We are Shaping the Future! 私たちが手繰り寄せる未来ストーリー
多様でインクルーシブな世界を創造するために
イリノイ州の障がい者コミュニティ「リトルシティ」の事務長 ショーン・ジェファーズ氏は、20年前に受けた一本の電話のことを、今もはっきりと覚えています。その電話が、知的障がいや発達障がいを持つ人々との生き生きとした友情が花開くきっかけとなりました。
オムロンのある役員から掛ってきたその電話は、『リトルシティ』を援助したいと考えているが、どのような方法があるのかを尋ねるものでした。
通常、入居者が豊かな生活を送れるよう企業に寄付をはじめとした支援を求めて電話をかけるのは、施設を運営するジェファーズ氏の方です。しかし、オムロンの米州エリアにおける地域統括会社の拠点が、リトルシティから数分の場所にあったため、厚意の手が差し伸べられたのです。
ジェファーズ氏はその申し出に耳を疑いました。「オムロンは私たちにコンタクトし、何か支援することはないかと積極的に尋ねてきました」と当時を振り返ります。その後、エンジニアから役員まで、ボランティアとしてリトルシティを訪れたオムロンの社員たちは、すぐに入居者たちと親しくなり、後に、彼らを雇用する方法を検討し始めました。
こうした、近隣企業による地域貢献活動は、ジェファーズ氏にとっては珍しいことだったかもしれません。しかしオムロンにとっては、創業者立石一真が掲げた「われわれの働きで われわれの生活を向上し よりよい社会をつくりましょう」という企業理念のもと、長年に渡って培ってきた、地域社会への貢献と包摂(インクルージョン)の考え方に基づいたものでした。
近年では、多くの企業が、企業の社会的責任について言及しています。しかしオムロンは、長年に渡り、先駆的な取り組みやコア技術の社会的価値を実証するために努力を続け、よりよい世界づくりに向けた実績を積み上げてきました。
オムロンは、創業当初から、立石一真氏の先見性あるリーダーシップのもと、イノベーションを通じて社会をよりよくすることを存在意義としてきました。今日、この企業理念に基づく活動は、障がいを持つ人々の自立を支援するロボット工学の研究開発から、急速に高齢化の進む社会のウェルビーイング(幸福、福祉)を促進するオートメーションまで、広範囲にわたっています。
今年4月にスタートしたオムロンの新長期ビジョン「Shaping the Future 2030」(SF2030)では、2030年に向けて、グローバル全体でダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DEI)を推進していくことを経営陣がコミットしています。同社の代表取締役社長 CEO 山田義仁氏は、中期経営計画に具体的な目標を盛り込むと共に、障がい者の事業参画を提唱する世界各国のCEOが共同で設立したイニチアチブ「The Valuable 500」にも賛同しています。
今後10年間のオムロンの経営目標(非財務目標)には、海外28拠点での障がい者雇用の実現と日本国内の障がい者雇用率3%以上、女性管理職比率18%以上、多様な人財の能力活用を目指す研修へのグローバルマネジャーの参加率100%などが含まれます。DEIを加速し社会変革をリードしていくことを経営陣がコミットしているのです。
OMRON Management Center of America, Inc.(OMCA)の社長兼CEO ジェームズ・エバーハート氏はこのように言います。「私たちは、『われわれの働きで われわれの生活を向上し よりよい社会をつくりましょう』というオムロンの社憲の精神のもと、事業をつうじたよりよい社会をづくりを推進しています」
オムロンは何十年にもわたり、世界各地で地域社会への貢献活動を実施してきました。それは、すべての人々に力を与えるというコミットメントの証そのものです。オムロンのリトルシティとの友情は、1970年代の日本における活動に起源があります。
50年前の1972年、「障がい者も社会で活躍できる」という立石一真氏の信念からオムロン太陽株式会社(オムロン太陽)が設立されました。オムロン太陽は、健常者のみならず障がい者をも雇用するために設立された、世界初の工場でした。
創業者の信念が間違っていなかったことは、オムロン太陽が初年度から黒字を達成したことではっきりと証明されました。1965年に整形外科医の中村裕博士が障がい者に安定した職業を提供して自立を促すことを目的に立ち上げた社会福祉法人「太陽の家」が掲げる「No Charity, but a Chance! ~保護より機会を~」というメッセージに賛同し、オムロン太陽を設立したオムロン。その企業姿勢は、当時も今も変わっていません。今年4月に創業50周年を迎えた同社は、障がいのあるメンバーを含む社員全員に支えられ、オムロンのものづくりに欠かせない存在となっています。
