ユニークなコラボレーションが、価値観や原点を見つめ直すきっかけに オムロン、「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭2023」に協賛

日本の古都であり、世界屈指の文化都市である京都。例年、桜が開花する3月から4月には、歴史ある神社仏閣を訪ねて、世界中から多くの観光客が集まります。

今年も、オムロンは、「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭2023」に協賛しました。KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭は、京都を舞台に開催される、日本でも数少ない国際的な写真祭です。今年のKYOTOGRAPHIEのテーマは、「BORDER」。あらゆる生命体が持つ、さまざまな《BORDER=境界線》を巡る旅にでることをコンセプトに、国内外のアーティスト15人が京都市内19ヶ所の会場に作品を展示しました。協賛9回目となる今年は、松村和彦さん(京都新聞社 写真部)の「心の糸」展をサポートしました。松村さんは、2017年から認知症の本人・家族・周囲の人々に取材を重ね、それぞれの日々や移ろい、歩みをカメラに捉えています。誰しもに等しく課せられる老いとは何か、その先にある死とどう向き合っていくか──松村さんは、作品を通じて認知症を理解するきっかけを提示しながら、私たちの日々の暮らしにあるささやかな幸せや、認知症になっても失われることのない人生の美しさと価値を問いかけました。


KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2023 "BORDER"

 

原点に立ち返る

写真祭のテーマである「BORDER」という言葉には、オムロンの歴史と重なる深い意味合いがあります。今年で創業90年を迎えたオムロンは、1933年、大阪市都島区東野田で「立石電機製作所」として事業をスタートしました。その後、創業者 立石一真は、歴史的な寺院や自然に囲まれた京都の「御室」の地に魅せられ、1944年に大阪から移り住むことにしたのです。「日本のハリウッド」と呼ばれていた御室には、戦時中に空き家となった撮影所が多くありました。1945年、立石は、御室で工場を開設。これが、現在のオムロンの社名の由来です。日本の映画史を作った京都で事業を再スタートしたオムロンは、現在もKYOTOGRAPHIEへの協賛をはじめとする文化芸術振興を通じて、豊かな地域社会づくりを支援しています。

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心の境界線を越える

オムロンが今年サポートした「心の糸」展では、認知症をテーマに、松村和彦さん(京都新聞社 写真部)の作品が展示されました。松村さんは、認知症の本人・家族・周囲の人々に取材を重ね、認知症の本人、そしてその家族の方の日々の生活や移ろいを作品の中で紹介しています。松村さんは、写真を通じて伝えたいメッセージを次のように語りました。「知識や賢さよりも、共感や感性を大切にする社会を作りたいのです。そうなれば、高齢化や認知症に対してもネガティブな印象がなくなります。私は、心の糸というテーマで、認知症の人の心がどんなものなのかを写真で表現することに挑戦しました。症状だけでなく、その奥にある気持ちも写真で伝えようとしました。認知症は、両親や祖父母など、誰にでも起こりうることです。幅広い年齢層の方に今回の展示をみてほしいと思いました」

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写真祭最終日、「心の豊かさ、人間らしい生き方を追求できる社会を目指して」をテーマに、松村さんと、オムロンのグループ内シンクタンクである未来研究所 ヒューマンルネッサンス研究所*エグゼクティブ・フェローの中間真一さんによるトークイベントが開催されました。日本は、超高齢社会に突入し2025年には、65歳以上の人口のうち5人に1人が認知症になり、その数は700万人を超えると予測されています。そのような時代の到来を前提にしたとき、どのようによりよい社会をつくっていくか――オムロンの未来予測理論「SINIC理論」をもとに、認知症の歴史を紐解きながら、高齢者福祉の現在、未来について議論が交わされました。

* ヒューマンルネッサンス研究所はオムロン株式会社のグループ内シンクタンクとして1990年に創業した人文科学系の未来研究所。オムロンの未来シナリオ〈SINIC理論〉に基づき、工業社会の先にある社会を見通し、新たなソーシャル・ニーズの創造を目指して、社会と技術の未来可能性を探索している。


対談「心の豊かさ、人間らしい生き方を追求できる社会を目指して」ダイジェスト版(対談のフルバージョンはこちら

 

よりよい社会をつくるため

松村さんは、作品を通じて、よりよい社会をつくるために、サポートやケアを必要とする人たちを置き去りにしてはいけないと呼び掛けています。このメッセージは、オムロンが掲げる「人間性の尊重」という価値観を象徴するものです。さらに松村さんが強調したのは、「感性を磨く」ことの重要性です。オムロンの創業者 立石一真は、技術者、経営者でありながら、芸術・芸能への深い造詣を兼ね備え、常に社会のニーズを先取りするために感性を磨くことが大切だと考えていました。創業者が提唱したSINIC理論は、その精緻さから、現在も若い起業家やアカデミアから注目を浴びています。また名誉顧問の立石文雄は、「先行きが不透明な時こそ、感性を研ぎ澄まし、変化の兆しをいち早く捉えることが重要だ」と世界中の社員に説いています。

社会の変化が大きく、将来の見通しがつかないようにみえる今、一貫して変わらないのはオムロンが現在と未来の世代のために、よりよい社会をつくるという決意です。私たちは、創業者が1959年に制定した社憲「われわれの働きで われわれの生活を向上し よりよい社会をつくりましょう」の精神を受け継ぎ、1990年、「企業理念」へと発展させました。以来、企業理念を軸にした経営を実践し続けています。オムロンは、今後もKYOTOGRAPHIEをはじめとする創造的な分野での活動を支援することで、社会全体が豊かになる自律社会づくりに貢献してまいります。


3D archive of the venue | 松村和彦

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