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公益財団法人 立石科学技術振興財団
第7回立石賞受賞者決定のお知らせ

  • 2022年03月22日
  • オムロン株式会社

公益財団法人 立石科学技術振興財団(理事長:立石文雄・オムロン株式会社 取締役会長、所在地:京都市下京区)は、このたび、第7回立石賞の受賞者を決定しました。

立石賞は、2010年の立石科学技術振興財団設立20周年を記念して創設した顕彰事業です。賞の授与を隔年で実施しており、今年が第7回目となります。立石賞は功績賞と特別賞の2つで構成しています。功績賞は、過去に財団から研究助成を受け、その後の研究活動において顕著な業績をあげた研究者に対して授与する賞です。また、特別賞は、財団の趣意に沿った日本発の研究・技術開発において顕著な業績を上げた研究者に対して授与する賞です。各賞に対し、賞状、賞碑および賞金(500万円)をもって顕彰します。今年は、公募で受け付けた推薦の中から、当財団選考委員会および理事会にて、以下のとおり、功績賞1名と特別賞1名を選出しました。

表彰式と受賞者による記念講演を次のとおり開催します。
参加・聴講申込方法などは、4月中旬から立石科学技術振興財団ウェブサイト等でお知らせします。

日 時 5月25日(水) 15:00 ~17:00
場 所 ザ・プリンス 京都宝ヶ池(京都市左京区宝ヶ池)
開催方法 会場参加 / オンライン配信
聴講申込方法 立石科学技術振興財団ウェブサイト 参照

■ 立石賞 受賞者一覧
【功績賞】

氏名 中村 仁彦(なかむら よしひこ)
所属機関・職位 東京大学 大学院工学系研究科 上席研究員・名誉教授
授賞表題 人間と機械の自然な相互作用の情報理論構築とその応用

【特別賞】

氏名 合原 一幸(あいはら かずゆき)
所属機関・職位 東京大学 特別教授・名誉教授
授賞表題 数理情報工学に基づく複雑系数理モデル学の構築とその応用に関する研究
各授賞理由と受賞者のプロフィールについては「授賞理由と受賞者プロフィール」を参照ください。

功績賞 中村 仁彦功績賞 中村 仁彦

特別賞 合原 一幸特別賞 合原 一幸

■ 授賞理由と受賞者プロフィール

第7回(2022年度)立石賞 功績賞 受賞者
氏名    :中村 仁彦(なかむら よしひこ)
所属・職位 :東京大学 大学院工学系研究科 上席研究員・名誉教授
授賞表題 :人間と機械の自然な相互作用の情報理論構築とその応用
受賞者の業績
受賞者は、大自由度系のロボットの運動計算、制御理論の基礎研究から出発し、人間の大自由度筋骨格系の力学モデルとその計算法を確立した。これに基づき人対人の行動理解のしくみを、自己の運動制御と他者の運動理解を行う同一の双方向計算機構としてモデル化し、運動認識と記号化によるコミュニケーション理論を提唱した。さらにヒューマノイドロボットが人間の行動を記号的・言語的に理解して動作する実証研究によって、人間と機械の自然なコミュニケーションが成立する未来社会を予見させ、人間と機械の調和に向け大きく貢献した。受賞者が開発したリアルタイム筋張力推定システムは、通常の運動解析に加えて筋張力・筋活性度の解析を可能し、幅広い分野で適用されている。2018年には、特殊なマーカーや専用の服装を用いることなく、画像情報からリアルタイムで関節角度を推定するとともに、筋骨格運動や筋力を推定するAIモーションキャプチャーシステムを開発した。これらの研究開発技術は、ヘルスケアやスポーツ科学や高齢者の見守りなどに応用が広がろうとしている。2001年、2002年に連続受賞したKing-Sun Fu Memorial Best Transactions Paper Awardはロボティクスで最も重要な学術雑誌 IEEE Transactions of Robotics and Automationの年間最優秀論文1編に送られる賞であり、2年連続の受賞は受賞者のみである。なお受賞者は、1992年に当財団から「人間と機械の知的コミュニケーションに関する研究 多指ロボットハンドの知能化を具体例として」の課題で助成を受け、その成果が本研究活動の端緒となった。
専門技術の概要・説明
(1)人間と機械の自然な相互作用実現に向けたロボットの運動制御の基礎計算理論
大自由度ロボットの冗長性の利用に関して、運動分解の一般問題として優先度付きの複数のタスクという概念を世界で初めて導入した。この成果はヒューマノイドロボットなどの大自由度ロボットの制御のための基礎技術として広く利用されている。
(2)人間とヒューマノイドロボットのコミュニケーション理論
自己の運動制御と他者の運動理解の双方向の情報処理を行う単一の計算機構を提唱し、ヒューマノイドロボットに実装した。この成果に基づいて運動記号と言語と結ぶ人間と機械のコミュニケーション理論を構築した。これらの成果は器械体操の自動採点システムや人間の行動の自動言語記録に応用されている。
(3)人間の筋骨格計算モデルとその応用
モーションキャプチャで得た運動から骨格の動力学計算を経て、筋活動をリアルタイム計算する技術、複数台のカメラ映像から全身運動の3次元再構成を行う技術を開発した。モーションキャプチャと運動解析をだれもが利用できるようにして身体や運動に関するリテラシーを高め健康社会を開く基盤を構築した。
学歴:
1977年3月
1982年3月
1985年9月
職歴:
1982年4月
1987年9月
1990年9月
1991年4月
1997年2月
2001年4月
2020年6月
主な受賞歴:
2007年
2007年
2011年
2011年
2019年
2020年
2021年

