We are Shaping the Future! 私たちが手繰り寄せる未来ストーリー
~仲間とのネットワーク構築で広がる女性活躍の場~
あらゆる組織にとって、次世代のリーダー育成は極めて重要な課題だ。すべてのメンバーが均等なチャンスをつかみ、活躍していくことが望ましい。そしてオムロンは、様々な考え方を持った多様な人財が、人種や国籍、宗教、性別などの区別なく、あらゆるメンバーが活躍できる組織を目指している。
そのためのダイバーシティ推進の取り組みの1つに、女性の多様な活躍を促す研修がグローバルで行われている。どのような内容で、参加者はどのような気づきを得ているのか。
国内外の取り組みを追う。
オムロンのグローバル研修「Women's Leadership研修」は、アメリカ各地で実施されている。プレゼンテーションスキル向上などの実践的なものだけでなく、ワークライフバランスの充実など個々のキャリアのあり方を考えるものまで、次世代女性リーダーの育成・増加を目的に、新任の女性マネージャーが学ぶ機会になっている。2017年に30人規模からスタート。2019年にはリーダーやマネージャーに限定せず、すべての女性従業員を対象に250人規模へと拡大する計画だ。
「Development Dimensions International(DDI 米国のリーダーシップコンサルティング企業)の調査によると、女性は失敗を恐れるあまり、リスクを取りたがらない傾向が強いようです」。
研修を実施する背景について、このように話すのは、オムロンの北米地域統括会社で人財開発マネージャーを務めるJen Kilmanだ。
「未経験の業務を含むポジションに申し込もうとする時、男性は、自分はその業務を遂行するスキルを持っていると考え、そのまま応募します。それに対し女性は、未経験の業務が含まれることに気づくと、やったことがないということを理由に、自分にはそのポジションに就く資格がないと考えることがあり、結局申し込みません。これら二つの異なる傾向に基づき、リーダーシップスキルのトレーニングにおいて、女性を対象としたコーチング技術を活用することは効果的だろうと思います」。
DDIの調査では、リスク許容における男女間の乖離は11%以上。「Women's Leadership研修」のプログラムには、挑戦して失敗することへの許容度を高め、リスクを取るマインドセットを醸成するものも含まれている。恐れず積極的にチャレンジできれば、自身が"できる範囲"も広がっていく。
左からJen Kilman , Liz Lopez
「Women's Leadership研修」は、いわゆる座学の集合研修だけでなく、小規模グループに分かれてそれぞれが体験をシェアする形式も織り交ぜる。アメリカの制御機器事業でオートメーショントレーニングスーパーバイザーに所属するLiz Lopezは、過去に研修を受講した女性リーダーの一人だ。そこで得られたことは多く、なかでも印象的だったのは、「個人それぞれが組織の中で何らかの役割を担っており、それらはすべて重要なものだ」という気づきだったという。
「自分はひとりで仕事をしているのではない、と感じることができました。より良い成果を出すために、人事部門だけでなく、営業部門や技術部門などとも積極的に関わるようになりました。そして、トレーナーではなくインストラクターとして、より高度な業務を遂行できるようになりました」(Liz)
こうしたマインドセットは、5つのネットワークを理解する研修で培われる。アイデア、影響、開発、キャリア、および社会の5つのネットワークを自身の周囲に張り巡らすことが重要だという教えだ。
アイデアのネットワークがあれば、自身と異なる経験を持つ人々から、別の視点に基づくアドバイスを受けられる。影響のネットワークがあれば、知識やリソースを持っている同僚たちからプロジェクトを成功に導くための支援を得られる。開発のネットワークがあれば、プロジェクトのマイルストーンごとに最適な人が最適な方法で支援してくれる。キャリアのネットワークがあれば、自身が長期的に成長するために適切な配属先を選定し、投資してもらうことができる。最後の社会のネットワークは、社内だけでなく社外へと広がる。信頼できる人たちと個人的な友情を結ぶことは、常に心の支えになる。
