ソーシャルグッドあふれる、社会システムをデザインしよう オムロン ソーシアルソリューションズ 細井俊夫社長 ※2022年12月時点での役職となります。

オムロンは、「企業は社会の公器」であるという考えに基づいた「企業理念」経営のもと、事業を通じて社会価値を創出し、社会の発展に貢献しながら成長してきました。モータリゼーションの進展で交通死亡事故が絶えない1960年代に、世界で初めて「全自動感応信号機」を開発したのはほんの一例。安心・安全に役立つ取り組みをルーツに持ち、太陽光発電のエネルギーマネジメント、モニタリングシステム、決済ソリューションなど、さまざまなソリューションを有する社会システム事業を推進するのがオムロン ソーシアルソリューションズです。気候変動や人口減少など私たちを取り巻く環境が変化し先行きが見通しにくい今、お客様企業や地域の皆様と一緒に未来の課題を解決するパートナーとなって、様々なソリューションを提供しています。オムロンソーシアルソリューションズ社長の細井俊夫氏と同社社員との対談は、笑顔あふれる社会をデザインしようとの強い思いがにじみました。

社会課題に向き合う社の歩み、誇りに

カーボンニュートラル、デジタル社会の実現に挑む

細井 私たちは人々が安心・安全で快適に暮らせる社会をつくることを使命と捉えています。オムロンは1960年代に相次ぎ「世界初」を世に出しました。例えば、64年に京都市内の繁華街に設置された全自動感応信号機。交差点の通過車両数を検出して信号を切り替える画期的な装置です。67年には自動改札機や自動券売機から成る無人駅システムを開発し、通勤・通学の混雑緩和に貢献しました。オムロンブランドが社会にインストールされていることは、社員の誇りでもあります。

オムロンは新長期ビジョン「SF(Shaping the Future)2030」をスタートさせ、「カーボンニュートラルの実現」「デジタル化社会の実現」「健康寿命の延伸」の3つを社会的課題と捉えて、そのうち私たちは前2者に挑戦しています。

吉田 カーボンニュートラルの実現には、やはり再生可能エネルギーを増やす必要があります。その代表の太陽光発電は、当時発電した電力を固定価格ですべて買い取る制度(固定価格買取制度=FIT)もあり、多くの企業が参入し広がりました。新幹線に乗って地方に行く途中、車窓から太陽光発電設備をたくさん見ますが、中には「これ本当に動いているのかな」と感じさせる設備もあります。実際、いろいろな関係者の方に話を聞くと、太陽光発電設備の維持管理が行き届かなかったり故障で困っていたりしている現実があります。気候変動の影響で災害が増えている今、私たちは本気でカーボンニュートラルに取り組まなければいけない。そこを出発点にして、太陽光発電設備の基幹部品であるパワーコンディショナー定額貸出サービス「POWER CONTINUE(パワーコンティニュー)」を業界で初めて考案し、昨年から発電事業者様への提供を始めました。

横田 私は地方課題の解決に貢献したくて、「ソーシアルソリューション=社会課題の解決」を掲げる当社に4年前、転職しました。

333_2.jpg「被災地のフィールドワークが原点です」(横田さん)

私の原点は学生時代の経験にあります。東日本大震災で被災した宮城県南三陸町にフィールドワークに行き、住民が思うように移動できない現実をリアルに見てきました。そこで私がまず着目した地方課題が交通問題でした。ちょうど京都府舞鶴市から地域活性化の相談を受けていたこともあって、同市で昨年、住民同士の送迎と地元のバスやタクシーを組み合わせたMaaS(次世代移動サービス)のアプリ「meemo(ミーモ)」を開発、実証実験を経て今年6月から提供を開始しました。

 

課題起点に異業種対話、共感の輪広げる

共創が新たな価値・サービスを生む

細井 ふたりに共通するのは強い「Will(意思)」と熱い情熱でしょうか。どちらのサービスも多くの関係先を巻き込まないと実現できませんでした。立石一真(オムロン創業者)を一言で表現すれば、ベンチャー精神を持った高い志と熱い情熱を持った人です。そして先を見る目。ふたりもまた、そういうタイプですね。

吉田 国土が狭い日本では、太陽光発電設備を設置できる場所が限られています。そのため新しく発電設備を作ることも重要なのですが、それ以上に設置した発電設備が安定的で効率的に稼働しているかが重要だと考えています。エネルギー業界は商流が複雑で機器メーカーの私たちは発電事業者様と直接お取引することはあまりないのですが、お困りごとは耳に入ってくる。でも発電設備にトラブルを抱えている事業者様から話を聞いても私達では何もできず、悶々(もんもん)とする時期がありました。FITの買い取り価格が下がる中で企業の撤退が増え、問題はいよいよ顕在化しています。カーボンニュートラルの実現には設備の安定的で効率的な稼働が不可欠なので、見て見ぬふりはできませんでした。

333_3.jpg「自分の考えを出して行動すれば状況を変えられます」(吉田さん)

リース会社や施工会社など複数の事業者様と連携して開発した、発電設備の長期安定稼働をサポートするパワーコンティニューは、営業部門の電話が鳴りやまないほどの反響で、その大きさに驚いています。自分の考えを「表」に出して行動すると、状況を変えることができると実感しました。

