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微小な振動で発電する小型の「環境振動発電デバイス」を開発 ~振動エネルギーを電力に変換するエコ技術~

  • 2008年11月11日
  • オムロン株式会社

オムロン株式会社(本社:京都市下京区、代表取締役社長:作田久男)は、日常的に存在する環境振動で発電する「環境振動発電デバイス」の試作に成功しました。
工場の機械、車などの移動体や橋梁などには数10Hz以下の低周波数の振動が存在します。この様な低周波数の振動は日常的に存在するもので、環境振動といわれます。環境振動発電デバイスは、この微小な環境振動エネルギーを電力に変換するデバイスです。これまで活用できなかった環境振動エネルギーを有効利用するエコ技術です。
環境振動発電デバイスをセンサおよび無線通信機と組み合わせることで、センサで測定した温度や圧力データを配線や電池を必要とせず伝送することが可能となります。

応用例としては、検査が困難な橋梁など建造物の経年変化監視、電池交換が困難な車のタイヤ空気圧を監視するTPMS(タイヤ・プレッシャー・モニタリング・システム) 、および配線が困難な工場内のモータ等の異常振動や過熱監視などに、環境振動発電デバイスの応用が期待されます。

これまでも振動で発電するデバイスは研究されていましたが、数百~数kHzという高い振動を必要としており、環境振動では十分な発電ができないことや、小型化に課題があり実用化が困難でした。これらの課題を解決するために、当社のリレーおよびスイッチなどで培った精密メカ技術と高絶縁耐圧化技術を応用することで、小型化、耐久性の向上および実用レベルの発電性能を確保しました。

環境振動発電デバイスは、11月13日(木)から14日(金)まで、東京ビッグサイトで開催される「ハイウェイテクノフェア2008」のネクスコ東日本エンジニアリング様ブースに、地震検知通報システムのコンセプトモデルとして参考出展されます。

今後、無線センサーネットワークの展開にむけて、当社は環境振動発電デバイスの更なる性能の向上とともに、中核技術であるセンシング技術と無線通信技術などを組み合わせて、より薄型化したモジュール開発を進めていきます。

仕様・性能

  1. 大きさ:
    縦20mm 横20mm 高さ8mm
    (更に1/2に薄型化予定)
  2. 発電性能:
    10μW(20Hz、加速度1Gの場合の発電性能、環境振動で発電可能)
    無線通信機や加速度センサへの電力供給に十分な発電性能。
    (参考:クオーツ式腕時計の消費電力は約1μWです。)

技術解説

  1. 発電原理

    静止状態では、エレクトレット(※注)電極基板と対向したメタル電極基板との間で電気を蓄えている状態となります。これは静電誘導と呼ばれる物理現象です。振動により片側の電極が移動することで、電気を取り出すことができます。(図1参照)

    発電原理(発電部)

    図1.発電原理(発電部)

    (※注)エレクトレットとは、半永久的な電荷をもつ絶縁体のことです。1919年江口元太郎氏によって発見され、現在ではマイクロフォンや集塵機などに応用されています。

  2. 特長
    (1) 精密メカ技術を応用した駆動部
    効率よく発電させるためには、2枚の電極基板の間隔を可能な限り狭くし、静電容量を増加させ、2枚の電極基板の間隔を維持しながら電極基板を大きくスライドさせる必要があります。当社の世界最小クラスのリレーおよびスイッチなどの製品化で培った精密メカ技術を応用することで、2枚の電極基板の間隔を0.07mmに維持しつつ、片側の電極基板を2.6mmと大きくスライドできる駆動部を開発しました。
    (2) エレクトレット発電方式の採用
    エレクトレット発電方式は、圧電方式と異なり発電部を折り曲げる必要がなく、2枚の電極基板を非接触で動かすことで発電できます。そのため折り曲げによる劣化がなく耐久特性に優れます。また、圧電方式は原理上駆動部と発電部が一緒になっていますが、エレクトレット発電方式は駆動部と発電部を分離独立させた構造にできるため、高性能設計の自由度を増すことができます。また、電磁誘導方式も同様に発電部と駆動部を分離した構造ですが、発電コイルや磁石の小型化が困難という課題があります。
    (3) 高電圧/高耐圧の発電部
    発電量はエレクトレットの電位の2乗に比例して大きくなるため、エレクトレット電位を可能な限り高くする必要があります。当社は旭硝子株式会社製のアモルファスフッ素樹脂(サイトップ®)をエレクトレット材に採用し、短冊状のエレクトレット電極形状を最適化することで、非常に高い700Vの電位を実現しました。マイクロフォンなど従来例と比べて2~3倍高い電位で帯電します。
    通常、エレクトレットは700Vの高電位で帯電させて基板の間隔を0.07mmまで狭くすると、放電による劣化がおきますが、開発した複合化電極構造は放電劣化を大幅に改善します。この独自の絶縁構造は1,000V以上の絶縁耐圧性能があります。

    環境振動発電デバイス

    図2.環境振動発電デバイス

    出力電圧(20Hz,1G時の結果)

      図3.出力電圧(20Hz,1G時の結果)

詳細お問合せ先
オムロン株式会社 
コーポレートコミュニケーション部長 生越 多惠子
〒600-8530 京都市下京区塩小路通堀川東入
TEL:075-344-7175

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