コア技術
2022年度SIP/ワイヤレス電力伝送(WPT)システム研究会にて最終研究成果を報告
2023.04.12
2023年3月、内閣府の総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)が科学技術イノベーション実現のために2014年度から推進してきた国家プロジェクト「戦略的イノベーション創造プログラム (SIP) 第2期IoE社会のエネルギーシステム」の研究テーマの1つであるワイヤレス電力伝送 (WPT) 技術について、最終研究成果の報告を行いました。
オムロンは、本プログラムにおける研究課題C-①:「センサネットワークおよびモバイル機器へのWPTシステム」 において、家庭や工場などの屋内空間に多数配置された温度センサなどの各種センサの電池レス、配線レスを実現するために数μW~mWレベルの広域な無線給電を目指した技術の開発を行いました。以下に、報告概要を紹介いたします。
【報告概要】
■開発テーマ名
「バックスキャッタ利用 高度ビームフォーミング方式の開発」
■概要
室内の各場所に給電するため、RFIDなどで利用されている遠距離に小電力を給電できる放射型マイクロ波方式を活用した空間伝送型のワイヤレス給電の開発を行いました。
従来技術では、送電ポイントから受電ポイントまで直接到来する電波と、周辺の物体に反射または物体による回折で到来する複数の電波が干渉することで、損失(マルチパスフェージング)が発生していました。この課題に対して、受電ポイントからの反射波に変調をかけて情報を載せるバックスキャッタを利用し、受電ポイントを特定することで受電ポイントへ集中的に給電する電波制御技術(高度ビームフォーミング方式)の開発を行いました。この技術により安定した給電の実現が可能となりました。
また、バックスキャッタと高度ビームフォーミング方式の利用により、人にRFIDを取り付けることで人の位置を把握でき、人へは電波があたらないようにすることも可能となります。これにより、人がいる環境下でも、人への安全性を担保しつつ高効率な無線給電の実現が可能となります。
■本テーマ担当者からのコメント
オムロン株式会社 技術・知財本部 アドバンストテクノロジーセンタ 藤本卓也
「Society 5.0で実現する社会は、IoT(Internet of Things)によって人とモノがつながり、様々な知識や情報が共有され、新たな価値を生み出すことで多くの課題や困難を克服することを目指しています。しかしながら、電源の配線や供給に問題がありました。空間伝送型WPTは伝送距離が長く、IoT社会を支える次世代のインフラ技術として高い期待が寄せられています。
SIPでの本研究開発では、既存の無線機器と共存しつつ、必要個所に効率的に電力供給するとともに、人に当たる電力は確実に防護指針以下にするという課題解決にチャレンジしました。
研究開発においては本分野トップクラスの企業や大学の先生方との熱い議論やアドバイスで課題をクリアでき、最終成果として模擬生産ラインでワイヤレスセンサへの給電とセンサ情報の収集ができることを実証しました。
今後は、社会実装に向けてセンサ配線の課題に対するより詳細なPoC(Proof Of Concept)に取り組んでいきます」
■参考技術情報
・研究開発の背景と目標
https://www.jst.go.jp/sip/p08/team-c.html
・ブログラムで開発した技術の紹介動画(オムロンの技術紹介は02:00~03:00)
https://youtu.be/_PSr6Jvt2mQ
・オムロンが開発した技術説明ポスター
https://www.jst.go.jp/sip/pdf/p_08_event20230322/booth8.pdf
・オムロンの保有技術の紹介
電池不要なワイヤレスセンサ向けマイクロ波安定給電技術の開発
https://www.omron.com/jp/ja/technology/omrontechnics/2020/20200109-murai.html