京都大学 工学部 精密機械工学科 卒業
京都大学 大学院工学研究科 博士課程 単位取得退学
京都大学 工学博士

京都大学 工学部 オートメーション研究施設 助手
カリフォルニア大学 サンタバーバラ校 助教授
カリフォルニア大学 サンタバーバラ校 准教授
東京大学 工学部 機械情報工学科 助教授
東京大学 大学院工学系研究科 機械情報学専攻 教授
東京大学 大学院情報理工学系研究科 知能機械情報学専攻 教授
東京大学 大学院工学系研究科 人工物工学研究センター 上席研究員

セルビア工学アカデミー 外国人会員
世界芸術科学アカデミー フェロー
IEEE フェロー
ミュンヘン工科大学 特別連携教授
日本機械学会賞(技術賞)
東京大学 名誉教授
IEEE-RAS Pioneer Award

第7回(2022年度)立石賞 特別賞 受賞者
氏名    :合原 一幸(あいはら かずゆき)
所属・職位 :東京大学 特別教授・名誉教授
授賞表題 :数理情報工学に基づく複雑系数理モデル学の構築とその応用に関する研究
受賞者の業績
21世紀の重要研究課題は、脳、生命、免疫などの生体機能、がん、新興・再興感染症などの医学・疫学、エネルギー・電力、通信、交通などの社会経済システム、環境、地震などの安全・安心確保など多岐にわたるが、いずれも多面的アプローチを必要とする広義の複雑系の問題として捉えることができる。受賞者は、数理情報工学をベースとして、複雑系のダイナミクス、ネットワーク構造、観測ビッグデータを、制御、最適化、予測へと結びつける数理的基礎理論を開発して複雑系数理モデル学を構築した。そして、それらの数理的手法を実世界の複雑系へ分野横断的に応用する研究を産学連携で広く展開し、実際の様々な社会課題を解決するための複雑系科学技術の数理情報工学的基盤を開拓した。さらに、企業との社会連携研究部門設置や共同研究等などを精力的に進め、最近では、国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST) ムーンショット型研究開発事業の「複雑臓器制御系の数理的包括理解と超早期精密医療への挑戦」プロジェクトマネージャーや東京大学国際高等研究所ニューロインテリジェンス国際研究機構・副機構長として、基礎医学や基礎脳科学の実験・臨床研究を(1)精神疾患・神経疾患、糖尿病やがんを初めとした様々な疾患の超早期精密医療や (2)次世代AI技術の基礎理論とハードウエア実装技術へと、数理情報工学に立脚して橋渡しする研究の中心的役割を果たしている。その研究成果は、人間と機械が真に調和する最適な社会環境の実現に向けて、今後も大きく貢献することが期待される。また、受賞者はこれまでに、原著論文(国際誌)595報、原著論文(国内誌)66報、国際会議1,042報、招待講演335件、編著書110件など世界トップレベルの学術上の功績を上げ続けている。
専門技術の概要・説明
受賞者は、現実の様々な複雑系を数理的に解析して制御・最適化・予測するために、「複雑系数理モデル学」の理論構築およびその広範な科学技術分野への応用に関する研究を、主として数理情報工学とカオス工学の観点から行って来た。この「複雑系数理モデル学」の理論プラットフォームは、(1)複雑系の階層的ダイナミクスを制御に結び付ける「複雑系制御理論」、(2)複雑系のネットワーク構造を最適化に結び付ける「複雑ネットワーク理論」、(3)複雑系から観測されるビッグデータを予測に結び付ける「非線形データ解析理論」や「データ駆動型モデリング理論」などを軸に体系化される。そして、この「複雑系数理モデル学」は、非線形科学、脳科学、医学、AIやデータサイエンスなどの発展へ貢献するとともに、多様な応用技術の数理情報工学的基盤として、実社会の様々な課題研究に活用されている。
学歴:
1977年3月
1982年3月
職歴:
1982年4月
1983年4月
1986年10月
1988年10月
1993年4月
1998年4月
1999年4月
2003年10月
2010年3月
2019年10月
2020年4月
主な受賞歴:
1991年
2000年
2003年
2006年
2019年
2020年

