日本初の障がい者福祉工場が、次の50年の変革をリードする サステナブルな社会づくりに向けた「未来の働き方」とは?

オムロンには、障がいのある人が中心となって働く生産拠点、オムロン太陽オムロン京都太陽があります。日本初の福祉工場としてオムロン太陽が誕生したのは、1972年。以来、50年の長きにわたって障がい者の雇用促進に取り組んできました。オムロン太陽の取り組みが先進的だったのは、障がい者雇用をチャリティーではなく、障がい者が自らの力を活かして働いて自立する機会をつくることにこだわった点です。なぜなら、障がいのある人の働く場所をつくることは、よりよい社会の実現につながると信じていたからです。

今年4月、オムロン太陽は50周年を迎えました。式典当日は、経済、スポーツ、文化振興などの分野でダイバーシティ&インクルージョンをけん引する各界のリーダーを招き、50年先の人々の暮らしや働き方について議論する、「トークセッション」や、現場で働く社員一人ひとりが働くことへの思いや喜び、苦労を説明し、対話する、「特別工場見学」など、社員と有識者による特別プログラムを開催しました。多様な人財が個性や能力を存分に発揮し、イキイキと働く、ものづくり現場の実現を目指すオムロンにおける障がい者雇用の歴史・現在・未来を紹介します。

 

オムロン太陽が歩んできた50年と今

日本初の福祉工場としてオムロン太陽が設立された1970年代当初の日本国内は、障がいのある人が社会に出て活躍することは大変困難な時代でした。そんな中、オムロンの創業者、立石一真は、社会福祉法人太陽の家の創設者で日本パラスポーツの父ともいわれる、中村裕博士の理念に共鳴し、「障がいがあっても健常者と同じように働ける社会こそがよりよい社会である」と考え、オムロン太陽の設立を決心します。創業者の信念は、その後50年間に渡り、オムロングループに脈々と受け継がれています。

オムロン太陽は、障がいの有無に関わらず、誰もが働ける職場・環境をつくり、それぞれの個性・能力が存分に引き出せる職場づくりに取り組んでいます。これまで、製造現場において、工程の自動化や治具を使った作業の効率化など様々な工夫や改善活動をつうじて、人が装置に合わせるのではなく、働く人の能力を引き出すために装置側を改善する、「人を中心に」した現場づくりにこだわってきました。こうした現場起点の改善提案の活動件数は、2011年から10年間で1,361件にのぼり、改善することが日常的となることで、よりよい職場づくりが実現できています。さらに近年は、身体に障がいのある人だけでなく、発達障がいを含む精神障がいや知的障がいのある人の雇用の創出にも取り組んでいます。障がいの内容に関わらず、誰もが利用しやすい「ユニバーサルものづくり(通称:ゆにもの)」推進や、精神・発達障がいのある社員の見守りやコミュニケーション促進に取り組むなど、作業者一人ひとりが働きやすいよう業務の仕方を工夫することで誰もがイキイキと働ける職場づくりにチャレンジしています。オムロン太陽から始まった、「人の可能性を引き出す」職場づくりは、世界中に共感と共鳴の輪を広げ、障がいのある人の就労機会の創出や活躍推進のヒントを求めて、国内外から年間約2,000名に上る政府や自治体・企業の関係者がオムロン太陽の見学に訪れています。

306_4.jpg「部品を何個まで何回数えたか」を、作業をしながらカウントできるツール

「ニコニコボード」でコミュニケーションしやすい現場の雰囲気づくりを行っている

オムロン太陽の「人の可能性を引き出す」業務改善事例はこちら

 

次の50年を見据えた、新たな社会づくりへの挑戦  

今年、設立50周年を迎えたオムロン太陽は、50周年という節目に、様々な人との対話を通じて次なる50年を見据えた未来の働き方を発信する「50周年記念式典 ~UNLOCK THE FUTURE:未来へ拓け~」を開催しました。

