【第1回】6か月で、人と一緒に目標を達成する機械を開発せよ!(全3回) フォルフェウス成長の軌跡~ラリーする卓球ロボットから、AIで人と共に成長する存在に~

「人と機械が融和する未来」を体現した最新技術として、毎年進化を重ねるフォルフェウス。
「なぜ生まれたのか?」「今年はどんな進化を遂げているのか?」その全貌が、歴代の開発リーダーの口から明らかにされる。

未来の人と機械の関係性を、誰もが体験を通して実感できるようにする。
「対決」ではなく「一緒に目標を達成する」存在として生まれた卓球ロボット。
始めは素振りするところから始まったという。

フォルフェウスの進化、人と機械の新しい関係つくりが始まった。

初代・2代目の開発をリードした 川上 真司 に聞く
-フォルフェウスが生まれた経緯を教えてください

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2013年、オムロン創業80周年のタイミングに、中国でオムロントータルフェアというオムロングループが考える未来とこれからの技術を披露するプライベート展示会が開催がきっかけです。

オムロンが見据える未来を展示するコーナーがあり、オムロンが未来予測で掲げるSINIC理論をベースに、人と機械の関係性を展示することになりました。
その中で、当時の開発リーダーと私が担当したのが、人と機械が一緒に目標を達成する、人と機械が融和した未来の姿を示すというテーマでした。

オムロンは機械を動かす幅広い技術をもっているので、表現の仕方に際限なく、いろんなアイデアが出ました。
中国のお客様に見ていただくときに、難しい技術を分かりやすく、楽しんでいただけるものが良いだろうと考えていたので、中国雑技団のようにロボットが曲芸をしたら面白いんじゃないか、という議論もありましたが、それでは人が体験できるものではなくなってしまうので、より人と機械が互いにやりとりできる「卓球」をテーマに選びました。
卓球は中国でとてもメジャーなスポーツですから、楽しんでいただけるのではないかという想いもありました。

img07_1.jpg卓球ロボットの開発が始まった

ただ、卓球をテーマに選んでからが大変でした。
10月に北京で展示会が開催されることは決まっていて、もちろん日程は動かせません。
テーマが決まったのが4月。開発期間は半年ありませんでしたね。

ロボットに卓球をさせるなんて、オムロンではもちろんやっていませんでしたし、他社もやっていませんでした。

「そもそも打ち返せるのか?」という課題から始まりましたが、そこは、当時の開発リーダーがなんとか克服してくれました

ロボットは北京に輸送する必要があるので、本番機とデバック機と呼ばれるロボットを別々に作って、本番機を8月中に輸送しました。
輸送している間に、日本にあるデバッグ機を使ってソフトウェア開発を進め、完成させました。
出来上がったプログラムを現地で本番機に読み込んで、いざ卓球をしようとしたら・・・なんとラリーしているうちにロボットの腕が外れるんです。まるで人間のように「脱臼」と私たちは呼んでいました(笑)

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脱臼していた当初

原因を追究していると、ロボットの振動の仕方がデバッグ機とは違うということが分かりました。

それが展示会一週間前です。
そこから北京の倉庫でギリギリまで再調整を続けて、なんとか当日に間に合いました。
展示会は中国の各地で行い、多くの人にオムロンの考える「人と機械の融和」を体験していただく、第一歩となりましたし、体験を通して、フォルフェウスの次の進化ポイントも見えてきました。

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中国で世界初登場した卓球ロボット

未来の人と機械の関係性を、誰もが触れられる形で示した2013年。
人と一緒に卓球をするという珍しさもあり、世界中で大きな反響を呼んだ。
しかしその本質は珍しさではない。
これから現実のものとなる人と機械の新しい関係だ。
機械はこれから人にとってどのような存在になるのか?
現実のものにするには何が必要なのだろうか?

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