東京大学工学部電気工学科 卒業
東京大学大学院工学系研究科電子工学専攻博士課程 修了、工学博士

日本学術振興会 奨励研究員
東京電機大学工学部電子工学科 助手
東京電機大学工学部電子工学科 専任講師
東京電機大学工学部電子工学科 助教授
東京大学大学院工学系研究科計数工学専攻 助教授
東京大学大学院工学系研究科計数工学専攻 教授
東京大学大学院新領域創成科学研究科複雑理工学専攻 教授
東京大学生産技術研究所 教授
東京大学生産技術研究所最先端数理モデル連携研究センター長
東京大学国際高等研究所ニューロインテリジェンス国際研究機構 副機構長
東京大学 特別教授

日刊工業新聞技術・科学図書優秀賞「カオス―カオス理論の基礎と応用」
東京テクノフォーラム21・ゴールドメダル賞「決定論的カオスの工学的研究」
AROB (Artificial Life and Robotics), Academic Achievement Award
電子情報通信学会フェロー「カオス工学の提唱と非線形現象の解析に関する研究」
明治大学先端数理科学インスティテュート(MIMS)・現象数理学三村賞
東京大学 名誉教授


■ 立石科学技術振興財団について
立石科学技術振興財団は、技術革新と人間重視の両面から真に最適な社会環境の実現に寄与することを目的に、エレクトロニクスおよび情報工学の分野で、人間と機械の調和を促進する研究および国際交流に対する助成活動を行っています。立石一真(当社創業者)および立石孝雄(当社元代表取締役会長)がそれぞれ保有するオムロン株式会社の株式を拠出し、さらにオムロン株式会社が寄付金を出捐して設立されました。基本財産はオムロン株式会社の株式2,625,000株です。


公益財団法人 立石科学技術振興財団の概要

名称 公益財団法人 立石科学技術振興財団
所在地 京都市下京区油小路通塩小路下ル南不動堂町11番地
設立年月日 1990年(平成2年)3月6日
目的 エレクトロニクスおよび情報工学の分野で、人間と機械の調和を促進する研究に関する 活動を支援し、もって技術革新と人間重視の両面から真に最適な社会環境の実現に寄与することを目的とする。
事業内容 エレクトロニクスおよび情報工学の分野で、人間と機械の調和を促進するための研究に 関する活動を支援する。
事業年度
事業実績 (1)研究への助成
  • 研究助成(S)  3,000万円/3年、3件程度/年
  • 研究助成(A)  250万円以下/件、30件程度/年
  • 研究助成(B)  500万円以下/件、2件程度/年
  • 研究助成(C)  50万円以下/件・年、10件程度/年
  •        (博士後期課程、最大3年間)、
(2)国際交流への助成
  • 国際会議発表 40万円以下/件
  • 短期在外研究 70万円以下/件
合わせて20件程度/年
  • 国際会議開催 100万円以下/件、10件程度/年
(3)研究成果に対する顕彰
  • 立石賞 功績賞 2件程度/隔年、副賞500万円/件
  • 立石賞 特別賞 2件程度/隔年、副賞500万円/件
(4)研究成果の普及
  • 成果集の発行 1回/年
(5)その他、本財団の目的を達成するために必要な事業
事業年度 毎年4月1日から翌年3月31日まで
事業実績 設立以来2021年度までに累計1,443件、総額28億463万円の助成
(立石賞15件含む)
評議員 8名
役員 理事長  立石 文雄(オムロン株式会社 取締役会長)
常務理事 石原 英
他 理事7名 監事2名
基本財産 オムロン株式会社 株式2,625,000株
特定資産 現金11億円

立石賞の概要

1.設立の目的

立石賞は、オムロン株式会社創業者立石一真氏および当財団の初代理事長立石孝雄氏の産業・技術の発展に対する功績および人材の育成に対する貢献を記念して設立しました。

2.対象者および賞の種類

顕彰の対象は、エレクトロニクスおよび情報工学の分野で、人間と機械の調和を促進し、技術革新と人間重視の視点において、研究活動を発展させ、その成果を世のため人のために有効なレベルまで高め、社会に認知され、多くの人に享受されると期待できる状態をもって「顕著な業績」として、それを実現した研究者個人としています。
(1)過去に本財団の研究助成を受け、顕著な研究業績をあげた者。
(2)当財団の趣意に沿った日本発の研究・技術で顕著な業績をあげた者。
(1)に対するものを立石賞功績賞(Tateisi Prize, Achievement Award)と称し、
(2)に対するものを立石賞特別賞(Tateisi Prize, Grand Award)と称します。

3.顕彰

顕彰は、賞状・賞牌及び賞金(500万円)をもって行います。立石賞は隔年実施とし、1回につき立石賞功績賞2名程度、立石賞特別賞2名程度、合計4名程度への贈呈を予定しております。ただし、該当者がいない年度においては顕彰を実施いたしません。

4.第7回立石賞の募集期間

2021年4月1日~2021年6月30日


本件に関する報道関係からのお問い合わせ先
公益財団法人 立石科学技術振興財団
事務局長     野中 仁志(のなか ひとし)
〒600-8234 京都市下京区油小路通塩小路下る南不動堂町11番地
TEL:075-365-4771 https://www.tateisi-f.org

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