式典では、現場で働く社員自らが説明員となり、来場者と対話する「特別工場見学」を開催。普段は人前で話すことに慣れていないメンバーが、働くことへの思いや喜び、苦労など紹介しました。メンバーが自らの言葉で自分たちの取り組みを発信するのは過去50年間で初めての試みでした。また、ダイバーシティ&インクルージョンをけん引する各界のリーダーをゲストスピーカーに招き、50年先の人々の暮らしや働き方について議論するトークセッションを実施。「未来の働き方」をテーマに、誰もが活躍できる次の時代の働き方について白熱した議論が展開されました。

今回の特別工場見学やトークセッションの企画アドバイザーを務めた、アートプロデューサーの栗栖 良依氏は、プロジェクトのきっかけをこのように振り返ります。「今、日本中の企業が手に入れたいノウハウがオムロン太陽には沢山ある。ぜひそれを、日本全国に解き放ってください!今回のプロジェクトは、そんな私自身のお願いから始まりました。もちろん、通常の工場見学からも学びは多いんですが、今回はもっと働いている人にフォーカスした内容にしたらどうかと、提案しました」


式典当日の様子(トークセッション、特別工場見学)

トークセッションでは、元ラグビー日本代表キャプテンで株式会社HiRAKU代表取締役の 廣瀬 俊朗氏が初めてオムロン太陽の工場を見学したときのエピソードを紹介。「片手しか使えない人のために作ったものが、結果両手を使える人にとって作業効率があがっている。イノベーションが溢れている現場をみて衝撃を受けました」 と語っています。

キュレーター/プロデューサーの内田 まほろ氏は、「機械と人が融和して、人の障がいを取り除きながら皆で仕事をするということを50年リードしてきたことを、もっと自慢してほしい。それぞれにノウハウがたくさんあって、例えば3Dデータをオープンにして3Dプリンターで治具を欲しい人に作ってもらうとか、ノウハウを世に共有していってください」と、次の時代に向けたエールの言葉を送りました。オムロン太陽を代表して登壇した、 生産技術グループ 課長 笹原 廣喜氏は改めて今回のプロジェクトをこのように振り返りました。「この数ヶ月、色々と社外の皆さんからアドバイスを頂いて、私たちが持っていないアイデアをたくさんもらいました。現場で頑張る人ってもともと輝いているんですが、それを表に出していただきました。多様性から生まれる様々な可能性を技術と融合して、障がいがある、ないという言葉自体がない、そんな世の中のモデルになりたい」


特別工場見学 「はたらくひと見学」

 

"人"中心の現場づくりで、誰もが輝くことのできる共生社会へ

オムロンの代表取締役社長 CEO 山田は、オムロン太陽が築き上げた歴史について、次のように語っています。「オムロン太陽が、数々の困難を乗り越えることができた、その原動力は、自らの仕事を通じて社会の発展に貢献したいと考えたオムロン太陽の先人たちを含む社員の熱意と情熱にほかならない、私は、そう思っています。どうすれば、人と機械がともに働くことで、人の可能性を広げることができるのか、一人ひとりの強みを活かすことができるのか。その試行錯誤の50年でした。オムロン太陽で働く皆さんが試行錯誤を重ねながら、機械が人に寄り添う柔軟な生産システムを作り上げる挑戦を続けてくれたからこそ現在があると思っています」

オムロングループは、今年4月、新長期ビジョン「Shaping the Future 2030 (SF2030) "人が活きるオートメーション"によって、持続可能な社会・経済システムづくりに貢献する」 を発表。長期ビジョンとして初めて非財務目標を設定し、目標の一つに、「海外28拠点での障がい者雇用の実現と、日本国内の障がい者雇用率3%を継続する」ことを掲げ、この目標達成に向けダイバーシティ&インクルージョンの加速に取り組んでいます。その取り組みのひとつが、中核的な業務である「研究開発・新製品開発の領域」など特定の分野で極めて高い能力を発揮する人財を積極的に採用する「異能人財採用プロジェクト」です。オムロン太陽のチャレンジが、他社の特例子会社設立など、その後多くの企業に広がっていったように、これからもオムロングループは、オムロン太陽が50年培ってきたノウハウをグローバルに発信すると共に、新たなダイバーシティ&インクルージョンの取り組みに挑戦し、よりよい社会づくりをリードしていきます。

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未来の働き方をリードする、オムロン太陽
ダイバーシティ&インクルージョンの「New Chapter」

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