現場と経営をつなぐ新たなソリューション開発への挑戦

オムロンフィールドエンジニアリング株式会社(以下OFE)は、1970年の創業時より金融のATM、駅の改札機や券売機、交通管制システムといった、社会インフラを支える機器やシステムの保守サービスを提供してきました。全国約130のサービス拠点で、1,200名超のエンジニアが24時間365日、機器・システムの安定稼働とともに暮らしの安心・安全を支えています。

近年、IT機器・システムの急激な増加に対して業務が煩雑化し、またその管理を担う人材が不足するなどの問題が顕在化しています。OFEは業務運営における省力化の課題が、ますます深刻になるという環境認識の中で、2021年「マネジメント・サービス(M&S)」をスタートしました。

M&Sソリューションは、強みの保守サービスを活かし、現場スタッフの省力化だけではなく、お客様の現場業務を最適化することで管理課題・経営課題の解決へとつなぎ、企業全体の課題にワンストップで応えるサービスです。

今回は、お客様の課題解決に向けたOFEの取り組みと今後の展望に迫ります。

 

深刻化する労働力不足に伴う経営課題の解決に立ち上がったOFE

近年、日本国内においては現場の労働者不足を補うため、自動化・効率化を目的としたIT機器・システムの導入が加速しています。一方、それらを管理する業務が煩雑化・複雑化し、また管理者が不足するなど、業務運営への負担増加に対する省力化への課題が深刻化しています。

OFEは、多くのお客様から声を聞く中で、お客様の現場で起こっているこの課題が今後、大きな社会課題になると捉えていました。特に就労人口の多い流通小売業界では労働力不足の影響が大きく、業務運営の最適化・効率化による「省力化」は喫緊の課題であり、今や現場にとどまらず大きな経営課題になっていると感じていました。この課題に対してOFEは、自社の強みである、50年にわたり培ってきた機械保守の技術と経験、そして24時間365日、機器・システムの安定稼働に対応する運営体制を活かしたソリューションが生み出せないかと考えました。そうして生まれたのが、これまでの現場の機器やシステムの保守サービスから、お客様の管理層・経営層が抱える課題解決につなぐM&Sソリューションです。

現場からはじまり経営まで。業務最適化をワンストップで実現

M&Sの開発にあたり着目したことは、お客様の現場・管理・経営層が抱える現在と未来を見据えた課題です。

お客様の現場では、IT機器の増加・管理の煩雑化により、「コア業務が圧迫されている」「業務品質にバラツキがある」といった負荷低減や業務標準化に関する課題が増えており、また本社部門では「現場の実態が把握しにくい」「店舗運営工数や外注費の妥当性が分からない」「災害時、現場サポート体制の脆弱性が露呈した」といった業務可視化や最適なコスト運営、災害時のオペレーションに関する課題が顕在化していました。

これらの課題の解決に向け、OFEは多種多様な機器・システムの機械保守に対応してきた技術と経験に加え、機器故障時などの店舗スタッフサポートを担うヘルプデスク、店舗の出店に必要な機器在庫管理を担うロジスティクスセンタ、そして、進捗などを管理するITプラットフォームなどを組み合わせた、業務運営をトータルに支えるソリューションを目指しました。(下図)

それは、OFEの強みである多種多様な機器・システムの導入から運用・保守・改善までをワンストップで提供できる機能と体制、社会・お客様を大切にする"温もりのあるサービス"で、お客様の現場における業務の効率化から管理・経営層までの業務の最適化をワンストップで実現することこそが、OFEが目指す「M&S」ソリューションだと考えたからです。

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企画本部長の家里はOFEが目指す姿について次のように語ります。

「私たちは超スマート社会を温もりのあるサービスで支えるリーディングカンパニーを目指し事業活動をしています。"温もりのあるサービス"は、お客様の置かれている環境、目指す姿に共感・共鳴し、現場課題だけでなく経営課題や業界の課題解決に向けて共に取り組んでいく、お客様との関係性を含むサービスのカタチであり、M&Sに通ずるものです。わたしたちは、社会変化やお客様の潜在課題をいち早く捉え、温もりのあるサービスでお客様と共に課題を解決し、お客様にとってのM&Sソリューションの価値を高めていきたいと考えています。」

707_4.jpg企画本部 本部長 家里 隆弘

 

