2050年温室効果ガス排出量ゼロを目指して 自社の新社屋で年間エネルギー消費量50%削減

地球温暖化対策やエネルギー需給の安定化のため、エネルギー消費量を減らすことが必要とされています。資源エネルギー庁が公開している「2018年度エネルギー需給実績(確報)」によると、日本のエネルギー消費は、企業・事業所部門が全体の半分以上となる約63%を占めています。中でも、建築物のエネルギー消費状況としては、事務所・ビル、卸小売、病院の順でエネルギー消費の割合が高く、社会全体の消費エネルギー削減のためには、オフィスも含めた企業活動全体でいかに省エネを行っていけるかが重要です。そこで、建物の室内外の環境品質を低下させることなく大幅な省エネを実現する「ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)」*1が注目されるようになりました。今回は、2019年に完成し、「ZEB Ready」を取得したオムロン野洲事業所 1号館の事例をご紹介します。

*1「ZEB」の詳細については、環境省のZEB PORTAL(ゼブ・ポータル)をご覧ください。
http://www.env.go.jp/earth/zeb/

オフィスビルの消費エネルギー削減により地球環境の負荷を低減

オムロングループは、企業理念に基づいて持続可能な社会の構築に寄与する「環境ビジョン グリーンオムロン2020」に取り組んでいます。その一環として、野洲事業所にて計画された新1号館を地球・地域にやさしい建築とし、「ZEB Ready」認証の取得を目標にしました。このプロジェクトでは、野洲事業所とオムロン ソーシアルソリューションズ(以下、OSS)が連携して省エネ/創エネを積極的に進め、さまざまな環境配慮技術と自社製品を組み合わせることによって、建物のエネルギー消費量を50.3%削減*2 することに成功。2019年には建築物省エネルギー性能表示制度(BELS)認証の「ZEB Ready」を取得しました。この認証取得は、事業活動での環境負荷の低減をすすめるうえで、大きな第一歩となるものです。

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野洲事業所 1号館のBELS 評価書

*2 一次エネルギーの消費量基準は、単位面積あたりの一次エネルギー消費量で算出されます。
今回の場合は、設計値 942/基準値 1,895のため、基準値の49.7%で運用されていることになり、50.3%削減されていることになります。

省エネと創エネの両面からエネルギー収支を改善

「ZEB」とは、高断熱化や電力消費の削減のような「省エネ」、太陽光発電などによる「創エネ」、および、燃料電池などによる「蓄エネ」の観点から、エネルギー収支の大幅な改善を実現したビルを意味しています。野洲事業所では、このうちの「省エネ」と「創エネ」の2つの施策によって、トータルな消費エネルギーの削減を図りました。同事業所の1号館の従業員数は1500名で、床面積が20,052㎡。建物内には工場、実験室、事務所、そして屋上緑地公園を持ち、この施設だけでも1つの会社ほどの規模があります。「ZEB Ready」の取得にあたっては、設計・施工を担当した建設会社も含めた野洲事業所新棟のプロジェクトチームが一体となり、取り組みました。また、ZEB化を進めるにあたり、様々なオムロンのセンサーが活用されています。

まず省エネ面では、画像型人感センサーを用いてエリアごとの人員に応じた照明と空調の自動コントロールを行なったり、CO₂センサーによってCO₂濃度に応じて外気導入量を制御し空調の動力を削減する仕組みなどを採り入れました。新型コロナの感染拡大で、換気量の最大化など省エネに逆行する社会環境の中でも、折合をつけつつ、従業員に負担をかけない省エネに取り組んでいます。

また、創エネ面では、OSSによって屋上に太陽光発電パネルが設置され、BEMS(ビル・エネルギー管理システム)を活用した効率的な運用が行われています。この太陽光発電パネルは表面に市松模様のエッチングが施されており、このパターンが太陽光エネルギーの吸収を最適化して発電効率を高める仕組みです。

1号館ビルの太陽光発電による創エネは、2020年の4〜10月で約8.2万kWh、年換算では約14万kWhに相当する買電削減につながりました。野洲事業所には4棟の工場や事務所がありますが、従来からの取り組みと併せて、野洲事業所全体で217万kWh/年の買電削減を達成。これは同事業所の年間総買電量の5%に相当しています。

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屋上に設置された太陽光発電パネル。遠くに見えるのは琵琶湖。

コスト低減も進めつつグループ全体で目指す低炭素社会の実現

野洲事業所1号館では、こうして徹底した環境対策を進めたことで年間消費エネルギーの約半分を削減し、太陽光パネルの発電によって年間の買電費用も約150万円低減しました。その結果得られた37%というCO₂排出量削減は、ポプラの木が吸収するCO₂に換算すると約6,400本分*3にあたるものです。

オムロンでは、今回の事例で培ったノウハウを他の事業所と共有して省エネ/創エネの輪をグループ全体に拡げながら、今後はさらに先進的な施策を進め、より一層のエネルギー削減とコスト低減に努めていきます。そして、オムロンが目指す低炭素社会を実現するために、これからも未来に向けて環境の取り組みを継続し、2050年の温室効果ガス排出量ゼロを目指します。

*3 ポプラが吸収するCO2量は52kg-CO2/年として計算しています。

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