こうした歴史から、その後、OMCAは、同社がもつオムロン財団 (the OMRON Foundation) を通じて、リトルシティの入居者がやりがいのある仕事に就けるよう訓練し、障がい者に対する固定観念や思い込みをなくすことを支援すべく、地域の雇用促進センターに資金提供しています。
広く社会に貢献することを重視するエバーハート氏は、地域社会でのボランティア活動を、SF2030における米州エリアの最も重要な非財務目標に定め、社員が勤務時間内にボランティア活動に参加することを奨励しています。
こうした、米州エリアのオムロン社員が熱心に取り組んできたことの一つに、「マークルンド」の入居者のためのオンライン・ボランティア・プログラムが挙げられます。マークルンドは、住居の提供や介護、教育サービスを通じて、重度の障がいを持つ個人の自立を促す非営利団体です。
新型コロナウイルス感染症の流行によって、マークルンドの入居者が不安と孤立に苛まれていた頃、オムロンの社員はグループによる教育セッションをリモートで実施しました。これは入居者にとってもボランティアに取り組む社員にとっても心温まる経験となりました。ラテン系入居者向けのグループは特に盛況で、参加者の多様性がコミュニティの絆を深めました。
マークルンドのコミュニティ統合担当パーソナル・サポート・プロフェッショナル(PSP)であるケイラ・アトキンス氏は次のように振り返ります。「嬉しかったのは、オムロンの皆さんがスペイン語でグループセッションを実施してくれたこと、またスペイン語で読み聞かせをしたり、ラテン文化に親しみを感じる入居者と対話してくれたりしたことです。」「入居者たちはこのグループが大好きになりました。彼らは笑顔でセッションに参加し、笑顔を絶やしませんでした。ほんの小さなことでも入居者の生活をこんなにも大きく変えることができると知っている人は、それほど多くありません」
ボランティア活動を通じて、人生が豊かになるのは、オムロンの社員も同様です。「強い信念を持ってボランティアに参加する人は、周囲により有意義な影響を与えられることがわかりました」とエバーハート氏は言います。「社員に対しては、自分自身の動機付けとなる機会をもっと作ってよいのだよ、と強調したいですね」
トップマネジメントによる動機付けをきっかけに、OMCA傘下のオムロン ブラジルでは、ダイバーシティとインクルージョンの推進をけん引する取り組みが加速しています。
オムロン ブラジルの社長 ウェバーソン・マーティンズ氏は、女性管理職と障がい者雇用に関する自社のグローバル目標を上回ることを目指し、自ら陣頭指揮を執っています。オムロングループ全体でダイバーシティとインクルージョンを推進する中、彼のチームは卓越した成果を達成しました。
「全社のマネジメントチームが、グローバルで女性管理職比率18%を目指すと表明したとき、私は『もっと貢献したいので、目標を高くしてほしい』と希望しました」とマーティンズ氏は言います。現在、オムロン ブラジルの経営陣5名のうち、4名が女性であり、オムロン ブラジル全体の管理職の32%を女性が占めています。
「これは単なるインクルージョンの問題ではありません」とマーティンズ氏は言います。「これはビジネスの問題であり、チームが多様性に富んでいればいるほど、ビジネスはより高い社会的価値を生み出すのです」
こうしたビジョンのもと、オムロン ブラジルは、総務、財務、営業、業務および工場に障がいのある社員を配置しています。同社の工場では、障がいの有無に関わらず、オムロン独自のロボット技術による支援を受けることができます。
マーティンズ氏は次のように述べます。「1年足らず前、当社の全社員に占める障がいのある社員の割合は1%未満でした。私たちはそれを、4%まで引き上げました」
ダイバーシティとインクルージョンに関するオムロンの米州エリアにおける取り組みは、「ソーシャル・デザイン・イノベーター」になるというグループ全体のより大きな使命と合致しています。オムロンは、障がい者施設との連携や、多様性豊かなチームの構築により、「自律社会」の創造――「モノ」から「モノとサービスを組み合わせた新たな価値」への移行――というビジョンを具現化しているのです。
オムロンの代表取締役社長 CEO山田義仁氏は言います。「社会や産業の問題を新たな視点から見つめなおすことは、お客様が何を求めているのか、どうしたら持続可能な社会を創造できるのかという問題を捉え直すことにつながります。そのためには、製品の価値だけではなく、それが提供する本質的な価値を認識する必要があります」
オムロンは、技術と人間性が出会うところに本質的な価値があると考えています。オムロンで働くリトルシティの入居者は、折に触れては自社の製品を眺め、グローバルでの取り組みに自らも一役買っていることに感動と達成感を覚えています。
ジェファーズ氏は言います。「リトルシティの診療所では、皆がオムロン製の血圧計や健康器具を指差して、『あれ、私が作ったの』と言うのです」