バイオマスプラスチック市場の先導役に製造業のカーボンニュートラルを支援 バイオベースの素材技術で社会に貢献

本記事は、日経BPの許可により日経ビジネス電子版2023年6月23日-7月24日に掲載した広告を転載したものです。
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2050年のカーボンニュートラル実現に向け、脱炭素化は各企業にとって大きな課題となっている。そうした中でオムロンが社会に貢献すべく注力しているのが、植物油脂などを原料とするバイオマスプラスチック搭載製品の開発である。石油由来のプラスチックを置き換えられる水準の製品を開発できれば、脱炭素を推進するうえでインパクトは大きい。まずは同社の主力事業であるFA分野での導入を進め、適用領域を広げていく考えだ。その市場立ち上げについての方針や計画を、オムロン技術開発本部のキーパーソン2人に聞いた。(聞き手は日経BP 総合研究所 主席研究員の河井 保博)

 

技術の進展を待つのではなく、いち早く技術開発に着手

カーボンニュートラルの実現に向け、各企業が様々な取り組みを見せている。その中で、特にハードウエアの製造に携わる企業が注目しているものの一つに、バイオマスプラスチックがある。製造工程や焼却処分の際にはCO2を排出するものの、原材料となる植物の生育過程ではCO2を吸収するからだ。ただ、バイオマスプラスチックに関する研究開発は初期段階。技術は急速に進化しているものの、製品化に必要なすべての技術が出そろっているわけではない。だからこそオムロンは、あえて今の段階で脱炭素への貢献に大きく舵を切り、バイオマスプラスチック開発でグローバルの市場を先導しようと考えている。

 

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オムロン株式会社
インダストリアルオートメーションビジネスカンパニー
技術開発本部長
太田 康裕

―まずは、オムロンの脱炭素への取り組みについて教えてください。

太田 当社は長期ビジョン「SF2030」において、取り組むべき3つの社会的課題を設定しました。「カーボンニュートラルの実現」「デジタル化社会の実現」「健康寿命の延伸」です。中でも、カーボンニュートラルの観点では、省エネや創エネに注力するとともに、国内全76事業所のカーボンゼロ実現に向けて取り組んでいます。また、事業活動におけるエネルギー生産性向上を目指す「EP100」といった国際イニシアティブにも加盟し、脱炭素に向けた施策を推進してきました(図)。こうした活動の一環として、近年はバイオマスプラスチックの技術開発に注力しています。省エネ設計だけでなく、材料からこだわった製品づくりを行い、顧客が使用する製品から排出されるGHG(温室効果ガス)の削減にも取り組んでいきたいと思っています。

702_02.png図 カーボンニュートラル実現に向けたオムロンの取り組み
省エネや創エネによってエネルギー消費を抑えてエネルギー効率を向上させるだけでなく、
エネルギー消費の可視化を通じた生産性向上によって、「エネルギー生産性向上」を目指す

 

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オムロン株式会社
インダストリアルオートメーションビジネスカンパニー
技術開発本部 第2技術部 主査
田中 泰法

―なぜバイオマスプラスチックに着目したのでしょうか。

田中 私たちは常に、世の中のニーズを先取りしたソリューション開発を心がけてきました。地球環境の保全という社会的なニーズについても、この姿勢で向き合っています。植物油脂などの資源を原料とするバイオマスプラスチックは、焼却処分などでCO2を排出する一方で、原料の生育時にはCO2を吸収します。そして、プラスチックの用途は様々なハードウエアに広がるため、市場に浸透すれば脱炭素に大きく貢献できます。こうした背景で、オムロンは以前から着目してきたバイオマスプラスチックの技術開発に着手しました。

―貴社の従来の事業領域から考えると、自社で開発するというのは大きな決断だったのではないかと思います。

田中 バイオマスプラスチックを採用すると、省エネをはじめとするエネルギー効率化とは違った側面から、カーボンニュートラルに直接貢献できます。ここ数年、バイオマスプラスチックの技術は急速な進展を見せていますが、広範な普及を目指すには十分とはいえない部分も残されています。当社の製品に合致する技術を材料メーカーが開発するまで待つという選択肢もあるかもしれませんが、私たちはいち早く技術開発に着手して知見を蓄積し、できるだけ早期にバイオマスプラスチックを用いた製品を提供したいと考えました。

―バイオマスプラスチックの適用先として、どのような製品分野を考えていますか。

太田 まずは、我々の主力事業であるFA分野でスモールスタートして実績を積み重ね、社内外の認知度を高めた上で他分野にも広げていきたいと考えています。例えば、医療分野では衛生の観点から交換頻度が高くライフサイクルの短い製品もあるでしょうから、バイオマスプラスチックの潜在的なニーズは大きいのではないかと思います。ほかにも、様々な分野が考えられるでしょう。

