MEMS非接触温度センサの高感度化技術を開発-広い空間で人のセンシングが可能-
- 2010年10月4日
- オムロン株式会社
オムロン株式会社(本社:京都市下京区、代表取締役社長:作田久男)は、MEMS技術をもちいた高感度の非接触温度センサ素子(以下、センサ素子)を開発しました。この高感度化したセンサ素子をアレイ化することで、広い空間でも人のセンシングが可能なMEMS非接触温度センサを実現できます。
非接触温度センサは照明環境に強く、静止している人をセンシングするという、カメラや焦電センサには無い特長を持ちます。しかし、感度が低いためにセンシングエリアを狭める必要が有り、広い空間をセンシングするためには、非接触温度センサ自体を動かす機構やセンサが複数個必要なことから一般に普及していません。
今回開発したセンサ素子は、赤外線を効率よくセンシングする技術としてマイクロミラー構造を採用し、またウエハレベル真空接合によって熱絶縁構造とすることで、従来比7倍の高感度化を実現しました。これによりセンシングエリアを7倍に広げることができます。
店舗や駅構内など、人の混雑状況をリアルタイムにセンシングすることで空調制御などへの活用や、夜間の人の侵入センシングなど防犯対策への活用が可能となります。
今後、MEMS非接触温度センサの製品化を進め、センサネットワークへの接続など、より安心・安全、快適に配慮した領域で貢献していきます。
なお、10月5日(火)から9日(土)まで、幕張メッセで開催される「シーテックジャパン2010」に、MEMS非接触温度センサの高感度化技術を出展します。
仕様・性能
センサ素子サイズ | 150μm角 センサ素子を16×16にアレイ化した場合のチップサイズは6mm角と業界最小クラス |
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感度 | 350V/W |
応答速度 | 3ms程度 |
技術解説
温度検知原理
人や温度を有する物体から放射される赤外線を赤外線吸収膜で吸収させると熱に変換されます。次にこの発生した熱により温度差が発生し、ゼーベック効果により電子回路で利用可能な電圧の変化として取り出すことができます。(図1参照)
図1.温度検知原理ゼーベック効果:2種類の異なる導体の両端を接合して、両接合部に異なる温度を与えると起電力が発生する現象。
- 技術的特長
- (1) 感度向上のためのマイクロミラーの開発
- 従来の一般的な構造では、赤外線の透過により、赤外線吸収膜で十分に赤外線を吸収できないために小型化すると更に感度が低下します。しかし当社は、これまで液晶用バックライトの開発で培ってきた光波制御技術により、赤外線を赤外線吸収膜に集光させるマイクロミラーを開発し、高感度化することに成功しました。(図2参照)
今回、NEDO FineMEMSプロジェクトの中で、東京大学下山研究室との共同研究により従来困難であったシリコンウエハ上に自由曲面を作製することに成功しました。 - (2) 感度向上のための真空封止による熱絶縁構造
- マイクロミラーをシリコンウエハ上に形成することで、センサ素子とミラーをウエハレベル真空接合し、空気への熱の逃げを減少させて感度を向上させました。それにより、従来の応答速度を維持したまま感度を7倍に向上することができました。(図2参照)
図2.構造模式図
センサチップ外観
センサ素子の写真および16×16にアレイ化した積層後のチップ写真を図3に示します。
図3.センサチップ外観
- 詳細お問い合わせ先
- オムロン株式会社
コーポレートコミュニケーション部長 笹田 淳
〒600-8530 京都市下京区塩小路通堀川東入
TEl : 075-344-7175