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オムロン 技術・知財本部 研究開発員、「2021年度 システム制御情報学会 産業技術賞」を受賞~人の動きをセンシングし、工程ごとの動作時間を自動的に計測することで、改善の対象となる動作の検知を実現~

  • 2021年06月02日
  • オムロン株式会社

オムロン株式会社(本社: 京都市下京区、代表取締役社長CEO: 山田義仁) 技術・知財本部の西田一貴(以下、西田)と音田浩臣が執筆した論文「セル生産ラインにおける作業者の標準外動作検知システムの開発」が、このたび2021年度 システム制御情報学会「産業技術賞」を受賞しましたのでお知らせします。

産業技術賞を受賞した、西田一貴(左)、音田 浩臣(右)


システム制御情報学会「産業技術賞」は、システム制御情報学会の機関誌「システム制御情報学会論文誌」に最近2年間(前年および前々年の1月から12月)に公表され、その成果が実用に供しているもの、あるいは実用の可能性が大きく産業技術の進展に大きな貢献が認められる論文の著者に贈呈されるものです。

ものづくり現場における改善活動は生産性や収益の向上に直結する重要な活動で、多くはIndustrial Engineering(以下、IE)と呼ばれる工学的手法により行われています。IEによる改善活動をおこなう改善担当者は、生産工程において想定される標準的な作業時間よりも時間がかかっている「やりにくい作業」すなわち標準外動作を見つけ、現場の改善活動を行います。
作業者の標準外動作を見つけるために、改善担当者は作業状況を観察し動作時間を計測する必要がありますが、通常は撮影した作業者の動画を観察することによって計測することが多いため、膨大な時間と手間がかかり、改善活動が停滞することもありました 。

そこで西田らは、この課題に着目し、作業時の動画データをもとに作業者の動作時間を自動で計測し、作業ごとの動作時間を分析できるシステムを構築することで、標準外動作の検出時間を短縮し、改善活動の効率を高めることができる手法を提案しました。実際の工場での作業を対象とし、適用事例および有効性を示し、システムとしての実用性が高く、将来的に産業技術への進展が期待できることが評価されました。

今後は、提案手法を現場で広く活用していくために、システムの使いやすさを高めていくとともに、社内外での検証とさらなる技術開発を重ねることで、多種多様な生産現場でも活用されるシステムの実現を目指し研究を進めていきます。今後も、人がより創造的な活動を行い、活躍することができる「人と機械が融和」した世界の実現を目指します。

受賞論文の概要
■論文タイトル:「セル生産ラインにおける作業者の標準外動作検知システムの開発」

(掲載:システム制御情報学会論文誌, Vol.33, No.5, pp.149-155, 2020

近年の少子高齢化の影響で労働力不足が懸念されているものづくり現場では、生産性や収益性向上のために改善活動が盛んに行われています。作業者の標準外動作を自動的に検出することで、生産ラインの改善活動を効率化できると考え、以下の手法を提案しました。
(1)作業者の動作を時系列データとして表現
(2)動作時間伸縮法(Dynamic Time Warping)※1を使用し、動作時間の自動測定
(3)動作時間を分析するための見える化

標準外動作検知システムの構成例
標準外動作検知システムの構成例

提案手法を、当社内工場にて検証をおこない、標準外動作の検出時間を短縮できることを確認しました。
※1 DTWについて:長さが異なる2つの時系列データに対して、その類似度を測る際に用いる手法のひとつ

(システム制御情報学会 2021年度学会賞について:https://www.iscie.or.jp/about/award

受賞者のコメント
技術・知財本部 コアテクノロジーセンタ ロボティクス部 西田 一貴:

本論文が評価されたことを大変光栄に思います。これまでは生産ラインを改善するために、標準作業から外れた動作を、改善担当者の方々が膨大な時間と手間をかけ発見していましたが、本研究によりそれらを自動化し、より改善内容の検討や実施に注力できるようになると考えています。今後も、研究成果を社会実装へつなげていくため、現場と連携し、新たなイノベーションを創造することに貢献していきます。

技術・知財本部 コアテクノロジーセンタ AIデータサイエンス部 音田 浩臣:
これまで製造現場に関わってきた中で、人が能力を最大限発揮できるよう貢献したい、そのためにオムロンで培ってきたデータサイエンスやAI技術を生かしたい、との想いで活動を進めてきました。その中で、当社内工場と一体となり、研究開発から改善事例を作るまでの成果を出すことができ、非常に嬉しく思います。今後も本受賞を励みに、研究開発を通じて社会的課題を解決し、ソーシャルニーズの創造に貢献していきます。

技術・知財本部について
オムロングループのコーポレートR&D部門として、コア技術である「センシング&コントロール+Think」を進化させながら、近未来に起こりうる社会的課題を先取りし、それらを解決するソーシャルニーズの創造に取り組んでいます。創業者の経営理念「機械にできることは機械に任せ、人間はより創造的な分野で活動を楽しむべきである」を拠り所に、人の可能性を広げ、人がもっと活躍できる未来の実現を目指し、AI・ロボティクス・エネルギーマネジメント・センシングなどさまざまな研究開発活動をおこなっています。
https://www.omron.com/jp/ja/technology

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