「障がいの有無は関係ない!」誰もが生き生きと働ける環境に向けて【前編】

ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)という考えが企業に広がり始めて数年。多様性を尊重するという意識は高まりつつも、実際に企業風土に根付かせることはそう容易ではありません。女性の更なる活躍、育児・介護と仕事の両立、障がい者雇用の推進、シニアの雇用促進、LGBTQへの対応など、様々な多様性への真の理解が必要です。

オムロンでは、企業理念に則り「よりよい社会」を創るため、D&IのDは「"より良い社会づくり"へ挑戦する多様な人たちを惹きつける」、Iは「一人ひとりの情熱と能力を解放し、多様な意見をぶつけ合うことでイノベーションを創造し、成果を分かち合う」と独自に定義しました。2022年から開始した長期ビジョン「Shaping the Future 2030」の中、とりわけ中期経営計画(SF 1st stage)では「D&Iの加速」は最注力で取り組むと宣言しており、社会的課題を解決できる人財の育成、獲得や環境整備を行っています。

「オムロンと言えば、障がい者雇用にいち早く取り組んできた企業」という認識をお持ちの方はどれほどいらっしゃるでしょうか。実は、オムロンの障がい者雇用の歴史は50年以上あり、先駆的な企業として有識者の中では有名な存在なのです。この取り組みの始まりは、社会福祉法人太陽の家の創設者である中村裕医師とオムロンの創業者である立石一真が意気投合したことにあります。障がい者雇用という考え方が当たり前でなかった1972年、「障がい者の経済的自立生活環境を作りたい」と思う中村医師と「障がい者には可能性がある、利益を追求する事業として成り立つ」と判断した立石は、日本初の障がい者福祉工場「オムロン太陽株式会社」を大分県別府市に創業しました。加えて、そのノウハウを生かし、1986年には京都の地に障がい者福祉工場「オムロン京都太陽株式会社」を設立。両社ともに「No Charity, But a Chance」をモットーとして、障がい者を保護するのではなく、一戦力として働く機会を与える場として発展してきました。現在は、障がい者だけではなく、「障がいの有無に関わらず誰もが活躍できる場」を目指して様々な工夫を行い、環境を整えています。

誰もが活躍できる環境づくりにあたっては、障がいの有無に関わらず、エンゲージメントサーベイ「VOICE」による経営層主導の環境改善、人財ポートフォリオマネジメントによる適所適財の実現や人財開発への投資など様々な取り組みを行っています。一方で、障がいのある社員が活躍するには、障がいのある方に対する理解をこれまで以上に深め、よりよい環境を作っていなかければいけません。特に、これから社会に出て働く学生の意見は非常に重要です。そこで、障がいのある学生の進学と就労移行支援を通じてリーダー育成を進める「DO-IT Japan(ドゥーイット・ジャパン)」プロジェクトのプログラム参加を決めました。

「DO-IT Japan」とは、障がいや病気のある子どもたちや若者から、将来の社会的なリーダーを育て、ともにインクルーシブな社会の実現を目指すプロジェクトです。DO-ITは、Diversity, Opportunities, Internetworking, and Technologyの頭文字から名づけられました。東京大学先端科学技術研究センターや共催企業・協力企業との産学連携によって活動が行われています。今回、オムロンは協力企業として参加し、夏季セミナーのプログラム内で「企業の中に、障害のある人の働く場を生み出す人たちは、どんなことを考えて何に取り組んでいるのか?」というテーマで8月9日に講演を行いました。当日は3名の社員が登壇し、人事担当、障がいのある当事者、障がいのある部下を持つ上司、それぞれの視点からお話しました。

693_2.jpg参加学生からの質問タイム(写真:DO-IT Japan提供)

 

「企業の中に、障害のある人の働く場を生み出す人たちは、どんなことを考えて何に取り組んでいるのか?」講演内容

講演タイトル 講演概要 登壇者
オムロンの企業概要と障がい者雇用の歴史 オムロンの企業概要、企業理念、障がい者雇用の歴史を紹介。現在、オムロングループではあらゆる職場で障がい者雇用を推進しており、約270名の障がいのある社員が生き生きと働いていることを伝えた。 オムロン株式会社
グローバル人財総務本部
宮地 功
人に業務をつける"ものづくり"で、誰もが輝く共生社会へ 障がい者雇用の現場では、業務に人をつけるのではなく、「人に業務をつける」という考え方を重要視。ユニバーサルデザインの機械や仕組みを多数整え、補助具も自ら設計、制作するなど、私自身も含めて障がいのある人が働きやすい環境づくりを行っている。オムロン京都太陽株式会社のバーチャル見学ツアーも実施した。 オムロン京都太陽株式会社
CSR課
荒井 裕晃
未来技術「人と機械の高度協調」 インダストリアルオートメーション(制御機器)事業では、「人と機械の高度協調」を目指し、生産性向上とエンゲージメントを両立する仕組みを開発している。昨年度より発達障がいのある異能人財が参画し、チームの一員として大活躍している事例を紹介した。 オムロン株式会社
インダストリアルオートメーションビジネスカンパニー
藤本 慎也

693_3.jpgオムロンの3名の社員が講演(1名はリモート参加)(写真:DO-IT Japan提供)

 

当日、講演を聴講したのは、事前に選抜されたDO-IT Japanスカラーシッププログラム受講中の中学生から大学生・大学院生です。参加者からは、「障がい者社員を評価する仕組みはあるのか」といった具体的な質問が出たため、オムロンからは「オムロンでは、障がいの有無による給与、賞与、昇給など処遇に関する差はありません。仕事内容や昇進・昇格においても障がいの有無による差はないため、障がいがあっても、頑張ればその分良い処遇に反映されます。」と回答しました。

また、「障がい者の採用面接にあたって企業側が知りたい情報はなにか」という質問に対しては、「ご自身の障がいについて、どのようなところに配慮してほしいかをできれば明確に発言していただきたい。申告していただいたことは、可能な限り職場の環境整備やコミュニケーション等において個別配慮するよう努めます。」と返答しました。

693_4.jpgPCを通してバーチャル工場見学に見入る学生たち(写真:DO-IT Japan提供)

 

また、当日モデレーターも務められたDO-IT Japanの代表で東京大学の近藤武夫教授は「オムロンのビジネスの基本的な考え方は社会モデルになっていて、非常に興味深い。社会的課題解決や利潤追求のために、障がい者社員もそうでない社員も活躍の場が与えられており、そのような環境を長年作られ続けているのが素晴らしい。」とコメントされました。

オムロンはこれからも、社員や入社志望の学生たちの声に耳を傾け、障がいの有無に関わらず社員一人ひとりが輝ける職場づくりを行ってまいります。

~後編では、異能人財プロジェクトに関して紹介します~