We are Shaping the Future! 私たちが手繰り寄せる未来ストーリー
労働災害リスクへの対策は企業にとって最も対応が難しい課題の一つです。その影響は従業員の安全だけでなく、社会的信用にまで及びます。国際労働機関(ILO)の最新報告書によると、2021年には全世界で3億4000件の労働災害が発生し、240万人の命が奪われています。
インドネシアの労働省は、労働災害の増加(2017年から2021年までで44%増)*への対策について、「企業は健康、安全、環境(HSE)ガイダンスを導入すべきである」と明言しました。会社は、適切な作業手順、安全研修、設備、防具、しっかりと整備された機械装置を揃えることによって従業員が安心して働ける環境を提供しなければなりません。しかし、こうした取り組みも従業員が健康でなければ意味がありません。
今回ご紹介するのは、ヘルスケア事業のインドネシア販売会社PT OMRON HEALTHCARE INDONESIA の取り組みです。同社は、インドネシア国内の技術系企業と、会社が従業員の健康管理により深く関われるようにするソリューションを共創しました。
労働者の安全確保という重要な社会課題への気づきをきっかけに、オムロンのヘルスケア インドネシアは、インドネシア最大のエネルギー会社プルタミナ(PT. PERTAMINA:国内に300カ所以上の拠点、1万5千人強の従業員、700カ所以上の発電所を持つ)と社員の健康管理システムに関する連携がスタートしました。同社は、労働災害を防ぐための三本の柱である、「職場におけるハザードコントロール」、「研修と監督」、「データ管理システムの運用」を忠実におこなう一方で、安全管理インフラを盤石にするための技術ソリューションを懸命に探していました。
他の多くの企業同様、プルタミナ社も、体調不良で欠勤している従業員を対象に健康状態のモニタリングやチェックを行っていました。しかし、こうしたアプローチは労働災害の低減という点では限界があり、決して完璧とは言えないものでした。具合が悪いという自覚がないまま出勤し、体調不良でミスを犯し、それが誘因となって重大な事故や死亡事故が発生することも考えられるからです。そこでオムロンは、プルタミナ社がすでに導入していた健康管理プロブラム「Fit to Work」を、進化させ体調に関係なく全従業員が行うように提案しました。何らかの数値が正常範囲でなければ、従業員は業務に就かず、治療を受けるよう指示されます。
全従業員が「Fit to Work」プログラムを受けるために、チームは次の課題に直面し、解決策を実行しました。
チームは更なる難題に直面しました。それはオムロンの健康機器とプルタミナのシステムをシームレスに統合することでした。
この課題に対処するためにチームは、外部のITサービス・プロバイダー(Hardtmann)に協力を仰ぎました。オムロン社内からは、ヘルスケアチームだけでなく、オートメーション事業チームからも技術支援を得ました。それら全パートナーと議論を重ね、試行錯誤しながら検討を繰り返すことで、すべての技術をシームレスに同期させる、包括的なソリューションの開発に成功しました。
このチームの取り組みは、各種医療機器、電子部品・システム、アプリケーションを搭載したワンストップ健診システム「ロボティック・ヘルス」として実を結びました。そして、プルタミナのジョグジャ支店で運用が開始され、これまでに従業員と経営陣の双方から高い評価を得ました。
ロボティック・ヘルスは、各拠点に医務室を新設するより、効率的かつ生産的で使いやすく、費用対効果、運用コストという点でも非常に優れたソリューションです。検査結果が出るまでの時間も短縮され、独創的な手法でデータベースの管理を行います。
チームが生み出したソリューションは、MURI(インドネシア世界記録博物館)から自動健康診断システム(ロボティック・ヘルス)第一号に認定されました。同システムを導入しているプルタミナの工場二カ所も、5,894,400時間無事故の記録を作り、労働省から表彰されました。
オムロンは、この取り組みをプルタミナ社の他の拠点にも広げ、さらに、インドネシアの他拠点やその他の国に向けても広く展開していくことで、労働災害リスクの低減を通じた安心安全な職場環境づくりの実現に貢献し続けます。