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オムロン サイニックエックス、人工知能に関する主要国際会議「AAAI-23」に研究論文が採択 多数の自動走行ロボットが効率的に移動できる経路計画手法を提案

  • 2023年01月27日
  • オムロン株式会社

オムロン サイニックエックス株式会社(本社:東京都文京区、代表取締役社長:諏訪正樹、以下OSX)は、多数の自動走行ロボット(以下 エージェント)が隊列を組み移動する際に、衝突することなく目的地に移動するための経路計画において、繰り返し同じ軌道を移動する周期的な経路を活用することで処理量(以下 スループット)を高めることのできる新たな経路計画手法を提案しました。この手法は、従来エージェントに対し、個別に都度計算していた経路計画が、事前の経路計画のみで適用することができるため経路計画の計算時間を大幅に削減し、スループットを高めることが可能となります。

本成果の詳細は、2月7日から14日までアメリカ合衆国ワシントンD.C.で開催される国際会議「The 37th AAAI International Conference on Artificial Intelligence」にて発表を行います。

「AAAI」はAssociation for the Advancement of Artificial Intelligence(アメリカ人工知能学会)が主催する、人工知能分野において国際的に権威のある主要国際会議の1つです。2023年は37回目の開催となり、8,777件の投稿の中からおよそ19.6%の論文が採択されています。OSXの発表は、2023年2月12日(現地時間)を予定しています。

<採択された論文情報>
論文タイトル:「Periodic Multi-Agent Path Planning」
著者:笠浦 一海(OSX)、米谷 竜(OSX)、西村 真衣(OSX)

開発した技術の特長は、以下の通りです。


■研究の背景
近年、物流や移動におけるモビリティにおいて、自動運転車両の活用や開発が加速しています。その実用化においては、隊列を組む自動運転車両が交差点において衝突することなく効率的に移動するための経路計画手法は重要な課題の1つであり、様々な研究開発が行われています。

このような場面では、隊列を組むエージェントをそれぞれの目的地に到達させるため、エージェント同士が衝突することの無い移動経路を導き出す経路計画技術が重要です。しかし、従来の手法※1は、個別のエージェントそれぞれに対する経路計算を行っていたため、エージェントの数が多くなると先に移動するエージェントは後に移動するエージェントを考慮できないため、エージェント同士が協調し合った効率的な経路計画をすることができずスループットを高くすることが難しいという課題がありました。

※1 例えば、Dresner, K.; and Stone, P. 2008. A multiagent approach to autonomous intersection management. Journal of Artificial Intelligence Research, 31: 591–656.


■研究の概要
このような課題に対して、今回、多くのエージェントが衝突することなく、よりスループットの高い経路計画をするために、隊列を組むエージェントに対し、繰り返し同じ軌道を移動する周期的なマルチエージェント経路計画を活用する手法を提案いたしました。個別のエージェントに対する経路計画を都度するのではなく、衝突することのない繰り返し同じ軌道を移動する周期的な経路の組み合わせを解として事前に持つことで、多くのエージェントに対しても高いスループットを実現することができます。

例えば、図1(a)のように、スタート地点(s1,s2)とゴール地点(g1,g2)が設定されている場合、それぞれのスタート地点からエージェントの隊列がスタートする際に、従来は個別のエージェントに対して衝突有無等を都度計算していました。それに対して本手法では、スタート地点とゴール地点に対して無衝突で移動可能な周期的経路を決められた格子状などではなく連続空間に対して事前に計算します(図1(b)(c))。

(a) スタートとゴール地点 (b)1種類の周期的経路の場合 (c)2種類の周期的経路の場合

図1 周期的経路計算の結果事例(それぞれの●印がエージェントを表している)

(補足)

  • (a) s1とg1、s2とg2がそれぞれスタートとゴールに対応する。
  • (b) それぞれのスタートとゴールに対して周期的経路が1つの場合。S1→g1に対して青丸がエージェントが動く周期的な経路を表し、S2→g2に対して赤丸がエージェントが動く周期的な経路を表している。
  • (c) それぞれのスタートとゴールに対して周期的経路が2つの場合。S1→g1に対して青丸と水色丸が、S2→g2に対して赤丸と黄色丸がそれぞれエージェントの周期的な経路を表している。

この経路の組み合わせを活用することで、図2に示すように数多くのエージェントが次々と現れ隊列を組む際にも滞留することなく高いスループットで移動させることが可能となります。

(a) 既存手法 (b) 提案手法
図2 隊列を組み移動するエージェントの比較

より実用性な状況である交差点を想定した図3(a)の状況で図(c)の時、従来の手法比1.2倍の単位時間当たりのスループットを確認しました。

(a) スタートとゴール地点

(b) 1種類の周期的経路の場合

(c) 2種類の周期的経路の場合

(d)スループットの比較

図3 交差点をイメージした状況での計算結果(●印がそれぞれのエージェントを表している)

今回提案した手法は、自動運転車両やドローン等の移動体の協調的な制御など、マルチエージェント経路計画に関連する様々なケースへの応用が期待されます。今後は、より社会実装を意識した実環境に近い状況での検証を進めていくとともに、さらなる精度・計算効率の向上を目指していきます。また、本成果を活用し、さまざまな研究機関とのオープンイノベーションによる共創を行いながら、研究を通じて社会的課題を解決しソーシャルニーズの創造を目指してまいります。

本成果の詳細は、以下のこちらの記事をご参照ください。

また、本成果のプログラムはオープンソースコードとして公開しており、こちらからから利用することができます。


オムロン サイニックエックス株式会社について
オムロン サイニックエックス株式会社は、オムロンの考える"近未来デザイン"を創出する戦略拠点です。「AI」「ロボティクス」「IoT」「センシング」など、幅広い領域の最先端技術のトップ人財が研究員として在籍し、社会的課題を解決するために、技術革新をベースに「ビジネスモデル」「技術戦略」「知財戦略」を統合し具体的な事業アーキテクチャに落とし込んだ"近未来デザイン"を創り出します。また、大学や社外研究機関との共同研究を通じて「近未来デザイン」の創出を加速していきます。詳細については、https://www.omron.com/sinicx/をご参照ください。


本件に関する報道関係からのお問い合わせ先
オムロン株式会社 イノベーション推進本部
エンゲージメント・コミュニケーション部
TEL:0774-74-2010

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