 

石油由来製品と同等品質のバイオマスプラスチックも登場

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日経BP
総合研究所 ソリューションユニット長 主席研究員
河井 保博氏

―バイオマスプラスチック材料を製品に採用する上で、重要なポイントは何でしょうか。

田中 製品の要求特性を理解することです。製品によって設置場所や使い方は異なり、材料の要求特性も異なります。それぞれの要求特性を十分に把握していれば、おのずと適合する材料を見つけられます。ただし、バイオマスプラスチックのレパートリーはそれほど多くありません。限られた中から要求特性を満たす材料を探すのは、容易ではありません。

―技術開発においては、どのような課題を乗り越えてきたのでしょうか。

太田 最もハードルが高いのは難燃性の確保です。FA機器が設置されている工場内は、非常に高温になりますし、場合によっては火気に近い場所もあります。バイオマスプラスチックを筐体に採用した機器からの発火は避けなければなりません。もちろん、重要なのは難燃性だけではなく、要求特性に応じて耐熱性、強度などをバランスよく備えた材料を開発する必要があります。既存製品と同等の品質を確保するため、これまで様々な材料で評価を繰り返してきました。

田中 最近は、石油由来のものと同レベルの品質を持つバイオマスプラスチックも登場しています。優れた特性を持つ材料を、いかに幅広い製品に展開できるようにするかが、技術開発における大きなテーマです。

―化学メーカーなど材料を提供する企業との協力も大事ですね。

田中 脱炭素の実現を一緒に目指すという大きな目標を共有できれば、協力関係はより前向きなものになります。

太田 技術開発の過程で得た知見については、継続的に権利化も進めていきます。当社の知財ビジネスとして、その知見を材料メーカーなどに提供する可能性もあります。材料メーカーとの関係はパートナーであり、場合によってはライバルになることもあるかもしれません。

 

使いこなす技術を磨き、コスト課題の解決策模索にも注力

―オムロンがバイオマスプラスチックの製品化に取り組む意義を、どのようにお考えですか。

太田 当社は様々な事業分野において、エネルギー生産性を高めるソリューションを提供しています。例えば、当社のFA機器を活用して工場のエネルギー効率を高めるとともに、CO2排出量を削減するという形です。一方、バイオマスプラスチックは製品自体を対象に、カーボンニュートラルへの貢献を目指したもの。こうした両面のアプローチによって、私たちはお客様の脱炭素化を一層強力に支援したいと考えています。

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バイオマスプラスチックによる画像センシング機器筐体の試作品。A5サイズの
辞書程度の大きさだが、外見からは通常のプラスチック製品と見分けがつかない

―現状、技術開発はどの程度まで進んでいるのですか。

田中 既にいくつかの試作品を作製し(写真)、技術的には製品化への道筋が見えています。技術開発の面ではかなりの前進があったと実感していますが、お客様への製品提供はこれからという段階です。展開としては、まず当社のFA関連製品に適用していきます。並行して、コスト課題の解決策も模索し、提案していきます。バイオマスプラスチックを採用する場合、材料費が増えることは避けられません。それでも採用できるよう、トータルでコストが増えない使い方を研究し、現場に提案していきます。そして次のステップとしてお客様に提案していきます。

―市場で選ばれるためには、何がポイントになるでしょうか。

田中 カギを握るのは、バイオマスプラスチックの環境価値という、実感できない価値をいかに訴求するかです。市場への働きかけとしては、「マスバランスアプローチ」に注目しています。例えば、バイオマス1、石油由来9の原料を投入した場合、1:9の割合で均等に混ざったプラスチックができあがります。ただ、マスバランスアプローチを用いると、製造した材料の1割だけは「バイオマス100%」と見なすことができる。これは、お客様に環境価値を訴える手段になると思います。

太田 ラインアップの拡充も重要です。バイオマスプラスチックの種類は増えつつあり、それに伴って、バイオマスプラスチックを搭載可能な製品の幅も広がります。この動きを加速したいですね。特にFA機器については単体ではなく、トータルなソリューションとして提供する場合が多い。バイオマスプラスチック搭載製品についても、お客様のニーズに応じてフルラインアップで提供できるようにしたいと考えています。こうした活動を通じて、将来的にはお客様の事業活動、さらには製造業全体のカーボンニュートラルへの取り組みを下支えする役割を担いたいと思っています。