こうした学びは、他者と積極的にかかわり、周囲を巻き込んでプロジェクトを進めていくリーダーにとって不可欠なものだ。そして、女性リーダーがリスクを取り、恐れずに仕事を進めていくために、もう1つ必要なことがある。
それが、自信だ。
JenはDDI調査結果を引用しながらこう語った。
「圧倒的多数の男性は、自身が同僚グループよりも有能なリーダーであると評価しています。実際、全男性の37%が自分は同僚リーダーグループの上位10%以内にいると考えています。対照的に、同様の評価を自分に与えた女性は30%にとどまっています。受講者に"自信"を持ってもらうことは、この研修の重要なトピックの1つです」。
一方、日本においても同様の取り組みが行われている。
過去、オムロンでは、8割が男性社員という職場環境のなか、さまざまな制度を通じて、女性が活躍しやすい環境を整えてきた。しかしグローバルでの状況と同様に、「リーダーを務める自信がない」「管理職は大変そう」などのさまざまな理由から、女性がチャンスを固辞するケースが多かった。
そこでオムロンは、「2019年までに国内女性管理職の割合を5%に上げる」という目標を2013年に掲げ、女性社員が自分の力をもっと発揮できるように、その学び・気づきの機会として「OMRON WOMEN WILL研修」を開始した。
全国の各職場で活躍する女性社員たちが、全5回、10日間に及ぶカリキュラムを実施。自らのキャリアビジョンを明確にし、その実現のための「WILL」(意思)と「SKILL」(スキル・能力)の向上、および「NETWORK」(ネットワーク・同じ志を持った仲間との関係性)構築の場として機能させた。国内におけるネットワーク構築は、同じ悩みを持つ社内の仲間と経験を共有することからスタート。仲間との交流は、自信を持って前に進むことを後押しする。
これまで約200人の"卒業生"を輩出した研修の成果は顕著で、オムロン社内の女性管理職の割合は着実に増加している。「女性管理職の割合5%」という目標は2018年度で目標どおり達成される見通しだ。
人財開発センター ダイバーシティ推進部 部長の上村は、次のように話す。
「OMRON WOMEN WILL研修は、実践的なスキルを得て、自信につなげてもらえるカリキュラムになっています。当初、女性だけを集める研修は評判が良いとは言えず、対象となる女性社員からも前向きな意見が聞かれませんでした。しかし実際にやってみると、同じ志を持っている女性と出会い、共に課題に取り組むことがいい刺激となり、『会社からの期待を、"ただのプレッシャー"ではなく、"こたえたいプレッシャー"へと昇華することができるようになった』という声も出ています」。
OMRON WOMEN WILL研修で出会った仲間と定期的に情報交換が行われている
研修の終盤では、最初にイメージした自身のありたい姿を、研修の集大成となる「EGAKUプログラム」で、絵に描くことで表現する。これは、「自己認知力」「多様性の受容」「創造力」など非認知能力を育む体験型プログラムで、「5年後リーダーとしてありたい姿」を絵として表現するのだ。
「目指す方向性は多様性に富み、ひとつとして同じものはありません。研修を通して描き上げられた絵を見るたびに、みんなが描いたありたい姿を一緒に実現させていきたい、という思いを強くします」(上村)。
研修を受けることで、昇進が優遇されるということはなく、研修後は職場で能力を発揮した人財が、全社基準の正当な評価を受けて登用される。
「 『"リーダーはこうあるべき"というような気負いを感じていたけれど、研修によってキャリアスタイルの視野が広がり、肩の力を抜くことができた』という声もあります。自分らしい成長の仕方と会社への貢献、そのつながりを考えるよい機会となっています。」(上村)
そして何より、将来像を共有し合った仲間の存在が、その後の成長のよい支えになっているという。
働くすべての人が、自分の個性と能力を思う存分に発揮し、活躍できることを目指すオムロン。働きやすい"制度"だけではなく、 女性が"学び・気づき"のサポートを受けながら、自信を持って活躍できる環境を、グローバルレベルで整えつつある。