チェーン店舗運営の最適な姿を目指したM&S

M&Sソリューションを提供する業界として最初に注目したのは、就労人口が多く省力化の課題の影響が大きい、流通小売業界です。全国に店舗を展開する大手のスーパー、コンビニエンスストア、ドラッグストア、そしてレストランなどのチェーンストアでは、各店舗で取り扱う機器の種類も多く、IT機器の増加と管理者不足による省力化が大きな課題となっていました。そして、同じく全国に拠点をもち機械保守を得意とするOFEは、この強みを活かし、チェーンストアが抱える課題解決ができると考えていました。まさにM&Sソリューションの力を発揮できる場でした。

当時を振り返り、マネジメント・サービス推進課の村田は次のように語ります。

「まず、流通小売業に向けたサービスとして私たちが取り組んだのは、メーカーにとらわれず多種多様な機器の点検や修理を行う"第三者保守"でした。従来、機器類の保守管理は製造メーカや系列のメンテナンスサービス会社が請け負うことが主流である中、第三者であるOFEが保守を一括で請け負うには、いくつものハードルがありました。中でも一番のハードルは、メーカーからの技術提供が困難なことです。そのため、独自に機器の構造を把握し、保守のサービスメニューを構築する必要があります。OFEは、10年以上前から、第三者保守の実績や経験を積み重ねてきました。保守サービス設計を行う機能を社内に構築し、社会システムの保守で培った技術力、機器の知識・知見を活かし、保守対応できる機器を増やしながら、ノウハウを貯めていきました。これらの経験・ノウハウを活かすことで、店舗の多様なIT機器についても、保守方法を確立し、独自のサービスメニューを構築することができました。」

707_5.jpgマネジメント・サービス推進課 村田 裕也

OFEがこれまで効率的で高品質なサービスを提供するために培ってきた技術・機能により、店舗のIT機器の保守運用を一括対応する統合保守サービスの仕組みができ、これにより、管理業務支援の幅を拡大することができました。

一例として、お客様の管理部門による現場状況の把握、効率的な店舗運営を支援するため、保守対応状況をリアルタイムで確認できるウェブアプリケーションを開発し、作業員の進捗状況や対応結果をお客様側で把握できるサービスを提供。収集した保守情報をお客様に開示・共有し、その情報を分析することでエンジニアの出動率の低減、マニュアル改善による現場作業の効率化を実現しました。その取り組みの結果として、故障発生時の駆け付け件数の30%削減・機器交換数の30%削減などの効果が出ています。さらに、お客様と真摯に向き合い対話を重ねることで、お客様の戦略パートナーとして店舗運営の効率化に向けた継続的な改善にも取り組んでおり、店舗運営に関わる工数削減とコスト最適化につながっています。

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運用データの活用で、経営課題に応えるサービスヘ

今後は現場課題を解決する統合保守サービスを基点に、データの利活用を組み合わせたソリューションを目指します。

流通小売事業者の成長戦略には、店舗数の増加が必要ですが、ムダを排除し、コストを抑えながらの業務運営、サステナブルな店舗運営の実現が求められます。そこには省力化に向けた業務プロセスの最適化、従業員のエンゲージメント向上、環境に配慮した店舗運営など、店舗の現場にかかわる経営課題も想定されます。OFEはM&Sソリューションを現場課題解決から管理者・経営者の課題解決へとつなぎ、業務最適化を通じて企業の省力化・強靭化に貢献するトータルソリューションへと高めていきます。

村田は今後のソリューションの進化について、「今後は店舗運営監視により得られる運用データを活用することで、ソリューションの提供価値をさらに高めていきます。例えば、店舗単位での分析だけでなく、複数店舗のデータを比較し店舗運営のベストプラクティスを見つけ、それを横展開することで、チェーン全体における店舗価値の底上げができると考えています。また、現場におけるお客様の運用データを継続的に取得することで、お客様の状況を深く理解し、お客様に寄り添うパートナーとして共に機器やシステムの管理・運用の最適化と業務運営における課題を解決していきます。さらに、従業員のエンゲージメントや店舗価値の向上にも貢献していきたいと考えています。」と語ります。

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流通小売業界から始まったM&Sソリューションは、様々な業界が抱える省力化の課題の解決に向け、これからも進化を続けます。

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