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寄り添う想いが、未来を変える。
視覚障がい者の移動・コミュニケーションを支援。


目の前の人の顔を見てその人が「誰か」を判断し、表情や視線から感情を読み取り、話しかける——当たり前に思える日常の動作だが、視覚障がい者にとっては簡単ではない。自分の周りのどこに・どんな人がいるのか分からない状況では、移動や自然なコミュニケーションが難しく、助けが必要な場面でも声をかけにくい現実がある。こうした社会的課題に真っ向から挑んだのが、技術・知財本部 アドバンストテクノロジーセンタの山本さんだ。視覚障がい者の移動とコミュニケーションをサポートする「AIスーツケース」開発の裏側には、視覚障がいを持つメンバーによる協力と、絆の物語があった。

視覚障がい者をサポートする
「AIスーツケース」の開発にチャレンジ

視覚に障がいを持つ人の数は年々増加している。日本国内に限っても推定164万人の視覚障がい者がおり、その内の18.8万人は全盲の視覚障がい者だ。こうした視覚障がいを持つ人は、人や障害物を避けて「自由に移動する」ことや、話す相手の表情を読み取りながらの「自然なコミュニケーション」に困難を覚えている。
山本さんがこの社会的課題と向き合うきっかけとなったのは、ある技術者との出会いだった。その技術者とは、IBMのフェロー(最高技術職)である浅川千恵子さんだ。14歳で失明し、自らも視覚障がいを持つ浅川さんは、世界初のウェブページ音声読み上げソフトウェアを開発するなど、これまでも障がい者の情報へのアクセシビリティ改善に向けた取り組みを第一線で行ってきた。
視覚に障がいがあっても、一人で自由に行きたいところに行き、誰とでも自然なコミュニケーションが取れる未来を実現したい——そうした浅川さんの想いへの共感のもと、彼女を中心にオムロンを含む5社からなる「一般社団法人次世代移動支援技術開発コンソーシアム」が創設された。コンソーシアムがめざすのは、「AIスーツケース」の開発だ。視覚障がい者が自立して街を移動することを助けるこの製品は、デジタルの視覚から得られる情報を、最新のAIとロボット技術の組み合わせによって補い、周囲の状況や障害物の有無はもちろん、すれ違う人の顔や表情を認識してユーザーに伝えることで、視覚障がい者の移動とコミュニケーションをサポートする。オムロンからは、山本さんをリーダーとするチームが、これまでに画像認識の分野で培った知見を活かして開発に当たることとなった。

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顔画像センシング技術を活かし、
「何とかしたい」の想いで突き進んだ

オムロンには「OKAO」という、「顔画像センシング技術」における世界トップクラスの技術ブランドがある。
しかし、これまでの「OKAO」はいわゆる「健常者の便利」を目的とした技術だった。
今回初めて視覚障がい者のための技術開発に挑戦することになったものの、その難しさにチームは途方に暮れた。そんなとき、山本さんは知財部門のメンバーである吉川さんと話す機会を得る。PLCの技術開発に当たっていた吉川さんは、49歳のときに緑内障にかかり失明。壮絶な体験を聞くなかで、吉川さんも自由な移動や自然なコミュニケーションに難しさを感じているのだと気づかされた。チーム全体に、「何とかしたい」という気持ちがふつふつと湧き上がるのを感じた。その想いを感じとった吉川さんは、開発のテストユーザーを担当してくれることになった。
実際に開発を始めてみると、視覚に障がいのある人が「知り合いを見つけて声をかける」ことがいかに難しいかを幾度となく痛感した。自分から声をかけるには、「相手が誰で、どこにいるか、話しかけてよさそうか」といった相手の状態を動きのなかで認識する必要があり、さらにそれらの情報を素早く察知しなれば、声を掛ける前に相手にぶつかってしまう。
山本さんチームは、吉川さんと二人三脚で実証実験を繰り返し、AI技術を獲得しながら「相手の状態」という多面的な情報をリアルタイムに伝える方法を確立していく。そしてついに、5m以上離れた人の状態を正確に認識することに成功した。

相手に徹底して寄り添う姿勢が、
ソーシャルニーズを創造する

しかし、やっと完成というところで、予想外の事態が起きた。
コロナ禍で全ての人がマスクをつけるようになり、AIによる顔認識が困難になったのだ。コンソーシアムが定めた公開実験まであとわずか4ヶ月というタイミングだったが、チームに「ここで挫ける」という選択肢はなかった。1万人分の顔画像にマスクを貼りつけ、AIに学習させることで、マスクをつけた顔認識を可能にした。当時海外の大手企業でも実現できていなかった技術を、社会に先駆けて完成させた瞬間だった。
いつの間にか、チームは固く結束していた。漠然とした誰かのためではなく、目の前の吉川さんや浅川さんのためにと開発するうちに、デザイン思考で真に解くべき問題に辿り着き、答えを導き出すことができたのだ。
そしてついに、山本さんのチームは開発した技術を通じ、視覚に障がいがあっても「知り合いを見つけて先に声をかけること」を実現した。実証に参加した浅川さんから、「感動しちゃった。オムロンさんすごいですね」と声をかけられたことが忘れられないと、山本さんは話す。

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「“ソーシャルニーズの創造”とは身近な一人のために何とかしたいという想いを持ち、徹底的に寄り添って技術を創るデザイン思考によって可能になるのだと学びました。近い将来、視覚障がいを持つ方から『山本さん、楽しそうだね、何かあったの?』と話しかけられる日が必ず来るでしょう。社会実装をめざす今後の私たちにぜひご期待ください」。
コミュニケーションの不自由という壁を乗り越えた山本さん。想いを未来につなぐ旅はまだ始まったばかりだ。

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