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イベントレポート:<オムロン×OSX× Laboro.AI共催> AI業界でのキャリアを考える ~ 大企業AI研究所とAIスタートアップ それぞれの魅力を徹底議論

2023.11.14

2023/10/16(月)に、国内の名だたるリーディングカンパニーのAI導入を支援する注目AIスタートアップLaboro.AI社とオムロン、オムロン サイニックエックス(以下、OSX)は、共催でキャリアセミナー「AI業界でのキャリアを考える ~ 大企業AI研究所とAIスタートアップ それぞれの魅力を徹底議論」を開催しました。100名を超える応募があり大盛況のうちに終わったこのイベントについて、開催内容をレポートします。

開催目的

昨今、生成AIや大規模言語モデル(LLM)に代表される基盤モデルが世の中を大きく変えています。その中心となっているAI業界の中に身を置くためには、どのようなスキルを身に着けキャリア形成をしていけばよいのか。今回、Laboro.AI社と共催することで、スタートアップと事業会社双方の特性・差異を感じながら自身のキャリア、ロールモデルを見つめなおしてもらう機会を提供したいと考えました。

開催概要

第1部としてパネルディスカッションでは、まず「生成AI/基盤モデルが世の中をどう変えるか」をテーマに、昨今話題になっている生成AIが産業に与える影響について各パネラーの立場から徹底議論が行われました。次に「AI業界において、今後求められてくるスキル・人財とはどういったものか」をテーマに、AI業界における様々な職種ごとのキャリア形成のあり方・魅力について議論が行われました。そして、第2部ではリアル会場で参加された方々と、Laboro.AI社、オムロン、OSXそれぞれの現場で働く、ソリューションデザイナ、エンジニア、シニアリサーチャーが最先端のAIを開発する企業の実態について、赤裸々に意見交換を行いました。

パネラー紹介

Laboro.AI社からは代表取締役CEO 椎橋様、弊社からは執行役員 技術・知財本部長 兼 OSX代表取締役社長である諏訪、OSXからはリサーチオーガナイザー 兼 プリンシパルインベスティゲーター 牛久が登壇し、スタートアップと事業会社のAI研究所それぞれの立場から議論が繰り広げられました。

株式会社Laboro.AI 椎橋 徹夫様

※当日投影資料より抜粋

オムロン株式会社 諏訪 正樹

※当日投影資料より抜粋

オムロン サイニックエックス株式会社 牛久 祥孝

※当日投影資料より抜粋

パネルディスカッションテーマ1:
生成AI/基盤モデルが世の中をどう変えるか

それぞれの自己紹介の後、まず「生成AI/基盤モデルが世の中をどう変えるか」をテーマに、昨今世間で注目を集めている生成AIの影響について議論することからパネルディスカッションがスタートしました。

※当日投影資料より抜粋

技術的な側面について、牛久から、生成AI技術に革新をもたらしたGPT(Generative Pretrained Transformer)の進化、LLM(Large Language Models:大規模言語モデル)の実用化の流れについて紹介し、「生成AIは技術的には昔からあるものと変わらないが、大規模に学習したことがポイント。膨大なデータに耐えられる計算資源や環境の進化もポイントになっている」ということなどを語りました。

左から、諏訪、牛久、椎橋様

また、椎橋様からは、ビジネスの視点から「(生成AIは)それまで特定の問題に対する処理に留まっていたが、大規模化することで1つのモデルであらゆる問題に対する処理が可能になった」ことをポイントとして、「生成AIは人間以外の『新しい労働力』として捉えることができる。今後、テクノロジーを含めた組織やオペレーションを考えることが重要になってくる」ことを指摘されました。実際にAIを活用することでコンサルタントのような知的ワーカーの生産性が向上した研究結果があることも紹介された上で、人とAIが連携して新しい価値を産むことの重要性を訴えられました。

さらに諏訪からは、“AIが人間の仕事を奪う”といった話題が時折起こることに触れ、AIと人間を対立関係として取り上げるのはミスリードであるとし、「AIを使いこなす人」と「AIを全く使わない人」で比較されていくこと、そしてAIが影響を及ぼすのはあくまでもAIを使う人間側にあることを述べました。さらに、「AIという道具をどう使うか」は研究者に限らず重要な視点であり、「仕事を奪われる」ということではなく、使い方次第で「できる仕事の可能性が広がる」という話であって、ポジティブに捉えることの重要性を語りました。

