世界初、UHF帯ICタグの読取り性能を向上させるアンテナ技術を開発
- 2006年3月27日
- オムロン株式会社
オムロン株式会社(本社:京都市下京区、代表取締役社長:作田久男)は、この度、世界で初めて(*1)、UHF帯RFIDのリーダーに搭載し、ICタグの読取り性能を向上させる電子制御方式のアンテナ技術を開発しました。(この技術は特許出願中です。)
UHF帯ICタグは、他の周波数帯のICタグに比べ通信距離が飛躍的に拡大したことにより商品トレーサビリティを実現するキーデバイスとして米国流通業界を中心に世界中で導入が進められています。しかし、UHF帯RFIDシステムには、電波特有の課題であるマルチパス現象(*2)により本来読める距離にあるICタグが読めなくなり、システムに問題が発生するといった課題があります。
そこでオムロンは、リーダーから放射される電波を電気的に制御可能な電子制御方式アンテナ技術を新たに開発し、この技術をUHF帯RFIDシステムに応用することにより反射波を低減し、マルチパスによるシステムの性能の低下を抑制することに成功しました。従来のアンテナが広い範囲に一定方向に電波を放射する特性を持つことに対し、この新アンテナ技術は、指向性を持った電波をある方向にだけ放射することができ、その方向をリーダーからの制御により変化させることができます。この新アンテナ技術により、反射波が発生する方向に電波を放射しないようにすることで、マルチパスを抑制して、UHF帯のリーダーの読取性能の向上を可能としました。
このことは、エンドユーザーにとって、従来のシステムと比べて、リーダーとICタグ間の通信の高速性、安定性等の品質を高めることができ、さらに、異なる設置環境での調整作業の軽減やシステム性能低下を抑えることができます。
今回の新アンテナ技術の開発は、UHF帯RFIDシステムの課題解決の一手段となります。今後、この新アンテナ技術を利用した各種のアプリケーションを想定し、その有効性を検証、評価する実証実験を行ない、2006年度の後半に商品化しリーダーへの搭載を予定しています。
*1 世界で初めてUHF帯リーダーに搭載 2006年3月現在 当社調べ。
*2:マルチパス現象とは、アンテナから放射された複数の電波のうち、壁などで反射した反射波とアンテナから放射された直接波が、お互いに干渉し合うことにより、通信エリア内に電波を弱め合うスポット的な空間(A点)が発生することを言います。このメカニズムを下図に示します。
マルチパス発生のメカニズム
電子制御方式アンテナの効果
マルチパス発生のメカニズム
従来のアンテナ方式では、電波が干渉し合うフィールドホール(■通信NG)が多数存在しているにもかかわらず、新アンテナ技術を適用することで、フィールドホールがなくなり、その適用効果が見られた。床面から1.5mの高さにアンテナを設置した場合、アンテナの垂直中心線を端にする断面での通信可否分布を下図に示します。
- 詳細お問い合わせ先
- オムロン株式会社
事業開発本部 RFID事業開発部
広報・渉外担当 立石 俊三
TEL: (03) 5435-2016
弊社の2009年3月21日付組織変更において、「事業開発本部 RFID事業開発部」は解消(廃止)となりました。これに伴い、本技術の商品化を見送ることにいたしました。本件に関するお問い合わせはこちら