革新的ソフトロボット”Saguri-bot” ~やわらかい手首で部品挿入時の大きな位置ズレを吸収~
- Social Needs
- 現場に設置して10分程度でロボットが動き、多品種少量生産が効率化されている社会の実現
- How
- バネを搭載し、多方向(6自由度)・大変形が可能な柔軟機構により、部品挿入時の大きな位置ズレを吸収できる”やわらかい手首”を開発
- What
- ロボット実装に必要なソフトエンジニアリングを容易にし、組立自動化におけるロボットの立ち上げにかかる労力を削減
我々は、ロボット自身が周囲の環境を把握しながら、作業の進み具合に応じて、臨機応変に作業を行うことで、熟練のロボットエンジニアが不要となる(理想的には、現場に設置して10分程度で、ロボットが所望の作業を実行できる)社会の実現を目指しています。その実現に向けて開発したソフトロボット”Saguri-bot(サグリボット)”を紹介します。
一般的に、例えばネジやペグなどの部品を穴に挿入する組立作業を考えると、「部品や穴の正確な位置が分からない」「部品を掴む角度にバラツキがある」などが原因で、「ロボットが部品を穴に挿入できない」「ロボットが机や周辺機器などにぶつかり、破損または非常停止する」などの課題に繋がります。それらを防ぐために、ロボットやカメラの位置・角度、ロボットの動作設定などを入念に調整するエンジニアリングや、部品や穴の位置を一定の規則で整列させる専用治具の製作など、ロボットに合わせた作業環境の作りこみが求められます。したがって、ロボットによる多品種少量生産を実現するためには、単純な作業工程であっても多くの労力がかかってしまい、ロボット導入のコストに見合わないケースが多くなっています。
このような課題に対し、我々は”やわらかい手首”と”触覚センサを備えた指先”を持ち、”シミュレーションあるいは、実環境での少ない試行で学習する技術”をもとに動くソフトロボット“Saguri-bot”を開発しました。今回の記事ではまず、やわらかい手首の特長と応用例について紹介します。
やわらかい手首:バネが多方向(6自由度)に大きく変形する柔軟機構により、部品挿入時の大きな位置ズレを吸収し、ロボット実装に必要なソフトエンジニアリングを容易にする
● 安全接触機能:物体との接触時にバネが変形して衝撃を吸収し、ロボットの機器破損や非常停止を回避
● モード切り替え機能:ワイヤーケーブルでバネを伸縮させ、”やわらかさ”と”硬さ”を瞬時に切り替えることができ、一般的な産業用ロボットが得意な”高速・高精度・高出力”の動作も可能
● 後付け機能:軽量・小型で、市販のロボットアーム・ハンドに搭載できる汎用性があり、硬いロボットをソフトロボット化
ー 質量:500 g
ー 直径:75 mm
ー 長さ:60 ~ 71 mm ※最大長:やわらかいモード時、最小長:硬いモード時
● ペグやコネクタなど多様な形状の部品の挿入(円形や四角形など)
● ナットやスペーサー、ワッシャーなど平らな部品のピッキング
● ネジや釘、ギアなどバラ積みされた部品のピッキング
“Saguri-bot“は、やわらかい手首を駆使して物体と安全に接触し、触覚により部品挿入時の手応えを捉えることができます。そして、実環境での安全な手探りやシミュレーションでの検証などのトライアンドエラーを通じて、作業を達成するための方法を自律的に学習します。これにより、新しい環境においてもロボットが自律的に多種多様な部品の組み立て作業を実行できるようになり、ロボット導入時のソフトエンジニアリングを大幅に削減できると考えています。
次回は、”Saguri-bot“における”触覚センサを備えた指先”の活用として、ロボットがバラ積みされた状態から無作為に部品を掴んだ(部品を掴む角度にバラツキがある)場合でも、部品挿入を実現できる事例を紹介します。
我々は、柔軟な身体のロボットが力触覚を持ち、作業を学習する研究を進めています。我々のロボットは、生産ラインのように同じ動きをするのではなく、人が作業するような雑多な環境でも臨機応変に動くことができ、様々な手作業を代替できると期待しています。特に、今回ご紹介した”やわらかい手首”は、バネ機構により多方向(6自由度)かつ大きく変形することで、様々な環境において安全な試行錯誤を可能にするなど、汎用性が高い技術です。
ロボットによる自動化へのニーズや生産現場での課題感をお持ちの方々と、我々のロボット技術がどのように貢献できそうか、ぜひお話ししたいです。お気軽にご連絡ください。
Principal Investigator
濵屋 政志