次世代携帯電話※1およびモバイル機器向け 新型「RF MEMSスイッチ」を開発
- 2010年7月27日
- オムロン株式会社
オムロン株式会社は、次世代携帯電話やモバイル機器の高周波回路に使用されるRF MEMSスイッチを新たに開発しました。
新型RF MEMSスイッチは、従来、携帯電話等の高周波回路に使用されているガリウムヒ素(GaAs)半導体スイッチと比較して広帯域で低損失、高Q値*2の高周波特性を実現しています。また、ウェハレベルパッケージング*3を活用したCSP(チップスケールパッケージ)形態により、世界最小クラスの2.4×1.6×0.4mm(単極双投タイプ)を実現しています。
新型RF MEMSスイッチは、携帯電話をはじめとするモバイル機器に搭載されることで、その通信性能を大幅に向上させることが可能となります。例えば、広帯域化による通信速度の向上や多バンド周波数対応、また低損失化により機器の低消費電力化に貢献します。
当社は、これまでMEMS圧力センサ、フローセンサ、アコースティックセンサ等の各種MEMSデバイスを、量産してきました。今回開発したRF MEMSスイッチは、これまでの生産ノウハウをベースに置きながら、量産性に優れ、小型化かつニーズに対応した高周波伝送を可能とする新たなMEMSデバイスとして位置づけています。携帯電話や無線モバイル機器の急激な進化に伴い、新型RF MEMSスイッチの需要は、今後大きく広がることを見込んでいます。
なお、本RF MEMSスイッチは、2010年7月28日(水)から30日(金)まで、東京ビッグサイトにおいて開催される第21回マイクロマシン/MEMS展の当社ブースに展示いたします。
- *1 次世代携帯電話:3.9G/4Gに代表される新通信規格の携帯電話を示す。周波数帯がそれぞれ異なる。
- *2 Q値:(Quality Factor) エネルギー損失を表す指標。値が高いほどエネルギー損失が少ない。
- *3 ウェハに生成したMEMSデバイスをウェハの状態で、一括パッケージングすること。
次世代携帯電話向け「RF MEMSスイッチ」
開発の背景
近年、携帯電話をはじめとするモバイル機器の情報通信需要が高まる一方、使用可能な周波数は有限であるため、より広範囲の周波数帯を使用しなければならない状況となっています。これまでの高周波回路では、半導体スイッチであるガリウムヒ素(GaAs)が主に使用されてきましたが、高周波特性において限界があり、次世代携帯電話の一つである第4世代携帯電話(4G)で検討されている3~5GHz帯域においてはシステムの性能確保が難しいと予想されます。
そこで当社では、MEMS技術を用いて、広帯域の周波数に対応、さらには低損失をも可能とする小型メカニカルスイッチの開発を進めてきました。2008年には先行して半導体テスター向けRF MEMSスイッチを発売していますが、今回は更に高性能化、小型化を実現、新たな市場である次世代携帯電話やモバイル機器向けRF MEMSスイッチを開発しました。
MEMSの市場規模は2013年に約8000億円と試算されており、当社は今後も、市場のニーズにマッチしたMEMSデバイスを多数開発し製品化していきます。
特長
- 高Q値の実現
高Q値を実現。本RF MEMSスイッチを使用することで、ノイズやバンド間干渉を低減したフィルタ切り替えが可能。 - 広帯域における良好な高周波特性(低損失)の実現
周波数3GHzでインサーションロス(挿入損失)0.2dBと低損失。
5GHzにおけるインサーションロスも0.5dB以下で、広帯域にて低損失を実現。 - 世界最小クラスの小型化
WL-CSP(ウェハレベルチップスケールパッケージ)により、単極双投MEMSスイッチとしては、世界最小クラスである2.4×1.6×0.4mmの小型化を実現。 - 高い生産性
野洲事業所の半導体工場において、既に各種MEMSを量産しており、8インチプロセスでの大量生産が早期に可能。
主な仕様
<定格>
使用温度範囲 | -20℃から+85℃ |
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駆動電圧 | 3V |
<仕様(参考値)>
接点構成 | 単極双投(SPDT) |
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サイズ | 2.4×1.6×0.4mm |
特性インピーダンス | 50Ω |
インサーションロス(挿入損失) | 0.2dB (3GHz) |
アイソレーション(絶縁性) | 40dB (3GHz) |
用途
携帯電話、無線通信機器、モバイル機器
担当工場
オムロン株式会社 野洲事業所
- 詳細お問合せ先
- オムロン株式会社
マイクロデバイス事業部 商品部
谷口 治彦
〒500-2362 滋賀県野洲市市三宅686-1
TEL: 077-588-9130