そして話題は生成AIの話題と共に賑わいをみせる国内での和製LLM開発へと移り、あくまでもLLMはベースとなるものであり、LLM開発自体で企業間が競争するのではなく、ビジネス応用や社会実装の領域での競争を目指すことが健全であることなどにも話は及んでいきました。

※当日投影資料より抜粋

では、日本企業はLLM開発領域で、どう競争力をあげることができるのか。牛久からは、技術的な視点として、LLMが大量のデータがなくても、大規模なモデルと同じくらいの精度が出せるという報告や、むしろノイズのクレンジングをした方が良いという報告が出てきていることを紹介し、いかに効率的に学習させるかは研究途上にあるとの見解を示しました。その上で、効果的な学習のために高品質なデータをどこから獲得するのか、革新的な研究開発を行う専門家や研究者が持つ暗黙知のようなものをどうインプットできるかが鍵になること、そしてそういった専門的な知識や暗黙知をLLMに教えられるインターフェースをどう作っていくかにかかっているのではないかとの考えを述べました。

パネルディスカッションテーマ2:
AI業界において、今後求められてくるスキル・人財とはどういったものか

続いてのテーマは、AI業界におけるスキルアップやキャリア形成について意見交換を行いました。まずはAI業界で活躍する3名からそれぞれのキャリアの歩みが語られました。

諏訪からは、大学院で博士号を取得した後にオムロンに就職しましたが、「元々アカデミアに進む気はなく、企業に就職するつもりで博士号を取った」と述べました。博士課程で築かれるスペシャリストとしてのキャリアを持つ人財が、企業にとって価値があるはずと当初から考えていたとのことです。

牛久からは、Microsoft Research Internから始まり、研究を含めてさまざまな手伝いをしているうちに複数の草鞋を履く現在のキャリアが築かれていったと述べました。そのキャリアの歩みについて、「国際的に見た時にVisibilityがある場を日本で作れるかを考えながら、色々なキャリアを歩んできた」と話しました。

椎橋様は、大学卒業後BCG(ボストン・コンサルティング・グループ)に参画し、ビッグデータを活用したプロジェクトに複数携わった後、デジタル技術と経営戦略とをつなぐ経験を重ねるうちにより技術側の前線に行きたいという気持ちが強くなり、東京大学 松尾豊研究所へ。そこで産学連携の仕組み作りやスタートアップの立ち上げになどを経て、「アカデミアの深いところと、ビジネスをつないでいくことを推し進めたい」と考え、その後 Laboro.AIを起業されました。

AI業界でキャリアを考える方々へのアドバイス

パネルディスカッションの最後には、AI業界でキャリアを考える方々へのアドバイスがそれぞれの視点から送られました。

諏訪からは、研究者の視点で「専攻分野の研究を深く掘ることも大事だが、その分野でなくても新しい技術やツールをキャッチアップできるスキルを身につけることが大事。その上で構想力、仮説を立てる力、リスクマネジメントといったものが企業の研究者に求められる」と述べました。また、文系がAI業界で活躍するために必要なことは何かという参加者からの質問に対して、「パソコンが登場した後、利用する側に文系・理系は問われなくなった。文系だからパソコンは利用しないなどの議論はもはやない。生成AIも同様になってくる。新しい技術を取り入れながら自分のWill・想いを信じて活動していくのが良い」と語りました。

そして牛久からは、「自分のようにはなるな」との前置きがありながらも「博士課程に進む意味をしっかり考え、新たなものを切り開くことが価値になる。研究テーマでも、起業でもいいので尖って欲しい。他の人の後追いにならない尖り方を見つけて欲しい」と続けました。

最後に椎橋様からは、AI業界で活躍するためには理系を専攻するだけとは限らないとし、「ビジネス・産業界においてAIは『用途開発競争』であり、新しい技術を何に使うかを開発していくもの。技術だけ深く分かっているだけではなく、世の中を分かっていないといけない。文系を学んでいる人はその可能性がある人」と広くエールを送られました。

第2部では食事をしながら、参加者との活発な意見交換が行われました

終了時間ギリギリまで質問が止まず、大盛況のうちに終わった今回の共催キャリアイベント。当日の様子は、動画でも配信中です。

なお、本イベントのレポートは、Laboro.AI社のWebサイトでも公開しておりますので、ぜひそちらもご覧ください。

https://laboro.ai/activity/column/laboro/recruit-event-report-2023-1016/

参考情報

・オムロンにおけるデジタルデザイン
・オムロンのデジタルデザイン・DX技術にせまる 前編 ~ データを武器に、全社エンジニアリングチェーンのDX化に挑戦するオムロンのAI・データ解析技術 ~
・オムロンの採用情報

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