現場起点の"人"づくりは10年後のものづくり

インドネシアにあるスイッチなどの電子部品を製造するオムロンの工場では今、制御機器の製造ラインを中国から受け入れる準備の真っ最中。

中国の設備をそのままインドネシアに移動させても、安定した生産を行うことはできない。

そのため、それぞれの国のエンジニアが現場で顔を合わせて、どうすれば現場にとって使いやすくなるか、現場を深く知るインドネシアのエンジニアと、数多くの自動化設備を立ち上げてきた中国のエンジニアがそれぞれの立場からアイデアを出し合い、設備開発に反映させていく。

ものづくりを支えているのは、このチームのように様々な知識・スキルを持つエンジニアがそれぞれの強みを出し合い、現場の課題を解決する「ものづくり人財」たちです。

しかし、世界中で生産人口が減るなかで、ものづくり人材の確保が製造業全体の課題になる。10年後のものづくりを担えるリーダーを育成することが急務である。わたしたちはそのように考えています。

ものづくりの未来に貢献する

ものづくりの未来に貢献

「中国を始め、多くのアジア諸国において、どの製造業にとっても、ものづくり人財の確保がますます困難になります。

わたしたちは『現場起点』というオムロンのDNAと『企業は社会の公器である』という基本的考えに基づき、『ものづくり、人づくり、社会に貢献する』ことを人財育成の方針としています。

信頼される製品を作るのは、現場にいる世界一流のものづくり人財たちです。
わたしたちは製造業の未来を担う、ものづくり人財を育成することで社会に貢献していきます。」

オムロンのものづくりを支える「グローバルものづくり革新本部」の中で、ものづくり人財開発部長を務める陳はこう語る。

そして、この信念に基づき中国で企業と大学が連携した人財育成の仕組みを描いてきた人物こそ陳なのです。

現場で求められる知識を学生に

現場で求められる知識を学生

生産現場のリーダーを育成するために中国では、工学系の大学と協働しオムロンが授業のテキストの編集や生産現場のプロの派遣を行い、特別講座「オムロンクラス」を実施している。

通常授業に加えて、ものづくりの基本であり、オムロンが生産現場で積み上げてきた可視化などの品質管理手法を身につけ、生産設備を実際に用い分解/清掃/回復/調整をすることで、脳を使って手を使って改善する実践的な知識やスキルを身につけた人財を輩出している。

2010年の開講以来400名以上の学生が受講し、ものづくりの現場で活躍する人財になっている。そのうちの一人はこのように語っている。

「エンジニア不足が進む中国で自動化技術を習得し実践することは、自分の国に貢献することだと感じています。就職してからは、ベトナム/アメリカ/韓国に設備移管を行ったこともあり、国が違えば自動化の使い方が違うことも分かりました。現場で学ぶことはまだまだ多いですね。」

(左)設備の組み立て演習風景(右)設備を清掃しながら点検することを学ぶ演習風景</p>
<h3>現場で求められるリーダーシップを育成する

(左)設備の組み立て演習風景(右)設備を清掃しながら点検することを学ぶ演習風景

現場で求められるリーダーシップを育成する

現場で求められるリーダーシップを育成する

日本では2008年から高専に学習用機材を寄贈したり、教師をオムロンで受け入れ現場の知識・スキルを提供したり、オムロンのプロが高専に出向いて授業をしたりと高専教育に協力し、世界最先端の制御技術や規格の知識を提供している。

なかでも、制御技術教育キャンプという教育プログラムは、日本全国から集まった違う学校の生徒と初対面でチームを組み、通常の授業より実践的で難易度の高い課題に取り組むというものだ。
異なる知識やスキルを持つメンバーが、それぞれの力を出し合い決められた時間で課題解決に取り組む。これは現場で設備を立ち上げる疑似体験になっている。

参加者のある一人の生徒はプログラムを終えて次のように振り返っていた。

「初めは一人ひとりがバラバラに開発して、効率的に開発できませんでした。今回のプログラムを通して、開発状況の全体を把握し、それぞれの力を組み合わせることの大切さが分かりました。これからの学校生活の中でも、制御の技術だけでなく、こういったチームワークの力も身につけ、将来はものづくりの現場に関わっていたいです。」

(左)2015年のテーマは画像認識と制振制御を使ったプログラムでした(右)3人1チームで開発を実施、動作確認をしている様子

(左)2015年のテーマは画像認識と制振制御を使ったプログラムでした
(右)3人1チームで開発を実施、動作確認をしている様子

高品質を担保する生産設備は、現場で適切に動いて初めて意味があります。
現場で活躍するリーダーを、あらゆるものづくりの最前線に輩出し続け、ともにものづくりの未来をつくっていきたい。わたしたちはそのように考えています。

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