。デジタル化というのは、データを取り続け、それを活用していかないと意味がありません。いかに成功事例を積み重ねて、継続していくかが今後のカギになります。

最後にオムロンのデジタルデザインセンタで働く魅力を教えてください。

オムロンは、社会的課題を解決するために、新しいことに挑戦する風土があります。その中でもさらに技術・知財本部は、常に最先端の技術に触れながら取り組める面白さがあります。そして技術を届ける先として、社内に多様な部署もあります。社会的課題を解決し、社会に貢献しているという実感が持てるのも魅力だと思います。

最後に、デジタルデザインセンタをけん引する松原大典に改めて聞く。
そんな特徴を持つデジタルデザインセンタが、今後実現したい未来は何でしょうか?

松原:全社エンジニアリングチェーンのDX化を伴走することにより、オムロンが社会に対して提供する価値を、スピードアップさせて実現することです。そして次の新しい価値をまた提供するというサイクルを早くまわすことです。そうすることで、オムロンが捉える社会的課題を早期に解決することに貢献していきたいと考えています。

オムロンのデータを最大限に活用したDX化への挑戦、いかがでしたでしょうか。我々の挑戦はこれからも続きます。共感・共鳴いただいた方、ぜひ一緒にチャレンジしてみませんか?

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天気予報と製品開発の接点:「データ同化」から「予測科学」へ
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