横田 私も同感です。ミーモは移動したい住民の居場所や目的地を踏まえてバスやタクシー、隙間時間のある住民ドライバーによる送迎のいずれを利用するのが最適かを提示するアプリです。事業者と住民が連携して地域の移動手段を確保するのが目的ですが、最初、地元の住民や事業者の皆さんは私たちの提案に消極的でした。しかし人口が減る地方が持続するには、自助や公助に加えて住民・企業・自治体が助け合う「共助」の仕組みが欠かせません。現地に何度も足を運んで対話を重ねるうちに、地元の事業者の皆さんはそもそも地域のために仕事をしているので「オムロンは自分たちと同じ方向を向いている」と少しずつ理解してくれるようになりました。お互いの未来課題を起点に取り組んだことで共感を広げ、多くの関係者を巻き込むことができました。

細井 0から1を生み出したり1から100に育て上げたりできる人財はそう多くありません。社会が求める人財でもあると思います。

吉田 私は2年間、関係会社に出向していたのですが、まだ不完全だと思ったアイデアであっても勇気を持ってポンと出せば、仲間が集まりいい具合に仕上げることができる。社会課題を解決したい人たちが集まり共感してくれると、専門性を発揮して支援してくれることを経験しました。

横田 良い意味でいろいろたたいてくれる人が社内外に大勢いる。いろんな意見を加えたり揉んだりするうちに、自分だけでは考えられなかったものに昇華していく。その感覚はやみつきになります。

 

「ソーシャルグッド」が活動の基軸

社会の共助プラットフォームをつくる

細井 SF2030では「DESIGN Next Social Structure」を私たちのビジョンに据えました。次の社会システムをデザインしていく、その思いを込めています。強調したいのが「デザイン」です。不確実性の世の中になってお客様の現場からも経営層からも「どうしたらいいのか」という声が届く。これまでならお客様が求めるものを提供、進化させていければご満足いただけましたが、この先はどんな画を描くかが問われている。お客様のインサイダーになってお客様に代わって企画し実行し改善する。そういったソリューションのインサイダー化をしっかりやって、社会システムの持続性につなげていきたいと考えています。

333_4.jpg「社員には知識の幅を広げるよう求めています」(細井さん)

必要なのはプロデュース人財です。創造性は無から生まれないので、社員には知識の幅を広げるよう求めています。それには社内外でたくさん「交差点」を作ることが大切だと思います。

そしてデザインを描くにはパートナーが欠かせません。オムロンだけできれいなデザインを描き切れるわけではありません。様々なパートナーと共創し、その成果が次の共創につながる好循環が生まれるといい。「一緒にやりましょう」と声をかけていただければうれしいのです。

横田 ミーモの実証実験が終わった後、舞鶴市内の区長さんが市長にサービスを続けてほしいと嘆願書を提出しました。住民の声、要望が本格実施につながったのです。そのとき、社会に良いインパクトを与える「ソーシャルグッド」が生み出せたのだと初めて実感が持てました。交通を足がかりに共助のプラットフォームを作る、それぞれの地方の住民や事業者がより活き活きできる社会インフラをデジタルで構築することを目指したいと思います。

吉田 エネルギー業界は今とっても盛り上がっていて、いろいろな方々が参入しています。そうするとカーボンニュートラルという社会課題を解決すると言いながら、自分たちの利益を優先してしまう瞬間があります。共通言語としてソーシャルグッドがあって、そこに立ち返ることが大事だと感じます。

電気というのはこれまで、発電事業者から需要家側に供給されるいわば一方通行のエネルギーでした。それが今は家庭に太陽光発電設備が付き、さらに蓄電池も備わるようになり、需要家からも送り出せるエネルギーになってきました。私たちがお客様としてとらえていた先が協力し合うパートナーに変化しているのです。カーボンニュートラルを実現していくために一緒に何ができるのか。そこを考え取り組みたいと思います。エネルギーの共助関係の仕組みができれば、全員が当事者意識を持ってカーボンニュートラルの実現に向かって進めます。

細井 私たちはSDGs(持続可能な開発目標)の18番目のゴールとして「すべての人々を笑顔に」を設定しています。安心・安全で豊かな社会を作ることとは、わかりやすく表現するなら人々が笑顔になることだと思うからです。

社会に課題は本当に散在していて山積しています。何から実行すべきか断定できるものではありませんが、笑顔になれるなら何でもやりたい。それが私たちの姿勢なのです。

333_5.jpg座談会出席者 プロフィル(右から)

吉田麻美(よしだ・あさみ)氏
エネルギーソリューション事業本部
創発戦略部主査
大学時代から環境問題に関心を持ち続け、エネルギー事業に携わる。太陽光発電設備の基幹部品、パワーコンディショナーの定額貸出サービスなどを開発。多角的な視点で開発に取り組む上で、営業やサービスの関係会社への出向経験が生きていると感じている。

横田美希(よこた・みき)氏
事業開発統轄本部 ソーシャルデザインセンタ
地域創生グループ グループマネージャー
大学時代に東日本大震災の被災地復興支援活動に関わったことから地方の課題解決への貢献を志した。4年前に入社し、京都府舞鶴市との地方都市の課題解決に取り組む包括連携を推進。熊本県の人吉市や宇城市などでも包括連携協定を結び地方創生に取り組んでいる。

※2022年12月7日~2023年3月31日に日経電子版広告特集にて掲載。掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます